441.ほっかほか
もみもみ。
ディアがマルコシアスの顔を羽でもみもみしている。
「あったか、あったかぴよよー」
「ほかほか、ぽっかぽかーだぞ」
「魔力的なアレをコレするぴよよ!」
「するんだぞ!」
盛り上がっているディアとマルコシアス。
俺は隣のステラにひそひそ話しかける。
「……ステラの知識でもマルコシアスは、色んな属性を付与してたか」
「魔王の配下との戦いではそうでしたね。槍や爪に炎とか氷とか……」
ふむ、それはゲーム中と変わらないな。
やはり同じ戦い方をしていたようだ。
「ところで前から気になっていたが……その魔王ってどういう人物なんだ?」
ステラが不朽の英雄となったのは、魔王と相討ちになったからだ。
その魔王自体、ステラと同じ数百年前の人物だが……。
「……うーん、ヒトだったんですかね? なんとなく、あんまり生きている感じはしませんでしたが……」
「ん? それって……アンデッドとか?」
この世界にもアンデッドは存在する。しかしかなりレアな存在らしいが。
「いえ、それよりはゴーレム的というか。なんだか生気は感じられませんでしたね」
「ふぅん……?」
俺はぴよっと首を傾げる。
「わたしも会ったのは一度きり、討伐のときだけです。それも数十分だけですし」
「そういえばそうか……」
前にちょっと聞いた話では、ステラとマルコシアスは魔王を難なく追い詰めたらしい。
魔王は召喚魔法と魔法具を極めていた。おそらく局面を打開する何かを呼び出そうとしたのだろう。
だが、それは大失敗した。
魔力が大暴走して魔王城ごと吹き飛んだのだ。
そしてステラは巻き込まれて重傷を負って、ペンダントを使い――木の像になった。
「本だとマッドサイエンティストみたいな書き方をされてるよな。経歴もよくわかってないみたいだし」
「わたしも知らないですね……。捕まえるために乗り込んだら、最終的に自爆してしまったので」
「よしよし……」
ぽんぽんとステラの頭を撫でる。
「本当によくわからない人物でした……。なんだか得体のしれないモノに成り果てていたのかもしれないですね」
「そうか……。ありがとう、話してくれて」
「……大丈夫です」
ステラがそのまま俺の膝に頭を乗せた。
……着ぐるみの部分だが。ふもっとした、お昼寝推奨部位である。
「よし! なんだかイケる気がするんだぞ!」
「そのいきぴよ!」
「だぞー!」
マルコシアスが叫ぶと、ディアがぴよっと片脚を上げた。
「ほかほかしてるぴよよ! 火のマルちゃんぴよ!」
「やったんだぞ!」
「お風呂のお湯くらいの温かみぴよね!」
「魔力バンザイだぞ!」
ステラは俺の太ももに頭を横たえている。
「良かったですね……」
「……あったかマルちゃんの誕生のようだな」
「ええ、一歩一歩です……!」
ディアとマルコシアスが波打ち際を行ったり来たりしている。
「ほっかほかマルちゃんーぴよー」
「だっぞだっぞー」
ざぶーん。
「あったかぴよねー」
「だっぞだっぞー」
……ふむ。
クラゲ討伐の役に立つかも、と一瞬思ったが……。
「冬場にはほかほか、良さそうだな」
まぁ、役に立つことが全てではない。
ちょっとずつ思い出していくのが、大切なのだ。
抱き枕としての性能がアップしたといって、過言じゃないんだぞ✧◝(⁰▿⁰)◜✧
お読みいただき、ありがとうございます。