432.海底への案内
俺の言葉にステラがむぅ……と答えた。
「頭をぱっこーんしたリヴァイアサンはいました」
「いたんだな……」
「いたんですわね」
「……正直、そういうのは何体かいたのでアレがそうだとは――」
リヴァイアサンがじろっとこちらを睨んできた……気がする。やはり迫力があるな。
魔法がなかったら素直にビビるだろう。
「でも妙ですわ。あまり殺気というか闘志が感じられませんわ」
「ええ、いきなりリベンジに来たわけではないようですね……」
「そうなのか……」
俺がわからないのがコレだ。
魔物の殺気とか、全くわからん。
まぁ俺には実戦経験がないからな……。
ゲームの知識で特性や動きはわかっても、実際の経験は伴っていない。
「ぴよよー?」(んにゅー?)
コカトリスも不思議に思っているようだな。
「………」
リヴァイアサンはぐるぐると回りながら、ゆっくりと潜っていく。
そう思うと、また浮かんでくる。
何が目的なのか、いまいちわからない動きだ。
攻撃してくるわけではなさそうだが。
「奇妙な動きですわね。見たことありませんわ」
「潜っては浮かんで……わたしも見たことがありません」
二人も知らないとなると、相当珍しい動きのようだな。
だが俺にはなんとなくわかる気がした。
これは……前世の記憶で似た場面をテレビとかで見たような。
コミュニケーションしたい、そんな動きに見える。
「……ついてこい、とか?」
「普通ならば、ちょっと考えがたいですが……そう、かもしれません。敵意もなく、こちらを誘うような動きです」
ステラが難しそうな顔で頷く。
「ジェシカはどう思う?」
「乗ってみるのもありだと思いますわ。……リヴァイアサンは恐ろしい魔物ですけど、同時に古くから生きている魔物です。何かあるのかもしれませんわ」
ふむ……意見は一致だな。
「よし、警戒しながら後を追跡するぞ」
「はい……!」
◇
……どうやら、誘いに乗ったのは間違いではなかったようだな。
俺達がゆっくり近づくと、リヴァイアサンはさらに潜り始めた。
そろり、そろり……海中をゆっくり進んでいく。
ちょっと妙な気分だ。魚の後をつけていくとは。
「リヴァイアサンは俺達をどこに連れて行くんだろうな」
縦に数十メートル、横に数百メートルは進んだか。
船団からはそれなりに離れてきた。
着ぐるみの目をぺかーさせながら、潜っていく。
「……あまり船団から離れるようだと、仕切り直しが必要になるぞ」
俺の言葉にステラが首を振った。
「いいえ、どうやら……ここが目的地のようですね。リヴァイアサンの動きが……」
「うん? ……おわっ!?」
ステラに反応した次の瞬間、俺は彼女の言葉の意味を理解した。
「凄いですわ……!」
ジェシカも思わず感嘆した。
目を光らせたコカトリスも驚きの鳴き声を上げる。
多分、俺と同じ感想だろう。
「ぴよっぴよ〜……!」(海の底に、おうちだ〜……!)
竜宮城……ではないんだぞ✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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