449.ダンジョン内部
おお……すごい!
視界がクリアになってくると、さらに驚きが増してきた。
シダ植物が一面を覆い尽くしている。
背の高い木も地面の低いところも、シダ植物だ。
……デボン紀だか石炭紀だか、そんな古代のジャングルっぽいな。
前世にテレビとか図鑑で見た記憶がある。
そして、俺達は完全に陸の上にいる。
さっきまで海中にいたのだが。
「これがダンジョンか……」
振り返るとなんだか空間が歪んでいる。
向こう側は見えないが……海中に繋がっているんだろうな。
「向こう側はちゃんと繋がっているね。こっちは完全にダンジョン化してるけど」
ナナが空間が歪んでいるところに、もふっとハンドを突っ込む。
そのままちゃぷちゃぷ……。ぐるぐると空間の歪みを確かめていた。
「魔力の流れはかなり急というか、安定していませんね……。突然引っ張られましたし」
「俺はダンジョンは初めてだが、普通はこうじゃないのか?」
「ザンザスは入口が明確です……門は不動で、いきなり中に入ることはありません」
ふむふむ。
「ウゴ、神殿の中に入ったら突然こっちに来たし……」
「なるほどな……。確かに魔力の流れは外と比べても急だしな」
外で感じた魔力を微風とするなら、ここは台風前か。それくらいの差がある。
「……じゅるり」
「ぴよ、ぴよ」(すてい、すてい)
「ぴよ」(わかってる。たぷ自粛期間……。平常心、無の心、朝ご飯は食べました……)
「ぴよ」(そう、朝ご飯は食べたからね)
「ぴよ」(セカンド朝ご飯とか……)
「ぴよ!」(しょくよくー!)
コカトリスはシダ植物に興味津々のようだな。
でも羽で取ったり、ついばんだりしない。
自制心を働かせているのか……。
「ふむ、シダ植物か……。見ない種類だな。この国で自生しているモノではなさそうだが……」
ヴィクターぴよがシダを手にしてもぎ取る。
ジェシカもシダに顔を寄せて、じっと観察している。
「私の故郷に近い種類があるかもですわ」
「君の生まれは……百諸島だったか。東南の方角だな。ふむふむ……」
あっ。
シダ植物なら――俺は頭の中にある図鑑を広げる。
これが植物魔法で生み出すときのイメージだ。
「あった。これが同じか……?」
ふもっとハンドに緑色の光がきらめき、シダ植物の葉が生まれる。
「ウゴ、そっくり! 葉の形や大きさとか!」
「本当だな。種類はわかるのか?」
ヴィクターぴよがもぎ取った葉と俺の生み出した葉を見比べている。
「古い系統のワラビだな。覚えたから、地上に戻っても生み出せる」
「あとで調べるのにこれは便利ですわ……!」
どうやら俺の植物魔法もダンジョン調査で役に立てそうだな。
「むっ……エルト様、また魔力の流れが――」
「えっ?」
ステラに顔を向けると、またぐにゃりと風景が歪む。
「ぐっ……!」
魔力がさわっと強風のように通り過ぎた。
だがそれは一瞬のことだ。
めまいはすぐに消えた。
「これは……」
周囲はジャングルからゴツゴツした山肌へと一変している。
すごいな――これがダンジョンの変化か。
本当に風景ががらっと変わった。
コカトリスもちょっと圧倒されているようだ。
小さくぴよぴよしている。
「ぴよぴ……」(セカンド朝ご飯が消えた……)
「……ぴよ……」(……しかし、たぷは守られた……)
セカンド朝ご飯はすみやかにたぷるんだぞ……!✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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