388.ねむみ
「あれがザンザスのダンジョンか?」
「はい、そうですね……! これまで数え切れないほど行きましたが、上からだとこの様に見えるのですね!」
レイアが感慨深そうに頷く。
彼女にとっては、ここは故郷だからな。
「ふむ……さすがに魔力は感じられないか」
「ウゴ、近付いても魔力は特にないみたいだよ」
「ほうほう。やはり変わっているな……」
そうこう言っている間に門の上を通り過ぎる。
ぱっと見た感じ、ゲームの中に類似したモノはなかったような気がする。
この世界の独自のものだろうが……まぁ、いっか。
多分すでに色々と学者が調べているだろうし。
門を越え少し飛ぶと、ザンザスの街並みも終わりを告げる。
ウッドがやや寂しそうに、
「ウゴ、終わっちゃったね」
「そうだな……でも帰りも通るから、またその時に見られるさ」
「ウゴウゴ、そうだね!」
あっという間だったな。
「ぴよ」(人がいたね)
「ぴよよ……!」(ぼくらをマネた着ぐるみがいた気がする……!)
「ぴよっ!」(きっとあやかってるんだよ!)
「……ぴよ」(……毛がないものね)
「ぴよっぴ」(寒いんだよ、きっと)
それからは……まぁ、なんというかあまり変わらない風景が続く。
丘、草原、小山、林。
たまに村と畑……。
もちろん上空から眺める景色は綺麗ではあるが……。
「ウゴウゴ、今度の村はけっこう大きいね!」
「少し植生も変わってる気がしますわ!」
「ステラ様は見えませんね。まだ先なのでしょうか?」
「だいぶ先行してるようだな。……ん?」
ふと、肩に重みがある。
顔を横に向けると、コカトリスが目をとろんとさせながら俺の肩に頭を乗せていた。
「……ぴよ」(……ねむみ)
「眠いのか……」
「むにゃ……」
コカトリスは口をもごもごさせていた。
明らかにお昼寝モードへ入りつつある。
「ああっ、頭を乗せるならぜひ私の肩へ……!」
すすっとレイアがコカトリスの首を持ち上げ、自分の肩に乗せる。
ツッコむ間もない早業である。
「ぴよ……」(もふ感がない……!)
コカトリスは頭をくっと上げると、レイアの帽子に突っ込んだ。
「首筋に、はわわっ……!」
レイアはうっとりしている。
もう一体のコカトリスもウッドに寄りかかり、すりすりとしてる。
こちらもやはり半分目が閉じていた。
無理もない。
音もなく良い景色で、春の陽気もある。
俺も警戒役がなくて座れたら、寝てたかもしれない。
やがて……。
「すやー、ぴよよー……」
「ぐぅ……ぴよー……ぐぅぅ……」
「寝てんのか?」
空を飛び始めてから、ルイーゼは前以外を一切見ていない。
なので後ろの状況は音でしかわからないのだ。
「悪気はないんだ」
「コカトリスをどうこう言うつもりはねーけど……見張りとしても期待はしてねぇし。それより寝相は大丈夫なんだろうな?」
「この二匹は寝相はいいです! 私が保証します!」
「……ならいいが……」
いいのか。
ルイーゼはあれだな、細かいところは一回確認すれば気にしないタチか。
「ところで寝相が悪いとどうなんだ?」
「…………」
珍しくレイアが即答しない。
顔はにこやかだが固まっている。
おかしいな。
コカトリス関連の話なら、秒で答えてくるのに。
「……まぁ、いささかイレギュラーな事態が引き起こされる可能性もなきにしもあらず、かと!」
コミカライズ第3話更新完了だぞ✧◝(⁰▿⁰)◜✧
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ナールの腕は無事なんだぞ!!!(。•̀ᴗ-)✧
お読みいただき、ありがとうございます。