466.崩壊の先で
俺の視界が歪む直前、見たものは――。
「ぴよよー……」(ああ、たぷが燃える……)
たぷたぷしていたコカトリスが、感極まった顔をしている……ところだった。
そして猛烈な魔力がダンジョンを揺らし……。
……。
気が付くと、俺達は石造りの床にいた。
ううむ、頭がふらつく。
どうやら……大広間みたいな場所だな。
天井が高く、青白い石で作られた部屋にいる。普通に呼吸ができるな。
水の中ではなかった。
「ここは……さっきのはダンジョンの転換じゃないよな? 空気はあるが……」
「どうやら海底神殿の中じゃないかな……。潮の匂いがキツい」
ナナが若干、嫌そうに首を振る。
水が苦手なヴァンパイアは、海に近寄ることさえ珍しいようだが……本当みたいだな。
「ふむふむ……そうですね、海の中のようです」
ステラの五感は鋭い。間違いはないだろう。
どうやらダンジョンから離脱できたようだな。
ウッドはまとまって倒れている星クラゲが気になるようだ。
そこではヴィクターが臆することなく、星クラゲを調べている。
しゃがみながら、ぴこぴこと動き回っていた。
「ウゴ……星クラゲがたくさん」
「ダンジョンから引き離されたからな。もう魔力がなくなって動かないが……」
「ダンジョンは崩壊したようですわ。ここの魔力もだいぶ弱まってますもの……。私も魔力をかなり使いましたわ」
「魔力回復ポーション飲む?」
ナナがお腹からごそごそと瓶を2本取り出す。
「頂きますわ。回復は出来るときにしておきたいですし」
「賢明だね」
瓶を1本、ナナはジェシカへと手渡した。
ナナはマイストローも取り出すと、瓶の栓を外してストローを差し、飲み始める。
「ふぅ……デリシャス……」
ジェシカも瓶の栓を開けて、ごっくごくと飲み始める。
「ふぅ……魔力の実の甘みとトマトの酸味が――って、ミックスされてますわね」
「当然だよ。トマトは全てに優先する……僕は可能な限り、トマトを混ぜる!」
一点の曇りもなくナナは言い切った。
俺は隣にいるステラへ呟く。
「……回復効果は薄れそうだが」
「エルぴよちゃん、全てに優先するそうです」
「なるほど、折り込み済みか……」
ならば仕方ない。
コカトリスも元気良さそうだな。
お互いにぴよぴよしてる。こちらは大して疲れてもいないようだな。
改めて神殿の内装を見ると、ここも外壁と同じくゲームの中によく似ている。
海の魔物の彫刻が並ぶ吹き抜けの大広間だな。
ゲームの中だと、大広間は中心部にほど近い。ほかにこのような空間はなかったはずだ。
「……調べるか」
「ええ、そうですね……。この建物にもいわくがありそうですし」
ステラは屈みながら、床に手をついていた。
「この床の下を魔力が――向こうに流れていくのを感じます」
たぷは燃えた……!(当社比) だぞ✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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