486.思わぬ助け
翌朝。
もぞもぞと起き出す。
ステラの髪があれだな、凄い……その、跳ね飛んでいる。
ディアが目をこすりながら、ステラの髪型を見上げていた。
「かあさまの髪が爆発してるぴよねー」
「むにゃ……自宅ゆえ爆発しました」
「寝ぼけてるんだぞ」
「ウゴ、でも気持ちはわかる」
半身を起こしたステラの髪を、後ろからささっとセットしていく。
「……むにゃ……ありがとうございまふ」
「気にしないでくれ」
多分だけど、昨日の疲れと髪の跳ねがリンクしている気がする。
ほわほわ……。
膝の上でディアとマルコシアスを撫でながら、ステラは髪をされるがままにしていた。
俺も結構慣れたものだな……。
「大丈夫か? 痛くないか?」
「大丈夫です。エルト様の手は優しいですから」
ステラはそう言うと、ぐっと拳を握った。
俺からはステラの顔が見えないが、めらめらやる気になっているのはわかる。
「いよいよですね。ぴよちゃん池……!」
◇
ため池工事現場につくと、すでにイスカミナとアナリアが来ていた。
やや早いのでまだ冒険者達は来ていない。
まぁいいか。
俺達だけでも、進めるところを進めてしまおう。
「今日は堤防と管通しか……」
足元にはたくさんのパイプが置いてある。
あとは生簀でも使っている浄化装置か。マジカルな仕組みらしい。
「もぐ! エルト様の魔法で地下を細く掘り下げて欲しいもぐ!」
「わかった、この辺か?」
イスカミナの側に旗が立っている。
同じような旗がいくつも地面に差してあるな。
アナリアは装置をガチャガチャ弄っていた。
「そうですもぐ!」
「わたしはそうしたら――あっ」
ステラが横に視線を向けている。
「ん? 何か――」
「ぴよ」
ぴよぴよと海コカトリス達とララトマがやってきた。
「海ぴよちゃん、お手伝いしたいそうです!」
「ぴよちゃん達が……?! なんと!」
ステラが駆け出して、海コカトリスにダイブする。
「もちろん……いいですよね!?」
「今日は堤防作りだから大丈夫もぐ! パワーがあると助かるもぐ!」
「そうだな……。思わぬ助けだ」
ぴよぴよ。
細かい作業はアレかもだが――ぺたぺた堤防を補強するのは大丈夫だろう。
「ぴよ」(水に浮かべると聞いて)
「ぴよぴよ」(完成したら遊べると聞いて)
……コカトリスの目がきらきらしている。
これは一気に終わりそうだな。
お読みいただき、ありがとうございます。