408.大陸棚を超えて
「そういえば……マスクしている人達の声が聞こえませんね」
すでに腰からバットを抜いているステラが首を傾げる。
「言われてみるとそうだな。クロウズも……」
潜水部隊の隊長としてクロウズも同行しているのたが、話し声が聞こえない。
ぴよの鳴き声はものすごくよく聞こえるのだが。
「ぴよ〜」(すいすい〜)
「ザー……聞こえはするのですが……ザー……」
「ぴよよ〜」(もっと羽を動かして〜)
ふむ……クロウズの声は駄目なラジオみたいにしか聞こえない。
「魔力を使っているのか、この水中会話は」
「ええ、そうですわ。やはり魔力が弱いと会話は困難ですのね」
「この魔法、便利だけどあんまり使わないの?」
すいすいーとナナがジェシカの周りを泳ぐ。
かなり滑らかな動きだな。よく見ると、着ぐるみの脚や羽に魔力を集中させて推進力にしている。
小さなモーターを付けている感じか。下手をするとくるくる回る羽目になりそうだが……。
「……いつも水に潜るのは私だけか、あるいは貴族の方とだけでしたので。普通の人はその、潜って魔物退治は死ねますわ」
「ウゴ、そういう危険度なんだ……」
「百諸島でも、水の魔物はおびき寄せるのが定石ですわ。よほどのことがないと潜りませんわ」
「そうだね。水は死ねるからね」
ナナが腕を組んで頷く。ヴァンパイア的にも納得できる理由だったらしい。
「まぁ、俺達にはとても便利だな……」
とりあえず意思疎通がスムーズに行けばそれで良い。
周囲を確認しながらゆっくり潜水していく。
だんだんと光が少なくなり、暗くなる気がする。
「ライトをつけるぞ」
「あって良かった、目が光る機能ですね……!」
「そうだな、やはり潜るとこれは必要だ」
ぺかかー。
魔力を流して着ぐるみの目が光る。
「僕もつけよっと」
ぺかぺかー。
ナナの着ぐるみも目が光った。
ふむ、かなり見やすくなったな。
マスクの兵士達はぎょっとしてるけど……これは必要なことだからな。
20 、30メートルは潜っただろうか。海面はかなり遠くなった。
「ぴっぴよ!」(こっちこっちー!)
リーダーコカトリスが羽をぴこぴこ動かす。
ふむ……?
さっきまでの岩礁が大陸棚かな。ここからぐっと深くなっている。
奥にライトを照らしてみるが、海底は見えない。
「……何かが奥にいますね。水が揺れるのを感じます」
「わかるのか?」
「形も動きも大きくないとわかりませんが……向こうもこちらの接近に気が付いていると思います」
ステラが耳を動かしている。
どうやら集中しているようだな。
少ししてステラが指差しながら、
「あちらの方を照らしてもらえますか?」
「わかった」
俺は目線をステラの指差す方向に向けた。
ぺかかー。
「……いたな」
果たしてそこには、巨大な鯉……リヴァイアサンの頭が浮かび上がってきた。
実際に見るのは初めてだが、デカい。
頭だけでも人間並に大きい。体長は10メートル以上ありそうだ。
「……あれの奥にも」
ゆらりと泳ぐリヴァイアサンが身を翻す。
その奥には、さらに2体のリヴァイアサンの体が見える。
行ったり来たり、何かをしている風ではない。こちらの様子をうかがっているのか。
「ふむ、いきなり3体か……」
どうやら当たりを引いたようだな。
鷹さん、日本一おめでとうなんだぞ✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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