表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

341/834

341.下準備

 ヒールベリーの村。

 俺はステラと一緒に大樹の塔へと向かっていた。


 太陽の光はだんだん、熱を増している。

 ユニフォームを作って良かった。陽気に当てられても楽ちんだ。


 そしてお見合い会に許可を出してからというもの、村の雰囲気が少し変わった気がする。


 そわそわ、どきどき。

 そこかしこで村人が挙動不審になっていた。


「……というより、すでにカップルも多いような気がするが。こんなにカップルが多かったか……?」


 春の陽気のおかげで、散歩したり外でのんびりする人も多い。


 というよりヒールベリーの村は木陰が多いからな。

 風も遮られているし、小鳥の鳴き声も心地良い。


 前世の記憶で言えば……そう、思い出してきた。

 軽井沢みたいな感じだな。


 ゆったり木々の間で暮らしてゆく。暑くもなく、かといって寒くもない。

 ちょうどよくまったりできる感じなのだ。


「これは――あれですね。きっとお見合い会の話がきっかけになって、らぶらぶな展開になっていると見ました……!」


 自信たっぷりにステラが頷く。


「やっぱりお見合い会とか聞くと、その前にイイ感じになっている二人はくっつくと思うんですよね」

「なるほどな……」


 わかる気がする。


「これでお見合い会の目標は、もう達成されたも同然ですね。カップルは増えたわけですから……」

「ん?」


 ステラの目がどことなく泳いでいる。


「そう、たとえお見合い会がうまく行かなくとも、主催者の責任じゃないんです。コカトリスの着ぐるみでも覆せないことはあります」

「すごいお役人的な言葉だな……!」


 ステラが俺にだけ聞こえるように、


「でも実際、お見合い会は諸刃の剣です。も、もし……ひとかけらの希望もない結果になったら……なってしまうことも……」

「まぁ、人の感情だからな」


 平民の結婚事情はかなり自由である。特にザンザスは自治都市だしな。

 重視されるのはやはり、お互いの気持ちというわけだ。


「はい、にゃーん」

「にゃーん……」


 家の前に作ったテラスで、ニャフ族のカップルがお互いに果物を食べ合いっこしてる。

 イチャイチャしてるな。


「お見合い会をやって、カップル成立ゼロ組は俺も避けたいとは思ってる。テテトカのところに行くのも、それが目的だ」

「協力要請ということですね……」

「そういうことだ」


 ごくりとステラが息を呑む。

 ……うん?


「テンポの早いビートは人の心を揺り動かします。テテトカのハイスピードドラムが、切り札とは……!」

「……いや、花飾りを少し置きたいだけなんだが」


 ◇


 大樹の塔に着くと、テテトカが草だんごをこねこねしていた。

 もちろん、こねながら食べているわけだが……。


 花飾りの要請自体はすぐに終わった。


「ではではー、盛り上げるような花飾りを作りますねー」

「ああ、頼む。コカトリス達の様子はどうだ?」

「落ち着いてますよー。ご飯もたっくさん食べてるみたいですしー」

「それは良かったです……!」

「卵が生まれて半月、もう半月で孵化するはずだからな……」

「ぴよちゃんが生まれると、また賑やかになりそーですー」


 テテトカもなんだか嬉しそうだな。ドリアードとコカトリスの絆は固くて深い。


「ララトマが宿舎をみてますからねー。最近はパズルマッシュルームもお気に入りみたいですしー」

「ほうほう……」

「もにゅもにゅしてますねー」

「ふむ……不思議だな。草だんご以外にそんなに食べたがる物があったなんて」


 コカトリスが何を食べているか、この村でコカトリスが食べているご飯は把握している。


 それによると、これまで草だんご以外に特段の興味を示したご飯はないはずだった。


 果物も野菜も人間には食べられない枝や葉も食べるけど、大抵すぐに流行りが変わる。


「……ん? 待てよ……?」


 俺はふと気付いた。

 コカトリスは倒したパズルマッシュルームを食べるとき、自分達が倒した奴しか食べない。

 冒険者が倒したパズルマッシュルームを食べてはいない。


「ステラ、覚えていたらでいいんだが……コカトリスが持ち帰るパズルマッシュルームなんだけど、もしかして自分達で討ち取った個体だけか?」

「えっ? えーと……はい、言われてみるとそうですね。冒険者が倒したのは担いでいないようでした」

「へー、そうなんですねー」


 テテトカがふむふむと首を傾げる。


「そんな習性、ぴよちゃんにあったんですねー」

「テテトカでもそんな感じか」

「知りませんでしたー」


 パズルマッシュルーム、お気に入り……これらには何か理由があるんだ。


 だって、草だんごはドリアードから手渡しで食べているんだし。特別な理由があるに違いないのだ。

世にも恐ろしいもの……成立しないお見合い会( ╹▽╹ )

地獄の悪魔も泣けるんだぞ。


お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ぴよちゃん誕生まで約15日!! [気になる点] 気持ち良い木陰には、絶妙な距離でベンチ(エルトくんの植物魔法製・誰でも移動可能)が設置されている…はず! [一言] ついに『村を2人組…
[一言] 更新有り難う御座います。 ……カップル成立ゼロ組……。((( ;ºДº))) た、たまにあるよね?(ºДº; 三 ;ºДº)(高速目逸らし)
[一言] 砂糖に甘い話フラグは立たないのか…… きのこ狩りに行って他人が採ったきのこ食べてもねえ ジャイアントさんがまた目覚めてしまった…… 短い眠りでしたよ……(´・ω:;.:...
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ