406.海ぴよの案内
ここから先はディアとの翻訳での会話だ。
草だんごを口にした岩場のコカトリスは、色々と俺達に教えてくれた。
偉大なり、草だんご。
『大っきくて食いしん坊の魚? あっちに行った海底の溝にいるよー』
「海底の溝か……」
『もう海の底に食べられるのがそんな残ってないし……』
「それは大変ですね……!」
「大変ぴよね……」
ルイーゼとヴィクターはふよふよと海の上を浮いている。
「溝か……見つけづらいところにいるんだな」
「海底洞窟に潜まれると長引くぞ」
「寝床の場所さえわかれば、なんとかはなる」
『そこのぴよっぽい人にはお世話になりましたー!』
ぴよぴよとコカトリスが羽を振る。
ヴィクターも羽を振って応える。
「気にしないでくれ。ぴよ仲間なんだから」
『いいぴよだー!』
「ふふふふ……」
ヴィクターはまんざらでもなさそうだな。
いいことをしたのは事実だし。
『大っきな魚がいるところまで、案内しようか?』
「それは助かるが……大丈夫か?」
『大丈夫! ヒットアンドウェーイってやつ!』
なんか陽気な単語になったな。翻訳だし、気にしないでおこう。
俺はふよふよと浮かんでいるルイーゼのほうを見る。
「というわけで道案内をしてくれるらしい。俺としては信頼できると思うが……どうだ?」
「んん〜、まぁ……やるだけやってみるか。結局、潜水は必要なわけだからな」
ルイーゼは髪をいじいじする。あまり期待はしていないが、他に当てもない。
最初の計画では疑わしいところをローラー作戦だしな。効率的に見つかるなら、それに越したことはないわけだ。
「じゃあ、頼もうかな」
『やったー! じゃあ……草だんごを皆に一個ずつちょうだい! 皆で手伝うよ!』
「しっかりしてますね……!」
「でも効果は大きい。潜る人間には限りがあるからな」
草だんごを海コカトリスに渡していく。
寝ているコカトリスもぺちぺちされて起こされていた。
『ぴよっ!?』
『えい!』
ぐいっとリーダーぴよが寝ていたコカトリスのくちばしに草だんごを突っ込む。ワイルドだ……。
『ぴよ! 甘い……!』
『そこのぴよっぽい人と人間さんがくれたんだよ! ちょっと海に潜りたいんだって! あの大っきな魚と戦うみたい』
『もぐもぐ……ごっくん! それなら協力するー!』
『よーしいくよー!』
『ぴよよー!』
こうして岩場のコカトリスが参加してくれることになった。
コカトリスがぱしゃぱしゃ泳いで先導するのを、船団が着いていく形になる。
「かなり速いんだぞ。小さな船は置いてかれそうだぞ」
「コカトリスはパワフルですからね。特に海コカトリスは泳ぎが得意でしょうし……」
そこから10分くらい沖合に行ったところで、コカトリスがとまった。
羽をぱたぱたと空へ向かって振り上げる。
……どうやら潜水ポイントに到着したようだな。
あの起こし方はデフォルトなんだぞ?
「コカトリスは一度寝るとなかなか起きないからな。仲間が何か知らせることがあるときは、ああして起こすのだ」
口にものを突っ込むだぞ?
「あれは緊急事態のときだな。普通は寝ている間にくちばしに触れられると大抵起きる。起きないときもある」
なるほど……早く確実に起こすのは、あれということなんだぞ?
「そう、あれはたまによくあるのだ。寝坊気味のぴよはあれをよくされるのだ……」