451.補給係
空を飛んでいる星クラゲ――だが星クラゲには遠距離攻撃はない。
近寄って触手で刺してくるだけのはずだ。
ヴィクターがもふっと羽を上げる。
「ふむ、ここなら全力を出せるな」
星クラゲの群れはどんどん近付いてくる。
瞬間、ヴィクターから魔力が放たれた。
「この魔法は攻撃範囲は広いが、精密な操作は無理だ。取りこぼしが出る」
猛烈な竜巻が地面から巻き上がる。
風の上級魔法【刃の竜巻】か。
鋭利な風の刃が広範囲を攻撃する。集団戦では特に役に立つ魔法だが、さすがだな。
「ウゴ、俺は石を投げる!」
「私も水の弾で……えい、ですわ!」
それぞれが得意の方法で攻撃を開始する。
「わたしも……今回は投石でいきましょうか。久し振りですね!」
ステラがすすっとバットを腰に差し、手近な石を手に取った。
ヴィクターがぽつりと呟く。
「……基本的な遠距離攻撃だな」
「いや、僕にはわかるよ。ヤバいよ……あれは」
ぴよぴよ。ナナぴよが補足する。
そしてその言葉は多分正しい。
ステラの豪速球はヤバい。
バシュゥゥン……!
まばたきの間にステラは石を投げていた。
……投球フォームが見えない。
それほどの早投げだった。
ドカッ……!
「ウゴ、命中!」
「ありがとうございます……!」
石を投げたとは思えない音が響く。星クラゲが1体、空から落ちてきた。
「……なるほど」
ヴィクターが着ぐるみのお腹をさする。きっと自分に突き刺さったらどうなるか、想像したのだろう。
俺も想像したことがあるからわかる。
「北の地でスイングは見たが、投げるのも桁違いか……」
「恐ろしい破壊力ですわ」
ちなみに俺も魔法で星クラゲを攻撃している。
海の中で使った茨の魔法だな。
おっと、そう言えばコカトリス達は――。
「ぴよ……」(あいきゃんのっとふらい……)
「ぴよぴ? ぴよ?」(どうする? 寝とく?)
「ぴよっぴ……!」(いや、できることはある……!)
たぷり気味のコカトリスが大きめの岩に近づく。
「ぴよー!」(そーい!)
コカトリスが羽をべしん! と当てると岩が砕け散った。
……まさか、これは……。
「もしかしてぴよちゃん……! わたし達のために岩ボールを……?」
「ぴよ! ぴよよ!」(いえすっ! これを使ってー!)
コカトリスがちょうど良さそうな石をステラとウッドに手渡す。
「ウゴ! ありがとう!」
本当に投げやすそうな石だな。
うまく割れるものだ……。
「ぴよ、ぴよよ〜!」(よし、手分けして石を集めるのだ!)
「「ぴよ!」」(おっけー!)
やる気が上がったステラが、石をビュンビュンと投げる。
そして投げた端からコカトリスが石をリレー形式で渡していく。
「ぴよ!」(はいっ!)
「えいっ!」
バシュン!
「ぴよ!」(ほいっ!)
「えいっ!」
バシュン!
慣れるにつれて、サイクルがどんどん早くなっていく。
これは……どうやら手早く終わりそうだな。
我の部屋、またやると思うんだぞ。
お楽しみにだぞ!✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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