389.休憩地点へ
一方、ステラ達は順調に空をばびゅーんしていた。
「本当に凄いです! 飛んでますです!」
ララトマは空中飛行を楽しんでいた。
ドリアードは大地に根ざす者、空を飛ぶなんて夢のまた夢だ。
それが今は抱えられているとはいえ、空を飛んでいた。
「お空はいつもいい眺めぴよね!」
「天気は良さげなんだぞ。今のうちに距離を稼ぐんだぞ……!」
マルコシアスはきりっとした顔だ。
ララトマは兄の恋人。失敗は許されない。
しっとりマルちゃんの名にかけて港へ到着するのだ。
「はぁ〜……山もあんなに小さく……」
「この眺めは空を飛ばないと見られませんからね」
胸元に娘達を抱えながらの空旅行。
ステラにとっても楽しみの時間である。
背中のナナもコカトリスフォームなので、ぴよ度も高い。満足度も高い。
「もう少ししたら、休憩地点だね」
ナナが後方を確認する。
望遠鏡機能のおかげで、ナナからはルイーゼ達はばっちり見えていた。
ぎゅうぎゅう詰めの黄色多めの固まりは、問題なく空を飛んでいるようだ。
「ぴよがみっちりしてるけど、ちゃんと来てるよ」
「みっちり……!」
「ふわもっこぴよよ!」
「向こうも楽しそうです!」
そうこうして、ステラ達は休憩地点の小山に到着する。
「ここだねー。一休みしよう」
「はい……! 予定通りですね!」
実は港までの距離はそこまで遠くない。
東や北の国に比べれば同じ国内なので、一日で到着するのだ。
山の頂上はたいらであり、休むにはちょうどよい。
「お昼ご飯にしましょうね!」
「ぴよっ! とうさまのお野菜ぴよよー!」
ララトマも意気込む。彼女にも役割があるのだ。
「草だんごの時間です!」
◇
ふむ、ステラ達はすでに休憩地点に先着してるようだな。
「見える……」
小高い山の上にいるのが、望遠鏡機能で見える。
凄く高性能な着ぐるみである。
「時間通りに着けたな……。てか、向こうがはえーな……。赤く光ったり青く光ったり……なんなんだ?」
ぎくっ。
「ナナの秘密道具だな。魔力を推進剤にしてるらしいが」
「……ナナのアレか……」
浮かない声だな。
きっと過去に何かあったんだろう。
ステラ達に少し遅れて、俺達も山の頂上へと到着する。
……もやがちょっと出ているか。
薄く白いもやが広がり、山と谷を覆っている。
谷の一角に村がある。
百人は住んでないくらいか。
「この辺りは魔物もいますが、資源もあります。所々、人は住んでいますね」
ザンザスに比べると閑散としてる。
ここまで飛んできて、いくつかの村や街を越えてきたが……ザンザスは別格に巨大な街だな。
それがよくわかる。
「ウゴ……この子達はどうする?」
寄りかかられているウッドが俺に聞いてくる。
ふむ。寝てるな。
すぴーすぴー言ってる。
「……寝かせてあげれば……」
「ぴよっ!」(むくりっ!)
と、コカトリスがぱちっと目を覚ました。
「おわっ、起きた?」
「あっ、こっちのぴよちゃんも起きましたね」
レイアの後ろにいるコカトリスも、むにゃむにゃしながら起きたようだ。
「ぴよ……」(感じる……)
「これはアレですわ……」
ジェシカの目線を追うと、ララトマがぽてぽてと歩いてくる。
なるほど。
コカトリスはこれを察知したのか。
「お腹が空いたのですわね」
「ウゴ、きっとそうだね」
「草だんごの時間です!」
ララトマはいくつもの草だんごを抱えながら、こっちに来たのだった。
お読みいただき、ありがとうございます。