426.一日かけて
翌朝。
だいたい皆、同じ頃に目が覚めた。
まぁ、日が昇る頃にコカトリスがもぞもぞし始めるからなんだが。
「ぴよ……」(なんか調子いい……)
「ぴよよ!」(元気充填120%って感じ!)
むくりと起きるとコカトリスがぴよぴよ始めている。
「ぴよ……おはぴよよ!」
「ああ、おはよう……」
ぴょんとディアが俺の体に乗ってくる。
かわいい。
「ぴよ。仲間が水浴びしたいって言ってるぴよ!」
「むっ、やはり海コカトリスもそうか……」
コカトリスは水浴びが好き。村でもよくシャワーを浴びてるからな。
ステラも任務だからか、すでに起きていた。
やや眠そうな目はしているが。
「わたしがぴよちゃんと一緒にシャワー浴びて、泡立てましょうか。時間もあることですし」
「そうだな……。お願いする。俺はその間、朝ご飯の用意をしているよ」
「はい……! じゃあ、シャワーに行きましょうね〜!」
「洗うぴよよー!」
ディアの掛け声にコカトリスが羽を上げる。
「「ぴよ〜!」」(わーい!)
◇
シャワーとご飯が終わり、今日は陸の上で作業だな。つまり作戦の準備に費やすわけだ。
ほかほかになって帰ってきたコカトリス達は、部屋ですでにお昼寝モードに入っている。
仕方ない。コカトリスはお昼寝大好きなんだもの。
ララトマがぽむぽむとコカトリスをあやしている。
俺達は解毒ポーション作りだ。植物魔法で原料を生み出し、加工する。
ルイーゼ達も船の動きやらを色々と決めるのに、今日は海へは出ない。
今日一日できっちり整え、明日からが本番になる。
「魔法具関係はナナが用意するとして、ポーションをいくらか作らないとな」
「お手伝いいたします……!」
「ぴよ! あたしもやるぴよ!」
「我もやるんだぞ!」
「ウゴウゴ、できることがあれば……!」
「ありがとう、それじゃこれを――」
その日一日、俺達は解毒ポーションを作り続けた。
俺もステラも手先は器用だから、そこそこの数を作れたな。
ディアとウッド、マルコシアスは――まだモノを作るまでにはいかないが、手伝おうとしてくれるのが大切だ。
「……これだけの量を一日で?」
最後に出来上がったポーションを見せると、クロウズが驚いていた。
「とりあえず70個ある。もう少し作るが……」
「十分な量かと。ルイーゼ様も解毒については奔走されていますし、まずまず安心です」
「一番は毒の触手に刺されないことですが……」
ステラの言葉ももっともだ。
解毒ポーションの数に限りがある以上、刺されないに越したことはない。
「ジェシカ様が星クラゲの動きを船乗りの指揮官たちにレクチャーしております。コツを掴めば、刺されることも減るかと」
「それは何よりだ」
クロウズの目がコカトリスに注がれる。
なんとなく不安そうだ。彼の言葉はコカトリスへ通じないので、わからなくもないが……。
「あとは……コカトリスの統率は本当にお願いいたします」
俺は重々しく頷いた。
「任せてくれ。ぴよぴよ大作戦に抜かりはない」
……はずである。
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