553.雨の日の釣り
草だんごを針にくっつけ、ゆっくりと糸を垂らす。
「にゃーん……!」
「ウゴ、たのしみー!」
中心部にはレインボーフィッシュがいない。
このまま湖の底にいるマルデ生物を釣り上げる。
雨が湖を打ち、ボートに降りつける。
「塗装は大丈夫なようだな」
「ええ、丈夫なのを使っていますから。ザンザスでもぴよっと看板がありますし」
レイアが胸を張る。
「……私がギルドマスターに就任したとき、何箇所かのぴよ看板がまだら模様に……!」
俺の頭の中でところどころ、色が剥げ落ちたコカトリスの絵が思い浮かんだ。
廃墟の遊園地、剥げた看板……うっ、頭が……。
「うちの村の看板は大丈夫だよな?」
「にゃん! ちゃんと見回りしてますにゃん……!」
良かった、まだら模様の看板はなかったのだ。
糸を垂らして数分。
まずウッドに当たりが来た。
「おっ……! 来たみたいだぞ」
「ウゴ、けっこー強い……!」
ウッドが慎重かつ大胆に釣り上げていく。
「ウゴ……! 大きい!」
湖から引き上げたのは真っ白な2枚貝であった。
デカイ、10センチは超えている。
「……ハマグリに似ているような、違うような」
やはりハマグリに比べるとちょっと大きい気がする。
レイアが釣り上がった貝をふむふむと眺めた。
「これは……ホンビノス貝ですね」
「ウゴ、食べられる?」
「旨味があっておいしいですよ! 酒蒸しとかクラムチャウダーにぴったりです」
「良かったのにゃーん!」
「しかし、この貝は初めてじゃないか? 今まで釣れなかったような気がするが」
俺が首を傾げると、レイアが解説する。
「やはり雨が降ると生き物の動きが変わるのかもしれませんね。水の中の魔力が微妙に変化したり……」
「ふむ、来て良かったわけだな」
それから一時間ほど俺達は釣りに集中した。
「結構釣れたな」
おかげでかなりのマルデ生物――マルデホンビノス貝を釣り上げることができた。
岸に戻り、マルデホンビノス貝を釣り上げたポイントや大きさを記録していく。
それらの貝を見ながら、俺はつぶやいた。
「……この貝は食べられるんだよな?」
「にゃん、雨の日に野外で食べるのもオツですにゃん」
そういうわけで、雨降る湖のそばでバーベキューをすることになった。
湖の岸には大樹の家があり、様々なレジャー用品が置いてある。
網なんかも置いてあるのだ。
「いいですね、バーベキューは好きですよ!」
「…………」
岸から戻ったレイアは即座に着ぐるみを着ていた。
その姿でバーベキューできるかどうかは少し怪しいが。
「ま、まぁ……レイアは無理をしないようにな」
東京湾の新しい名産物、ホンビノス貝をよろしくなんだぞ!!!!✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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