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402/834

402.!?

「ぴよ博士……北の国にいたという、コカトリス学の権威か」

「そうです。こちらにおられてたんですね」

「あのぴよはそう言えば、飛んでたんだぞ。魔法でだけど」

「ぴよ……羽じゃないぴよか」

「さすがにそれは無理なんだぞ」


 すすーっとぴよ博士がこの船団に飛んでくる。

 確かに……近付いてくるとわかるが、周囲に風のバリアのようなものがあるな。

 ルイーゼと同じ、風の魔法だ。


「どこで降りるんだろうな。やはり旗艦かな」

「そうですね……。あのときも魔物退治に協力してくれましたが、今回もやはりそうなのでしょうか」

「いいぴよだな……」


 ステラから前に聞いた事柄からすると、ちょっとマッドサイエンティストぽいが。


 後で挨拶くらいはしておくか。

 そんな風に思っていると、ぴよ博士はこの船の上空で停まった。


「……停まったな」

「ウゴ、この船に降りてくる?」


 ウッドがそう言った瞬間、ぴよ博士がストンとこの船の甲板に降りてきた。


「おはよう、諸君。ぴよ博士だよ」

「…………」


 ぴこぴこぴこ。ぴよ博士が小刻みにふもふも羽をパタパタさせながら言った。


「えっ……?!」


 この声、まさかヴィクター!?


 俺はかろうじて声を抑え込んだ。

 間違いない。多少記憶より年を取っているが、俺の兄であるヴィクターの声だ。


 周囲も突然の着ぐるみにびっくりしている。クロウズだけはなんだか、遠い目をしているが。


 ススーッ。


 ヴィクター(仮)の着ぐるみが滑るように俺の側にやってくる。


「!?」

「……着ぐるみの中身は詮索してはいけない。中の人などいないのだ」

「そ、そうだな」

「うむ。わかっていればいい。……良い着ぐるみだ。感心したぞ」


 絶対に間違いない。この着ぐるみの中身はヴィクターだ。


 ヴィクターは長兄で早くに家を出ていた。

 寄宿制の貴族学院で学んでいたから、まともに話すのは何年ぶりだろうか。


 でもこの心地良い低めの声は、ヴィクターだ。


 ……なぜ着ぐるみ姿でここにいるんだ?


「よっすー! 博士も来たんだな!」


 俺とヴィクターが話している間に、ルイーゼも甲板に降り立っていた。


「おはよう、ルイーゼ。義によりて参陣した」

「ああ! 助かるぜ!」


 ルイーゼがぴよ博士の背中をバンバン叩く。


 それだけで色々なことが見えてきた。ルイーゼとヴィクターは顔馴染みか。

 それもかなり気安い間柄のようだ。


 ヴィクターが参加するのも、前もって決まっていたことのようだな……。

 教えてくれればいいのにと思ったが、ヴィクターが口止めしてたのかもしれない。


 名乗りも呼ばれ方もぴよ博士だしな。

 ヴィクターの名前はここでは出すな、ということだろう。

 俺も一介の着ぐるみエルちゃんなので仕方ない。


「さぁ、仕事に戻った戻った! 歴戦の魔法使いが無償で援軍に来てくれたんだぞ。感謝しながら仕事に戻れ!」

「「お、おう!!!」」


 船乗りはルイーゼの一言で動き出し、仕事に戻っていく。


 ヴィクターも俺と同じ、何らかの事情があって着ぐるみで参戦したのか。


 わからん。

 着ぐるみのつぶらな瞳とふっくら体型しかわからん……。


「ぴよー。あなたがぴよ博士ぴよね!」

「……そうだよ。はじめましてと久し振りだ。謎のわんちゃん」

「久し振りなんだぞ」


 マルコシアスはそう記憶してるのか。

 まぁ、なにも間違ってないが。


「ぴよ。向こうでなにしてたぴよ?」


 むっ、ディアが重要なことを聞いてくれた。

 そうだ。ヴィクターはなぜあそこにいたんだ。


 ヴィクターがきっぱりと言い切る。


「お腹が空いてるかもだったので、ご飯をあげていたんだ」


 ……お、おう。

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぴよ博士のセリフが「おはよう」から始まったせいか、映画化もされた海外スパイものドラマの冒頭に流れる『極秘指令の人』の声で脳内再生されてしまいました(笑) そして、またしても私の腹筋さんが…
[一言] 兄弟ぴよの微笑ましい再会?
[一言] 貴族としてのヴィクターとぴよ博士…たぶん有名なのは後者なんだろうなぁ…
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