425.閑話、それもまた
その夜。
ディアは夢を見ていた。
いや、それは夢というにはあまりに奇妙で――。
「ぴよ。ここは……砂浜ぴよ?」
ディアが見渡すと、そこは南国風のビーチだった。
「ぴよ?」
ふっと後ろにマルコシアス(子犬姿)が砂浜に寝っ転がっている。
「マルちゃん……ぴよ?」
「マルちゃんだぞ」
「ここ、どこぴよ?」
「我の生まれ故郷なんだぞ」
「そうなのぴよ? ……もしかしてマルちゃん時空ぴよ?」
ディアはぴよっと首を傾げた。たまーにディアはこんな夢を見るのだ。
マルコシアスとの不思議な夢。起きるとあまり覚えていないけれど、楽しい夢なのだ。
「そう、マルちゃん時空なんだぞ。今回は海を見て、思い出したんだぞ。我の生まれ故郷のソロモンビーチの高級街を……!」
「なるぴよ……! たしかにいいところぴよねー!」
ぴよぴよ、ディアは羽をバタつかせる。
エメラルドグリーンの海に純白の砂浜、それにヤシの木……まさに高級リゾート地だった。
「わふわふ。我が主のレベルも上がったんだぞ」
「マジぴよ?! ぴよっ……! 何か変わったぴよ?」
ぴよぴよとディアは自分の体をチェックする。
「ぴよぴよ……あまり変わった気がしないぴよ」
「主の変化は内面のレベルアップなんだぞ。外見の変化は、ささいなことに過ぎないんだぞ」
「ぴよ! なんか名言ぽいぴよ!」
「だぞだぞ!」
マルコシアスがもふっと前脚を上げる。
「我が主のレベルアップで、周囲のコカトリスへのバフも解禁されてたんだぞ」
「ぴよ! そうなのぴよ?」
「そう、成長なんだぞ」
ディアが羽をぴっと上げる。
「ちなみにどんなバフぴよ? とおさまみたいに、けっこー凄いやつぴよ?」
「ぴよぴよの羽ばたきとドタドタ走る速度がアップなんだぞ」
「……?!」
予想外の返答にディアは首を傾げる。
「すごそうなコトぴよけど……それってすごぴよ?」
「すごぴよなんだぞ……! 泳ぎも速くなるんだぞ」
「なるぴよ! それがあったぴよね!」
ディアがうりうりとマルコシアスを抱きしめる。
「わっふふー」
「大好きぴよよ、マルちゃん〜」
「我も大好きなんだぞ!」
マルコシアスもディアを抱きしめ返す。
「ぴよ。今日はマルちゃんの故郷にこれて、よかったぴよ!」
「我も良かったんだぞ」
マルコシアスは頷く。
「もっと色んなところに行くと、きっと色々思い出すんだぞ」
◇
翌朝。
ディアとマルコシアスは抱きあって寝ている。
ディアが目を覚ますと同時に、マルコシアスも目を覚ました。
「ぴよ。……夢を見ていたぴよ」
「わふぅ……我も見たような、見てないような……」
「マルちゃんの夢を見たぴよね」
「そうなんだぞ……?」
しょぼしょぼした目でマルコシアスが答えた。
忘れているらしい。
そんなマルコシアスをぽむぽむとディアが撫でる。
「それもまた、マルちゃんぴよ」
コカトリスへのバフ、すごーく昔に言及したんだぞ。
90万字くらい遡るんだぞ(震え)
やっと回収なんだぞ✧◝(⁰▿⁰)◜✧
えっ、ソロモンビーチ……だぞ?
紙の書籍で言及済みだぞ(。•̀ᴗ-)✧