347.お見合い会の計画
大樹の塔。
本来はお休みだが、お見合い会の打ち合わせで俺はここに来ていた。
終わったらステラ達のところに行くのではあるが。
目の前にはレイアと、草だんごをもぐもぐしているテテトカがいる。
「どうでしょう、ザンザス産の着ぐるみです」
「……良く出来ているな」
「なかなかもこもこですねー、もぐもぐ」
テーブルの上にはコカトリスの着ぐるみ、そのパーツがででんと置かれている。
レイアが持ち込んだ、お見合い会の運営用着ぐるみだ。
「どうです? テテトカも着ぐるみは……!?」
「お花が太陽に当たらないのは、やですー」
「……なるほど」
そういえばドリアードは帽子類を絶対に着用しない。頭にある花部分は外に出しているもんな。
「それなら仕方ありませんね。まぁ、中身は冒険者を使うので良しとして……」
「良いのか」
「うまくいけば、お見合い会のノウハウと一緒に着ぐるみを売り出しますので」
……すごいな。レイアの商魂は商人以上だ。
「それで、ぼくのところに来たのはー? はぐはぐ……」
「お見合い会の中身を考えていまして。自己紹介タイムとかは決まっているのですが……」
「それは必須だろうな」
この世界にもお見合いとか、そういうイベントはあるようだ。その中でも自己紹介は外せない。
「しかし自己紹介と楽しいコカトリス着ぐるみだけで成功するとは限りません。なにせ……こじらせている方もおりますので」
「そ、そうか……」
「はえー、そうなんですねー」
そこで俺はピンと来た。
なぜ大樹の塔に来たのか。
「……ドリアードに協力してもらうのか」
「ご明察です!」
「あー、なるほどー!」
こくこくとテテトカが頷いた。
「ドラムを叩くのは難しいですよー」
「いや、草だんごをこねこねする方だと思うが……」
「そっちのほうですかー。まぁ草だんごを食べられるなら、いくらでもお手伝いしますー」
「ありがとうございます……!」
レイアが我が意を得たりと身を乗り出す。
「どうですか、このプランは……!?」
「悪くないんじゃないか? 草だんごで共同作業、ゲームの一環としては」
俺は感心していた。
結構真面目に考えているんだな。
「草だんごをこねこねするなら、大歓迎ですよー」
……余ってもドリアードのおやつになりそうだしな。それに釣りの餌にもなるんだし。
◇
一方その頃、シュガーをはじめとした冒険者達とニャフ族は湖で一緒にボートの補修をしていた。
ペンキを塗り直したり、壊れているところがないかチェックしたりである。
一台コカトリスボートのチェックを終えたシュガーがナールへと声をかける。
「ようし、これは大丈夫ですぜ」
「にゃー。ありがとうにゃ!」
「どういたしまして。せっかくのボートだ。長持ちさせないとな」
「まったくにゃ。でも冒険者達がそういう技能を持ってて良かったにゃ」
シュガーが照れくさそうに髪を触る。
「いやね、レイアが偉くなってからですぜ。なんでもやれるようになっとけー! って」
「そういえば、このボートもレイアデザインにゃ」
「興味を持ったことは自分でやってみたい性分、でもおかげで俺らは稼がせてもらってるわけで」
実際、レイアがギルドマスターになってから冒険者の年収は数倍になった。
「にゃ。あちしらも稼がせてもらってるのにゃ」
「変な人だけどザンザスには欠かせねぇ、そういう人ですからねえ」
そうこうしているうちにボートの点検が終わる。
待ちに待った釣りタイムだ。
「よいしょっと。それじゃのんびり湖へと出発しますか」
「にゃー、あちしらも漕ぎ出すにゃー!」
「「にゃー!」」
「おっ、いいですねい! 釣りライフを満喫しやしょう!」
適当な組分けをしてシュガー達は湖へと漕ぎ出す。
シュガーとナールは一緒のボートになった。もちろん二人きりではなかったが。
……そしてゆったり釣りタイムへ。
なので、この話題が出るのは不可避だった。
ゆらゆら、お日様が降り注ぐと口も軽くなる。
ナールは何気なく話を振った。
「にゃー。ところで、お見合い会の話って聞いてるのにゃ?」
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