372.着ぐるみ選び
翌日。
早速、アナリアとナールを呼んで話をする。
「――というわけなんだが」
あらましを聞いた二人はふんふんと頷きながら、
「にゃ。村の基本的運営は支障ありませんのにゃ。……エルト様の勤勉さには感服しますにゃ」
「ええ、人づてにお聞きしましたが、ルイーゼ様はかなり破天荒な方みたいですし……」
ん?
俺はちょっと旅行気分だったのだが……。
「あちしは見ましたのにゃ。いきなり空から降ってきて、騒いでましたのにゃ」
「うう、恐ろしい方ですね……。それでもエルト様相手には、無茶はなされないでしょうし……」
あぁ、なるほど。
ルイーゼを抑えるのに、俺も同行すると思っているのか。
ナナのアレコレは主に執務室だったからな。
アナリアやナール、他の住人は知らないのか。
「息抜きにはなりませんのにゃ……」
「……そうだな」
着ぐるみで、ちょっと息苦しいかもな。
「羽を伸ばすというわけにも……」
「うむ……」
コカトリスの着ぐるみだから、羽は付いているんだけどな。
「ぜひ、お留守番はお任せくださいですにゃ……! ばっちしやりますにゃ!」
「はい、エルト様は心置きなく討伐隊への同行を……!」
まぁ、二人ともきちんとやってくれる人材だ。
誤解はあるかもだけど……あのルイーゼとホームで渡り合うのは本当だしな。
俺はきりっとした顔で言った。
「ああ、よろしく頼む!」
◇
その後、俺はナナの家へ向かった。
着ぐるみを用意するためだ。
「いらっしゃーい」
「お邪魔する」
「お待ちしていました……!」
リビングにはレイアとステラがいる。
ステラには先に、話を通してもらったのだ。
レイアは魔法具をカチャカチャする手を止め、俺に向き直る。
なんだかコカトリスの羽っぽいパーツだな……。
「ようこそ……! ちょうど良い所に!」
……すでにレイアのテンションが高い。
「アナリアとナールはいかがでした?」
「快く留守を引き受けてくれたよ」
「それは何より……。水運とライガー家が絡めば、重要度はおわかりでしょう」
そんな感じだったな。
「――で、俺の着ぐるみだが……」
ナナがお腹からメモ用紙を取り出す。
「エルト様の体格は、ステラから聞いたからね。これなら比較的揃っている」
「お揃いですね……!」
俺とステラの背格好はほぼ同じ。
百七十センチくらいか。
冒険者はこのくらいの体格が多い感じだな。
「あとは細かな所をはかって……だけど」
「だけど?」
ナナがずいっと身を乗り出す。
「どこまで『ヤル』のかが問題だね」
「お見合い会で用意した着ぐるみは、一応兵士レベルの代物ですが……リヴァイアサンと戦える装備ではありません」
「ステラは当人の希望で可能な限り戦闘用にアップグレードするけど――エルト様はどうする?」
きらきら……。
ステラの瞳は、もちろんそこもお揃いで! と主張していた。
「ちなみにステラと同じ戦闘用だとどうなるんだ?」
口にした瞬間、俺はちょっとだけ後悔した。
三人がずずいっと身を乗り出して――。
「耐衝撃、耐刃、完全防水は対リヴァイアサンだと基本だね。あとは寝袋機能も」
これはナナ。
「羽や腰、頭の自由度も大切です……! ダンスが出来るくらいに、軽快な動作が出来るようにすべきでしょうね……!」
これはステラ。
「海の中は案外暗いものです。目がぴかーっとライトになるのは便利ですよ! 隠密ならコカトリス風味を増すために、鳴き声機能も有効でしょう……!」
……これはレイア。
まとめて言われても、ちゃんと理解できてしまうのがやや悲しい。
どれも一理あるのだ。耐久力は欲しいし、動きやすい方がいいし、便利なオプションもありがたい。
つまるところ、俺の答えは一つしかない。
「わかった、それで頼む……」
昨日はたくさんの声援ありがとうなんだぞ✧◝(⁰▿⁰)◜✧
なんだか着ぐるみ率が大変なことになってる気がするけど、今後ともよろしくなんだぞ!(人*´∀`)。*゜+
お読みいただき、ありがとうございます。