表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

369/834

369.証

 俺の答えに満足したのか、ルイーゼが安堵の声を漏らす。


「ふぅ、良かった。それがまず大前提だからな」

「利害は一致しているからな」

「詳細はまたの機会に詰めるぜ。とりあえず今日は話を受けるかどうか、それを確認しに来ただけだし」


 ルイーゼはトマトジュースを飲み干してコップを置くと、さっと立ち上がる。


「わかった。討伐隊の人選はこちらで決めていいか?」

「そーしてくれていい。任せる。あっ、でも一つだけ……」


 ルイーゼがステラのほうを見る。


「ナナ、答えてくれ。あたしとステラどっちが強いんだ?」

「……僕に聞くの?」

「あんたの強さはよーくわかってるよ。同年代で敵無しだったんだぜ。今も実戦経験を重ねたあんたには、あたしは勝てないだろうし」

「殊勝だね……」


 ナナはちゅるちゅるとトマトジュースを飲み、一息つく。

 ……どう答えるつもりだろうか。


 それによってはまた決闘騒ぎになりかねないが。


「僕より遥かに強いよ、ステラは」

「信じらんねーな。貴族院で魔王ナナとまで呼ばれたあんたが……あだっ!」


 俺は見逃さなかった。

 ナナの着ぐるみ脚がちょっと動いて、ぐりぐりしているのを。

 多分ルイーゼの足の甲を踏んでいるんだ。


「ちょっ、痛いんだけど!?」

「そのあだ名は禁止だって言ったよね」

「いいじゃねーか、あたしはそんだけナナを評価してんだよ」


 ちょっと涙目のルイーゼが、ナナへと食い下がる。


「やっぱり納得いかねぇ! 証を見せろ! さもなくば、あたしと戦え!」

「むぅ……」


 なんだか怪しい雲行きだ。

 ステラは素知らぬ顔をしているが。


「証、ね……。はぁ、わかったよ」


 ナナがごそごそとお腹を探り、虹色の鞭を取り出す。

 あれはステラから聞いたことがあるな。

 ナナの戦闘用魔法具だったか。


「げっ、それは……」


 ルイーゼがあからさまにぎょっとしている。

 何かトラウマがあったのかな?


「悪いんだけど、ステラ。これをちょっと受け止めてくれる?」

「それくらいなら……」


 ステラはカップを置いて、右手を顔の横に出す。

 ルイーゼはなんだか慌てていた。


「お、おい。それはちょっと……」

「証が見たいんでしょ?」

「そりゃそうだけど……」

「ヤバい代物なのか?」

「ドラゴンもぶっ殺せる武器だよ。あたしは二度と戦いたくない……」

「……なんだか経験があるようだな」


 思い出したのか、ルイーゼがぶるっと震える。

 どうやら痛い目を見たことがあるらしい。


「さぁ、いつでもどうぞ」


 ステラがそう言った瞬間、ナナの腕がしなった。

 七色の鞭が飛ぶ。


 あっ――。


 俺が呆気に取られた瞬間、ステラはすでに動いていた。


 バシンッ!!


 音が鳴った後には、ステラの人差し指と中指の間に鞭が挟まっている。


 鞭はピリピリと魔力を発して、万華鏡のように極彩色を輝かせていた。


 ナナはふふんと予期していたように魔力を打ち切り、鞭を引っ込める。


「これで満足?」

「……マジか……今のを……」


 ルイーゼがあんぐりと口を開けている。


「……大丈夫か、ステラ?」

「はい、ちゃんと手加減してくれましたので」


 どの辺がそうなのか、よくわからんが。

 しかしかすり傷一つないのは確かなようだ。


 ルイーゼは観念したように両手を上げる。


「わかったよ、納得だ……。どーやら伝説のとおり、とんでもない怪物のようだな」

ちなみにルイーゼはトマトジュースにされかけたんだぞ( ╹▽╹ )


お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 潰れたトマトにされそうになったのか・・・。
[一言] 更新有り難う御座います。 ……フッ……止まって見えるじぇ……。((( ;ºДº)))
[一言]  まあ、ポコポコされたらもっとひどいことになっているわけで、そうならなかった時点で彼女は幸運だったというものでは?本人にやる気はなくてもエルトくんが我慢できずにやるように言ったらやっていたで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ