378.同行メンバー
「ハードぴよね……！」
「いきなり高難度なんだぞ！」
と言いつつ、ディアとマルコシアスの目はちょっとワクワクしていた。
「飲み物くらいは飲めるといいと思います……！ ささっ……」
「そ、そう言われればそうだな……」
変装という性質上、ヘッド部分を簡単に取るわけにはいかない。
飲み物くらいは飲めたほうがいいのは、その通りだ……。
ナナはよく着ぐるみ姿で飲んでるしな。
「よし、いくぞ……！」
気合を入れてコップを受け取る。
「うっ、見えづらい……」
ストローをうまく着ぐるみの口へ誘導しないといけない。
むぐ、むぐっ……。
「ウゴ、もうちょっと下かも」
「ありがとう」
コカトリス着ぐるみの口は、魔力で開閉できるようになっている。
少し集中するとすっと口が開く。
「いいぴよ！ そのままぴよよ！」
「飲める、飲めるんだぞ！」
……娘達は楽しそうだな。
くぴ。ストローが口にまで到達する。
「いいですよ、そのままそのまま……！」
こくこく。
もう喋れない。ストローをくわえているから。
俺はそのまま、ちょっとだけ飲み物を吸い込む。
ごくっ……！
濃厚な酸味が口を駆け巡る。
トマトジュースだ！
「うぐふっ……」
「大丈夫ですか！？」
「……少しむせそうになっただけだ、問題ない」
うん、こぼしてはいない。
味がわかっていれば大丈夫だ。
こくこくこく。
ゆっーくりストローから濃厚トマトジュースを飲み干していく。
量は多くない。
すぐに飲み切ることができた。
「ぷはっ。これでどうだ？」
「ぐっどぴよ！」
「コカトリスらしくなってきたんだぞ！」
……うむ。
くいっと首を傾げる。
悩めるコカトリスのポーズ。
「かわいい……！ コカトリス味があります！」
よしよし。
それなりに変装はうまく行きそうだ。
「明日にはルイーゼが来るからな。この件もちゃんと伝えないと……」
◇
翌日。
午後に来るとの約束通り、ルイーゼは空から飛んで来た。
ちゃんと窓からではなく、扉を通って執務室へとやってくる。
その執務室にはコカトリスの着ぐるみが立った姿ででーんと置いてある。
俺が参加する旨を伝えると、ルイーゼは思い切り眉を寄せた。
「……いや、まぁ……そりゃいいんだが」
「足手まといにはならないつもりだ」
「わかってる。魔力的には――わかってる」
ルイーゼは唸っていた。
「コカトリスの着ぐるみなら、中身を詮索される可能性は低いし……。港で貴族が集まるわけでも……」
「懸念があるのかい？」
ナナの言葉に、ルイーゼは首を振る。
「丁重にはするけど、現地ではどうかな？ 貴族らしい扱いは当然できないぞ」
「それは構わん」
「住人が心配なのもわかるしな……。あたしも行くつもりだし、その気持ちは理解できる」
……半分、家族旅行みたいな感じなのは黙っておこう。
「それとコカトリスも二体、連れて行く」
「はっ！？ えっ……なんで？」
唖然とするルイーゼに、俺は重々しく頷く。
「義憤に駆られたらしい」
ここはハッタリだ。
どうせコカトリスの言葉はわからないだろうし。
義憤ぴよ。
これで押し通す。
「えぇ……？」
疑わしい目で周りを見る。
ステラが意気込んで、
「戦力にはなりますよ、戦力には！」
「そりゃそうだが……コカトリスってそんな頭か？ 人づてに聞く限り、なんか海の話を耳にして泳ぎに行くとかそんな感じじゃないのか……？」
ぎくっ。
「そんなわけないよ。リヴァイアサンを憂うぴよなんだよ」
「まぁ、それを言われちゃ確かめようもねぇけど……。責任は持ってくれよな」
ルイーゼはやはりナナに頭が上がらないらしい。
渋々という感じだが、認めてくれた。
戦力的にプラスになるのが効いたようだ。
ふぅ。
これで俺とコカトリス＆ララトマの同行もオッケーだな。
……うん。
ルイーゼの言う通りだ。
コカトリスが駆け出さないよう、気を付けないとな……。
ヴィクター経由でルイーゼもぴよマインドはそれなりに知っているんだぞ(人*´∀｀)。*゜+
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