474.海ぴよの決断
「ぴよー! おかえりぴよー!」
「無事にお帰りなさいなんだぞー!」
「ただいまですー!」
船に上がったステラがディアとマルコシアスを抱きかかえようとして――。
「……ちょっと待ってくださいね。海水でベタついてますので。ぴよちゃんでベタつきを取りますので」
そう言って、ステラはコカトリスの間にすっと挟まった。
そのままコカトリス達から温風がぶぉぉぉ……と放たれる。
「はぁ、ほかほか……。ベタつきが取れていきます……!」
「ぴよ。お手入れは大切ぴよね……」
「大切なんだぞ」
相変わらずルイーゼはふよふよと浮いていた。
「どーだった? 全員無事そうだけど」
ルイーゼは何気ない風だが、船員達は吉報を待ち望んでいる顔だな……。
かなりの人間が身を乗り出していた。
話を振られたナナはひらひらと羽を動かす。
「僕の見た限り、しばらくは問題なし。詳細はあとで報告するよ」
「うむ。星クラゲも一掃できたはずだ。長期的には監視が必要だろうが」
それを聞いて、船員達が歓声を上げる。
「おおおおっ!」
「やっと日常が……!!」
そのまま大歓声が船団に連鎖していく。
「ウゴウゴ、すごく喜んでいるみたいだね……」
「本当に……です! はい、タオルです!」
ララトマの手が少し震えていた。やはり心配していたのだろう。
「ウゴ、ありがとう!」
ウッドがララトマからタオルを受け取る。
なんだろう。
そんなちょっとしたことで、目から塩水が……。
「エルぴよちゃん、エルぴよちゃん。こっちですよ……!」
ステラが手招きをしてくる。
ぴよとぴよの間に……。
「わかった……俺も挟まる」
すすっとステラの隣に移動する。
温かい、ぴよドライヤー……。
ちなみに向こうではジェシカも挟まれていた。
「ジェシカもやるようになりましたね……!」
◇
船の上ではどんちゃん騒ぎが始まっている。
しばらく港に戻る気配はなさそうだな。
歌いだしたり、ひゃほーいと海に飛び込んだり……中々の盛り上がりである。
マルデアコヤ貝については、ルイーゼと俺達で折半になった。
そこそこの量があったので、それでも……数十キロ分はあるか。
「協力ありがとう。本当に助かった」
「ぴよぴよ!」
抱えたディアを通訳にして、海コカトリスのリーダーと話をする。
ちゃんとお礼を言わないとな。
ぴよの中にも礼儀ありだ。
「リヴァイアサンも沖に行ったし、あとは海藻を生やして……そうすれば君達も海に戻れるな」
「……ぴよよ」
「それなんだけど、と言ってるぴよね」
んん?
何か問題があるのだろうか。
「ぴよっぴよ!」
海コカトリスのリーダーが、羽をバタバタさせる。
かわいい。
「そちらの村で、しばらく暮らしたい……らしいぴよ!」
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