532.ロウリュで懇親
それから鍛冶ギルドの面々と雑談し、村を案内する時間になった。
この村には土風呂なんかもある。
リビングに移動しながら希望を聞いてみる。
「何処か行ってみたい所はあるか?」
俺の言葉を待っていたかのように、カミーユ達がコカトリス刺繍入りタオルを取り出す。
かわいい。
「それでしたら、ぜひ! ロウリュに!」
どうやら最初から決めてあったようだな。
「いいですね、共に汗を流して……! 男女共用のもありましたよね?」
「水着着用のフロアがあるな」
混浴というか、家族や団体向けである。
「ぴよよっ! ロウリュいくぴよー?」
「眠気覚ましにはいいかもなんだぞ」
マルコシアスはむにゃむにゃしてるものな……。
「ふむ……二人を連れて行ってもいいかな?」
「どうぞどうぞ! 家族ぐるみというやつですね!」
ちょっと違うかもだが……まぁ、いいか。
親睦を深めるためだしな。
「ええ、ディアとマルちゃんも一緒にいきましょー!」
「ぴよー!」
「れっつごーなんだぞー!」
というわけで、ロウリュへと向かった。
「混浴フロアは少し混んでいますけれどー、いいですかー?」
受付のテテトカに俺は答える。
「問題ない」
「はい! 大丈夫です!」
カミーユはすでにロウリュ用の水着を買っていた。
すっかり入る気のようだな。
「ではではー、どぞー」
男女別に着替えを済ませ、合流する。
混浴フロアはもうもうと水蒸気が立ちこめ、かすかに爽やかなラベンダーの香りがする。
薄めにやっているようだな。
「ぴよっ!」(よっすー!)
「ぴよよー」(新しいお客さんだー)
「ぴよ? ぴよよ?」(詰めたほうがいい? 詰めとく?)
……コカトリスが3体いるな。
他にもニャフ族や冒険者が入っているが、確かにやや混んでいる。
「ぴよちゃんもいたんですね……!」
ステラはぬくぬくコカトリスを見て、テンションが上がっている。
「ぴよー。まだ大丈夫ぴよ? 詰めなくてもいいぴよよっ!」
「ぴよよー」(うぃー)
空いているのはコカトリスの横のエリアだな。
皆でそこに移動する。
ベンチに座ると、ロウリュの良さが一層わかる。
ふぅ……身体の芯が温まるな。
「はー、いいぴよねー」
「ラベンダー、いいんだぞぅ……」
カミーユ達も座ってロウリュを堪能している。
「いいですねぇ……。ぽかぽか……」
顔が緩んでほわほわしているな。
鍛冶ギルドの面々はかなりモコモコだが……うん、ニャフ族やコカトリスも綺麗好きだしな。
血行やお肌の手入れは暑さに勝るのだろう。
「鍛冶ギルドのおかげでロウリュもこうして、大勢の人が来てくれている。これからも色々と頼むことがあると思うが、よろしく頼む」
「そんな……!! もったいないお言葉です!」
ふむふむ、表情がゆるやかになってきたな。
ロウリュでのリラックス効果は侮れない。
そこで俺は気が付いた。
カミーユ達の視線が、コカトリスへチラッチラッと向かっていることに。
「……何か気になることがあるのか?」
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