314.持って帰ってきたもにゅは
ヒールベリーの村。
マルデ生物と野菜のバーベーキューを終えて、俺達は村へと戻ってきた。
「とってもおいしかったですー。また行きましょー」
ウッドから降りたテテトカが、そう言ってくれる。
嬉しいことだ。
「もちろん、また行こうな」
「ウゴウゴ! 行こう!」
「はーい。湖の上からの眺めも綺麗でしたしねー」
テテトカはほくほく顔である。
「新鮮でしたー」
「それは良かった」
話しながら塔の前の広場に着くと、何やらコカトリス達がぴよっぴよしてる。
あとは……あそこにいるのはアナリアか?
「ぴよー」(すごーい)
「ぴよぴよー」(シメジがカットされていくー)
広場には昨日持って帰ってきたパズルマッシュルームが置かれている。
どうやらそれを加工しているらしい。
しゅばばばば。
アナリアが包丁でパズルマッシュルームをカットしまくっていた。
イスカミナや他の人達も手伝っているようだな。
「エルト様! ちょっと広げて作業しています!」
「あ、ああ……広場は広いから、気にしないでくれ」
「にゃん。パズルマッシュルームですにゃん」
「もう切り始めてたんですかい?」
アラサー冒険者はちらっと聞いていたような感じだ。
持って帰ってきたパズルマッシュルームは倉庫に仮置きしてたんだが、それを引っ張り出したんだな。
「ぴよちゃん達の視線を感じたので……切り始めました!」
「……なるほど」
「とりあえずカットしていくもぐー!」
他にも前にパズルマッシュルームをもにゅもにゅ食べまくってた人が何人もいるな。
好きな人もかなりいるようだ。
「ぴよ? ぴよぴよ?」(いい? 食べていい?)
「ぴよぴよっぴ」(もにゅりたい、そのシメジ)
「食べたいみたいですね……。けっこう切ってきたので、いいですよ!」
にこっと微笑んだアナリアが切ったパズルマッシュルームを差し出すと、コカトリスはすぐに口の中へ放り込む。
もにゅもにゅ。
もにゅもにゅもにゅ。
コカトリスが並んでパズルマッシュルームを食べ始めた。和む光景だな。
しかしまだパズルマッシュルームは相当量ある。
俺達はこれから帰るだけだが……。
「……手伝おうか?」
「そ、それは……そうですね、手伝って頂いたほうがいいかもです」
「ウゴウゴ、切ったの運ぶ!」
「よっしゃあ、バーベーキュー後の腹ごなしだ!」
冒険者達も乗り気なようだな。
というより、自分達が倒して運んできたものだからある意味当然か。
「ふむー、ぼくにできることありますー?」
「……! じゃあ、ここらへんは手でちぎれるので、細かくしてもらえると!」
アナリアが心なしか嬉しそうにテテトカへと答える。
テテトカのこういう反応は珍しいかもしれない。
「はーい」
「わたしたちもやるー!」
テテトカが連れてきたドリアード達もやる気のようだ。
「じゃあ、一緒にやりましょー」
「「はーい!」」
ふむふむ、これもいい傾向だな。
俺も包丁を持って、パズルマッシュルームを切り始める。
暗くなるまで作業をして、後片付けをする。
まだちょっと残っているが、だいぶ整理できたな。
「いつの間にか人も集まっているな……」
「ウゴウゴ、皆でやってる!」
気が付くともうすぐ夜ご飯の時間だな。
「このまま解散でもいいが、せっかく集まったからな。またバーベーキューするか」
「「わーい!!」」
「「ぴよー!」」(おやさいー!!)
一日二回バーベーキュー。
セレブな感じがする。
少なくとも前世では無理だったな。
……コカトリスも羽を上げて喜んでる。
俺の言葉をある程度、理解しているっぽい。
そうして食材を持ち寄って野外で夜ご飯を食べる。
実はそれなりにお腹は膨れているので、俺が食べる量はそこそこだが。
パズルマッシュルームをはむはむするのは、そういう意味では悪くない。
そうして皆でわいわいやりしていると、夜空に一筋の流れ星が見えたのだ。
「あっ」
「ウゴウゴ、どうしたの?」
「流れ星だ」
それはとてもよく、美しい流れ星だった。
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