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472.神殿を後にして

「ぴよよ」(ここ、ここ)


 コカトリスがモミの木の根本をつんつんと羽で示していた。

 そこだけは土がむき出しになっているのだ。


「むっ……! 悪いがステラ、頼む……」


 土を掘ろうとして――俺は手を止めた。俺の手は今、ふもっとハンドである。

 掘るにはとても不向きだ。


「わかりました! ええと、この辺……さっさっ……」


 手際良くステラが土をささっと、どけていく。

 土は元々多くない。


「あっ! これですか……!?」


 ステラが土の中から、小さな赤い木片みたいなのを取り出した。

 ……一見、種には見えないが。


「ぴよよっ!」(それですっ!)


 コカトリスがどや顔をしている。

 これでいいらしい。


 ステラが赤い種を取って、じぃっと見つめた。


「旅の中で食べた、モミの木の種に似ていますね……ふむふむ」

「モミの種って食べられるのか?」

「食べられません。毒があります」

「…………」

「一般の方にはオススメできません、はい。割と命がデンジャラスです……!」

「そ、そうか……」


 ともあれ収穫はあった。この種は持ち帰るとしよう。育ててみるのもいいかもな。


 このモミの木はゲームにはなかったように思うが……まぁ、大丈夫だろう。


「ありがとう。種の代わりに、これで……」


 俺はイチゴを両手にたくさん生み出した。


「ぴよっ!」(おいしそうっ!)


 目を輝かせたコカトリスは、満足そうに群れへと戻っていった。

 どうやらモミの種はもう、興味がなくなったようだな。切り替えが早い。


 そうして一休みしてから、俺達は海底神殿を後にした。


 ◇


 大広間をてくてく歩き、再び海底に出る。

 星クラゲとは出くわさなかった。


 やはりダンジョンで一掃できたようだ。

 一安心だな。


 警戒しながらステラが泳ぎ始める。


「これで――解決ですかね?」

「謎は残っているが……まぁ、それはルイーゼに任せることになるか」


 この神殿を造った人間や時代、それに前世のゲームと酷似している理由……これらの事柄は分からずじまいだ。


「星クラゲがいなくなれば、生態系も徐々に戻るだろう。継続的な監視は必要だろうが……」


 そうして海上へとゆっくり浮かんでいく。


「ぴよ!」


 と、そこで海コカトリス達がライトの向こうを羽で指し示す。


 ん?

 何かあったのか……?


「……どうやらリヴァイアサンのようですね」


 ステラが目を細めながら深海の闇を見つめている。


 そしてライトに照らされたのは、頭に傷跡のあるリヴァイアサンだった。

 巨大な頭がゆっくりと俺達に近付いてくる。


 にわかに緊張感が高まってきた。

 まさか――お礼参りか?


「……」


 ステラの闘志も高まっているのを感じる。


 と、そこで――巨大リヴァイアサンがちょこんと頭を下げた。

 そしてリヴァイアサンがぐわっと海に潜る。


 その潜った先を見てみると、巨大な貝が集められていた。


 どこかで見たことがあるような貝だな……。

 確実に前世で見たことがあるような。


 ジェシカが小首を傾げながら言う。


「……真珠貝のような?」

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 真珠は献上品?(๑ºㅅº๑) お兄ちゃんはぴよ観察で新たな発見あったかな?|ω•。 ))
[一言] もみの木の実は無毒です、ヨーロッパでは精油・入浴剤・石鹸に使われています。良く間違われるのが、イチイの実で北海道とかの寒冷地で、生垣等に使われ真っ赤な小さい実を実らせます。完熟した果肉以外は…
[良い点] 義理堅い奴やな……
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