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502/834

502.トマトスープの後に

 また凄い世の中の分け方だが、ドリアードならあり得る。

 俺もテテトカとの付き合いは長いからな、うん。


「……ちなみにスープはどうだい?」


 ナナが若干身を乗り出して聞いてくる。


「うん、濃厚で美味しい。ダブルトマトもいい感じだ」


 これは本当だった。

 トマトの二重奏が新鮮な味わいを醸し出している。


「にゃん。ナナのレシピ通りにしましたにゃん!」

「凄いな、プロ並みの腕前だ」

「商人はよく移動しますにゃん。自然と料理は上手くなりますにゃん」

「そういえばー、よく埋まりに来る人たち――冒険者さんでしたっけ。その人たちも手先は器用ですー」

「不器用は死ぬからね」


 ナナがスプーンに乗せた根菜とスープを、くちばしの奥に突っ込む。

 その食べ方はまさに器用そのもの。


 今の俺がエルぴよでやったら、確実に惨劇だ。


「いいね……。例えるなら、頑固な老指揮者と新鋭の楽団のコラボレーション。伝統ある劇場で奏でられる、刺激的なオーケストラ……」

「ぴよ」(なに言ってるかわからないけど、この人デキる……!)

「ぴよっぴよ」(なんだろう、『風格』を感じる。野菜の深みを理解している人特有の……『風格』を)

「ぴよちゃんもナナを只者ではないと感じてるみたいだねー」

「まぁ……ヴァンパイアだからね」


 ふふりと少し誇らしげだ。


 それから俺たちは歓談しながらトマトスープを堪能した。


 ……けっこうな量があったな。

 お腹がたぷたぷしてきた。


 コカトリスはご飯を食べて眠くなってきたのか、寄りかかってうとうとしている。


「ぴよぅ……」(もう寝る、寝落ちる……)

「ぴよっぴ……」(ぎりぎり、わたしは起きてます……)


「それで、僕に用があるんだって?」


 トマトスープをがぶがぶ飲んだナナが話を振ってきてくれる。

 いくぶん、上機嫌に見えた。


「ああ、ディアが服を着たいみたいなんだ」

「服ですにゃん?」

「エルぴよっぽい、顔がちょっと出るような――」

「ふむふむ、子ども用の着ぐるみだね?」


 ナナにはすぐにわかったようだ。

 さすがヴァンパイアである。


「そう、俺はあまり詳しくないのだが……。そういうのはあるのか?」

「あるよー。子どもは成長が早いから、ツギハギみたいな服だけど。もちろんぴよっとしてる」

「へー。面白そうですねー」

「ほぼヴァンパイア内でしか出回らないから、入手はそれなりに難しいけど……」

「もちろんお金は払うから、手に入れられないか?」

「わかった。ヴァンパイアの貴族にも負けない服を用意するよ」


 そこで俺はすっと付け加えた。


「ウッド用も欲しいのだが」

「?!」


 ナナが一瞬固まる。

 が、すぐにこほんと咳払いをした。


「……なんとかするよ」

「ありがとう、恩に着る」

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] トマトスープをお好みのようなので小ネタを少々・・・ わたしもミネストローネスープが好きですが、通常入れることはないと思いますが「しめじ」を入れてもおいしいですよ^^ 前に倒していたキノコの…
[一言] 書籍第2巻、買いました! いわさきたかし先生の挿絵もとっても良いです!! マルちゃん犬のイメージ強かったから登場シーンの挿絵、 あんなにカッコイイ系美少女だったとは…! あと最後の317ペー…
[一言] 無茶な注文を強要する… もしかして、今までで一番貴族っぽい事をしているのかもしれない
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