表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

357/834

357.考えてみると

 ザンザス、死鳥の平原。


 川流れのコカトリスの、最後の一匹がぴよよーと下流に行くのを二人は見届けた。


「にゃ。ここで火は厳禁にゃ?」

「ええ、そうですねぃ。ここは乾燥してますからね」


 シュガーとナールは川辺でお昼ご飯の準備をしていた。


 パンにハム、それに野菜をちょっと。それに紅茶を用意する。

 持ってきたシートを敷いて、並べると完成だ。


 ナールも馬車で行き来することが多く、簡素な食事でも問題ない。

 腰を落ち着けたナールが、虹色の川を眺める。


「にゃー……本当にキラキラしてるのにゃ」

「まさにダンジョンの驚異ですぜ。俺も来るたびに心が洗われますからね……」


 死鳥の平原はほぼ乾燥した晴れ日が続く。たまに強烈な雨が降るくらいだ。

 ザンザスとは隔絶した気候である。


「ここには本当にコカトリスしかいないのにゃ?」

「知られている限り、ザンザスには他に獣や鳥、魚はいないですねぃ。他の魔物も植物や石みたいな奴だけでさ」


 小さな虫くらいはいるものの、他にコカトリス以外はいない。

 それもザンザスの特徴であった。


 パンをぱくつきながら、ナールが頷く。


「変わった空間にゃねー。でも、あちしは好きにゃ」


 乾いた風と、目の前の七色に輝く川。

 わずかに揺れる茶色の草。


 全てが初めてだった。


「他にも……いっぱい川があるにゃ?」

「小さいのも含めれば十個くらいは川がありやすね。どれも見応えがありますよ」

「いいにゃねー」


 元々、ナールは好奇心の強いほうだ。

 そうでなければ、ヒールベリーの村にいきなり移住はしなかったろう。


 とはいえ、仕事をおざなりにする性格でもない。

 最近は色々な仕事があり、こうした機会がなければダンジョンに行くこともなかったろう。


 静かに川を見つめながら、今度は紅茶を飲む。

 用意してきたのはシュガーだ。ザンザス産の優しい味がする。


 でも味覚の鋭い自分に合わせると、シュガーには軽すぎる気がした。

 しかしそこの所は甘えておく。二人ともいい大人なのだ。


「……村に戻ったらお見合い会にゃねー」


 どうしてこの話題を出したのか、ナールにもよくわからなかった。

 ただ二人とも独身で、しかも恋人がいないからだろう。それをお互い知っているという間柄でもある。


「ですねぃ……」


 シュガーがちょっとだけトホホ、という顔をする。


「でも俺は結構最初のほうの移住でね……。しかもレイアの主催でしょ? なんとなーく、ちょっと気まずさが……」

「それはわかるにゃ……」


 ナールも軽く頷いた。


「でもこういう機会を逃すと……にゃ」

「そーなんですよねぇ」

「シュガーはなんか理想とか希望とかあるのにゃ?」

「うーん、冒険者ギルドを辞めるつもりはないですからね。仕事に理解があれば……」

「あちしもにゃ。仕事を辞めるつもりはないにゃ」


 そこでシュガーとナールが声を揃える。


「ん?」

「にゃ?」


 ナールがさらに言葉を続ける。

 何かが繋がりそうな気がしていた。


「あとはお金とかはきっちりしたいにゃ。あちしの商会は商会、お互いの稼ぎは稼ぎにゃ」

「……うちは家の関係で、ゴタゴタしてるのはちょっと……」

「あちしの両親は北で隠居してるのにゃ」

「ああ、ポーション器具の整備業で悠々自適でしたっけ?」

「そうにゃ。父さんから継いだブラックムーン商会を、あちしで潰すわけにはいかないにゃ」

「立派ですねぃ……」


 うんうんとシュガーは頷く。


「にゃ……もしかしてにゃ……」

「……俺もちょっと気になったんですが」


 二人は顔を見合わせる。


 外見的にも合格点だ。

 性格はそこそこよく知っている。

 周囲の評判も良い。


 それに――このハイキングは楽しかった。

 年甲斐もなくはしゃいだ感じさえある。


 にゃーっとナールは考えた。


「あちし達、意外と相性いいにゃ?」

「……ですねぃ」

…………✧◝(⁰▿⁰)◜✧


これもまた、ひとつの形なんだぞ(人*´∀`)。*゜+


お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 愛があれば、異種族でも兄妹でも関係ないんだわさ?
[良い点] とある別の作品では良い感じだった異種族カップルが最終的には男(人間)の方が相手の種族に変化する事でくっついたりしてたけど、なるほどそのままですかぃ…( ´◔ ‸◔`)
[一言] ケモナーレベル高い?(棒
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ