506.サウナの提案
「サウナ、ですかにゃん?」
「サウーナ?」
ナールとテテトカが首を傾げた。
……むっ。
この反応は聞き覚えがないか。
この世界にはサウナがないのか、それともこの地方にないのかまではわからんが。
「申し訳ありませんにゃ、サウナとはどういうものですかにゃ?」
「食べ物ですー?」
「……いや、突然悪かった。サウナというのは――」
俺はこれが前世の知識とバレないよう、気を付けながら説明した。
サウナは入浴施設のひとつだ。
高温の部屋に入り、汗をかく。そして水などで洗い流す。
効能は血行を良くしたりとか……。この世界なら魔法具で再現できそうなのが良い。
それなりにお金はかかるかもだが、試しにやってみるのは悪くない気はする。
どこの世界にも美容と健康にはニーズがある。
現に土風呂は大人気なわけだし。
説明を終えると、ナールがふむふむと頷いた。
「にゃー。なるほどですにゃ……! 面白いですにゃ!」
「蒸すわけですねー。土風呂に似てるかもー」
「いいお考えですにゃ。……土風呂が苦手な人もおりますにゃ。そういうひとにアピールできるかもですにゃ」
「ニャフ族のかたとか、そういう人もおりますよねー」
「……そうなのか?」
「あちしやブラウンは好きですにゃが、毛が土に埋まるのが苦手な人はいますにゃ」
言われると、そりゃそうか。
そういえばコカトリスも土風呂は遠目に見るだけだな。入っているのは見たことない。
ため池にはダッシュでダイブしていたのに。
ふむふむ……毛が問題だと言うなら、サウナならどうだろうな。
コカトリスもみっちり入ってくるだろうか。
「それと土風呂は雨風が強い日はハードになりますねー」
「ですにゃ。そのサウナというものがあれば、さらなるアピールになりますにゃ」
「もちろんメインは土風呂だ。だが土風呂で取りこぼした客層を掘り起こせるなら、悪くないと思う」
俺の言葉にナールが目をきらきらさせる。
これは商売人の目だな。
「うまく行きそうな気がしますのにゃ!」
テテトカも俺を見上げて楽しそうにしている。
「サウナのお部屋と土風呂は両立しそうですねー。頭までほかほかー。お水ぱしゃぱしゃー」
その言葉に、ナールが即座にツッコんだ。
「いきなりハードモードすぎますにゃん!?」
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