543.特別編・マルちゃんの部屋エンドロールズ
「第2投なんだぞ!」
「えいっ!」
「ぴよっ!」(ていっ!)
ヒュン、スポッ!
レイアとコカトリスの投げた輪っかはポールにうまく入っていた。
……輪投げ対決は続く。
マルコシアスの予想を超えて。
「第8投なんだぞ!」
「ふうっ!」
「ぴよっ!」(えいっ!)
ヒュン、スポッ!
またも二人の投げた輪っかはポールに入る。
ゲームが始まってから、どちらもノーミスだ。
「……わふ。差がつかないんだぞ」
「その場合はどうなるのでしょうか?」
「サドンデス――どちらかがミスするまで決着はつかないんだぞ!」
「ぴよっ!」(望むところだっ!)
「ええ、私も体が温まってきたところです。ふふふ、負けません!」
「ぴっぴよ! ぴよ!」(頭にコカトリス帽子を被っているだけの人じゃなかった……! この人、できる!)
そうして輪投げ対決はまだまだ続く……。
「第32投なんだぞ!」
「それっ!」
「ぴよよっ!」(そぉい!)
ヒュン、スポッ!
……どちらも輪投げ成功。決着はまだついていなかった。
「計算外なんだぞ……。全くの互角なんだぞ」
「いえ、そうではありません」
ガクッとレイアが膝をつく。
腕を震わせながら。
「腕が痺れてきました。もう、濃厚なぴよみに体が耐えられないようです……!」
「ぴよー!」(しっかりー!)
「ぴよよー!」(輪っかを投げ過ぎたんだー!)
「予想外なんだぞ。ここまで決着がつかないなんて……だぞ」
マルコシアスはわふっと考え込む。
「マルちゃん時空も、そろそろ自壊するんだぞ。なので、このゲームは引き分けなんだぞ!!」
ばばーん!
「くぅ、あと少し体がもてば……!」
「ぴよ」(けっこーガッツあるね)
「ぴよよ」(まぁ、ヤバいのは腕だけみたいだし……)
「そーいうわけで、豪華賞品なんだぞ」
マルコシアスがふにっと肉球を鳴らす。
ちゃらーん。
テーブルの上に、真っ赤な野菜パンが3本現れた。
「健康マニアのアスタロトちゃんが作った、胃腸によく効く真紅の野菜パンなんだぞ」
「色がヤバそうです」
「まぁまぁ辛いけど、健康になれる……はずなんだぞ☆」
コカトリスはむんずと野菜パンを一本ずつ持ち、くちばしへと運ぶ。
「ぴよよー」(いただきまふー)
「ぴよー」(食べるー)
もにゅもにゅ。
「……大丈夫ですか?」
「ぴよ!」(旨辛ってやつ!)
「ぴよよ〜」(パンとしてのレベルは高め〜)
しかしレイアは手を伸ばさない。
「どうしたんだぞ?」
ばん! レイアは胸を張った。
「私、辛いものが苦手なのでっ! パンはどうぞ、皆さんで召し上がってください!」
◇
翌朝。
コカトリスのぬいぐるみをもみもみしながら、レイアが目を覚ます。
「なんだか、楽しい夢を見たような……?」
夢の中身はよく覚えてはいなかったが。
ふとレイアが右手を見ると、枕の横に黄色い輪っかがある。
「はて? ……どこかの試作品でしたっけ?」
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