355.地下広場の突撃
「これがポーションがないと進めない、ということか……」
「そうですね……。運が悪いと、どうしても必要になってきます」
ポーションの備えはある。ゴリ押しも可能だ。
だけど俺は少しだけ考えた。
このまま全員で突撃しなくても、ウッド達だけで倒せると思うのだ。
それはウッドの経験と自信にも繋がると思う。
「……ステラ、ウッドとコカトリス達だけで行けると思うか?」
「毒が効かないのであれば、恐れることはありません。今のウッドとぴよちゃんのパワーなら、接近できれば倒せるはずです」
ゲームの知識に照らしても、そのはずだ。
あのサイズのパズルマッシュルームは驚いたが、そもそも基礎ステータスは高くない。
今のウッドとコカトリスなら――過剰な戦力である。
「ウッド、どうする……? コカトリスと一緒に行ってみるか?」
俺はウッドに委ねることにした。
力は足りている。
「ウゴウゴ! 行ってみる!」
ウッドは意気込んでいた。だけどそれだけじゃない。
「ウゴ……危なかったら、助けを呼ぶね」
「ああ、もちろんだ」
コカトリスは……ステラがコカトリスに話している。
「……というわけで、ウッドと一緒に行って欲しいのですけど……」
「ぴよ、ぴよよー」(オッケー、キノコのために行ってくるよー)
「ぴよっぴー」(キノコ狩り〜)
「ぴよ、ぴよっぴよー」(そうと決まれば、さっそく行こー)
羽をぴっと上げるコカトリス達。
どうやらやる気のようだな。
よし……俺達は飛び込めるようにポーションを用意しよう。
あとはウッド達に任せるのだ。
◇
ウッドはコカトリス達の頭をもふもふと撫でる。
「ウゴ、それじゃ行こう!」
ウッドの言葉はわからないだろうが、コカトリスは聡明である。
それだけでなんとなく意図を察した。
「ぴよー!」(行くぞー!)
「ぴよよー!」(もにゅり甲斐があるぞー!)
ウッド達が通路から広場へと躍り出る。
「△○✕ーー!!」
巨大パズルマッシュルームは舞い戻った侵入者を見下ろした。
歩くたびにずしん、ずしんと地響きが鳴る。
その巨体の後ろでパズルマッシュルームが毒攻撃の準備に入っていた。
「ウゴ、まずは大きなのから!」
指差すウッドにコカトリス達がぴよっと敬礼した。
そしてどたどたと突撃する。
「ぴよよー!!」(とりゃー!!)
「ぴよっぴー!!」(とつげーき!!)
ウッドも遅れまいと駆け出す。
狙うのは足。後ろに倒せば、隠れているパズルマッシュルームも一網打尽である。
「ウゴーー!!」
「「ぴよよー!!」」
ウッドとコカトリスが前に出ると、毒攻撃が始まった。
緑色の煙がもくもくと視界を遮る。
しかしウッドに毒は通じない。コカトリスもあらゆる毒と精神攻撃を無効化するのだ。
「!? ✕○△ー!!」
一直線に突撃してくるウッド達に対して、巨大パズルマッシュルームの反応がわずかに遅れる。
その隙を逃すウッドではない。
思いっ切り力を込めて、巨大パズルマッシュルームの足にタックルをぶちかます。
ズシン……!!
鈍い衝撃が巨大パズルマッシュルームを襲う。
「✕✕△ーー!?」
そしてコカトリスも一斉に飛びかかる。
「「ぴよよー!」」(きのこー!!)
そのパワーに耐えられず、巨大パズルマッシュルームはバランスを崩す。
その光景を通路から顔を出したエルトとステラが見つめていた。
「おおっ、うまいぞっ!」
「そこですー! 一気に畳み掛けて……!」
ウッドは掴みかかって、ぐぐっとすくい上げるようにした。コカトリスもウッドに力を合わせて、後ろに倒そうとする。
「ウゴゴーー!!」
「「ぴよー!」」(どっこいしょー!)
たまらず、巨大パズルマッシュルームは他のパズルマッシュルームを巻き込むように倒される。
ズッシーン……!!
「ウゴウゴ、どうだ!」
かなりの勢いで倒された巨大パズルマッシュルーム。巨体ではあったが、ステータスは低い。
それだけでパズルマッシュルームはもう、動かなくなる。
「ウゴ、倒した……!?」
警戒するウッドに、一体のコカトリスはぴよっと羽を振る。
「ぴよー」(もう大丈夫だよー)
もう一体は早くもパズルマッシュルームをついばんでいた。
すでにもにゅもにゅしている。
満足そうな顔をしながら。
それを見て、ウッドは一安心した。
「ぴよ、ぴよー」(なかなかのもにゅり具合……)
ぴよ達の食べ頃センサーは正確なんだぞ( ╹▽╹ )
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