492.ちょっと雨降り
翌朝。
俺はナールやテテトカと一緒に堤防を歩いていた。
「はー、すっごいですー……」
テテトカは池を見て感心しきりだ。
たまに地面をふみふみしてるのは、堤防の土を確かめているのかな……?
そして俺は昨日の構想をテテトカへと話した。
「なるほどー、池と堤防に植物ですかー」
「スイレンとか、ラベンダーとか……」
「水生植物はどうですかにゃ?」
「んー、あまり育てたことはないですねー……。でもぼくたちの土を使えば、大丈夫だと思いますけどー」
ドリアード達は泳ぐ習慣がないみたいだからな。
水浴びはしても、潜ることはないらしい。
「にゃ。土を沈める手段はイスカミナと相談しますにゃ」
「あとは真面目にやれば、たいてい育ちますよー」
テテトカはそう言うと、懐から草だんごを取り出して食べ始めた。
ゆるい。
「ぴよちゃんもここが気に入っているみたいですし」
テテトカが池の方に視線を向けると、すでに3体のコカトリスが泳いでいる。
「心和みますにゃ……」
うんうんとナールが頷く。
「にゃ。それとレイアが昨日のコカトリス泳ぎを見て、新しい商品アイデアがキタッ! と言ってましたにゃ」
「楽しみだな」
泳ぐコカトリスのぬいぐるみかな?
くるくるダイブするほうかも知れないが……。
「あちしも、さらなる売上を上げてみせますのにゃ!」
◇
それから数日。
特に何事もなく村の日々は過ぎていった。
俺は冒険者ギルドの執務室から、ぼんやりと外を眺める。どんよりと分厚い雲が空を覆っていた。
「……久し振りに雨が降りそうだな」
「空気も湿っぽいですからね。一雨くると思います」
執務室のステラが少しテンション低めに答える。
雨の日はさすがに野ボールもスイング練習も走り込みもできない。
ステラのテンションも下がり気味になるのだ。
「雨が降って、ため池が大丈夫ならひと区切りだが……。次の段階に進める」
「マルデ生物の養殖ですね……!」
「理論的には大量の水と魔力があれば、湖や海と同じ環境が作れる。うまく行けば、利益が出るかも……だな」
「おいしい野菜と果物、水産物は適切な値段ならどこへでも売れますからね。わたしとしても、エルフ料理に使えますし」
ステラのエルフ料理はほぼ中華料理である。そのなかでも四川料理と上海料理にほど近い。
ちなみにザンザス料理はオリーブオイルと塩がかなり強かったりする。
「楽しみにしているよ。おっ……雨がぽつぽつ降ってきたな」
「あっ、そうですね」
俺とステラは窓から外を眺める。
かすかに雨が窓ガラスを叩き始めた。
ここから堤防はちょっとだけしか見えない。
結論から言うと――池と堤防は全く問題なかった。
あとから聞いたが、年間の平均降水量の5倍でも大丈夫らしい。
かなりのお金をかけただけはあったな……。
下の表紙の奥にいるのが、コカトリス姉妹なんだぞ。
ぴよっぴよしてるんだぞ!✧◝(⁰▿⁰)◜✧
他にもぴよっぴよしているイラストが書籍には掲載されているんだぞ。
ぜひ、ご予約をよろしくお願いしますなんだぞ!✧◝(⁰▿⁰)◜✧