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【書籍化・コミカライズ】植物魔法チートでのんびり領主生活始めます~前世の知識を駆使して農業したら、逆転人生始まった件~   作者: りょうと かえ


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289/874

289.情熱

 ララトマの作品は、他の二つとはまた趣向が違った。大きな丸太を真ん中にひとつ。

 その周囲に枝や花を配している。


 この作品にはスネアドラムがない。その代わり丸太が作品の中央に据えられているのだ。


「なんか……ドキドキするね?」

「はい、なんというか……情熱的です」


 オードリーとクラリッサがぐっと身を乗り出してララトマの作品を見つめる。


 その理由は枝と花にあった。

 青々とした葉と赤色や青色の鮮烈な色合い。

 特に花が多く、ぱあっときらびやかなのだ。ゼラニウムやブルースターは小ぶりの花ではあるが、恋の花としても人気が高い。


「シスタリアもそう思うでしょう?」

「ええ、これは――多少変形していますが、花束のようです」


 銀縁眼鏡をくいっとしてシスタリアは答える。


 先ほどの二つとは異なる思想と精神性。

 シスタリアは無意識に教養からそれらを読み取ろうとする。

 おそらく丸太は建物、何かの見立て……それを可憐で情熱溢れた花で覆っている。

 これが意味するところは――。


 そこでディアがマルコシアスに話しかける。


「ぴよ。これはおはながおおいぴよねー。なんでぴよ?」

「恋とか愛とか、要はなんとかかんとかなんだぞ」


 ぽふぽふとマルコシアスがしっぽを振る。


 その言葉にステラが目を閉じる。

 思いっ切り適当、完全にマルちゃん言葉に変換されているが……しかし口は挟まない。


 マルコシアスの言葉にディアが首を傾げる。


「ぴよ。またむずかしいぴよ。このはなとあいって……なにぴよ?」

「燃え上がる感情は何かになるんだぞ。主も楽しいときは――羽をぱたぱたさせてるんだぞ」

「なるぴよ! そうぴよね!」


 ぱたぱたぱたと羽を動かすディア。

 かわいい。


「ということは……ララトマはそれをおはなにしてるぴよね! なるぴよ、ちょっとりかいしたぴよっ」

「わう。よしよしなんだぞ」

「ぴよぴよぴよ!」


 マルコシアスがむにゅーっとディアに抱きついて、頭をぽむぽむ撫でる。

 その隙にすーっとナナがステラの横にスライド移動し、小声で聞く。


「えっ……そうなの? そういうアレコレ的なアレなの?」

「そうですよ。知らなかったんですか?」

「知らない……」


 ステラは横目でナナに答える。


「まぁ、まだどうなるかはアレですが……。ナナも彼女とのこと、気を付けてくださいね」

「うっ。ぁい……」


 ナナも冒険者として遥かに先輩のステラの前では、素直である。

 ステラの言わんとしていることを察したのだ。


 オードリーとクラリッサ達はララトマの作品をぐるっと回る。そうして、ほぅ……と息を吐いた。


「これまでとはまた違うね……」

「うん、違ったね」


 音楽や物語で恋や愛が取り上げられることは多い。

 でも彼女達にとっては、それらは単に取り上げているだけなのだ。


 憧れですらない。

 単に、そういうモノというだけなのだ。


 でも、目の前の作品は少し違った。

 この作品の奥には一人の女性がおり――彼女が願いと夢を込めてこれを作ったのがわかったのだ。


 あの丸太や花をすすっと設置したのはディアかもしれないが……。


 そのために二人の胸は高鳴ったのだ。

 感情を隠さずぶつかりにくる、それがララトマの作品だった。


「じゃ、じゃあ……次が最後だね」

「う、うん」


 二人は顔を見合い、最後のウッドの作品に移る。


「ぴよ! がんばったぴよよ!」

「我も配置したんだぞー」


 オードリーとクラリッサが期待に胸を膨らませながら、ウッドの作品へと歩いていった。


 ◇


 ヒールベリーの村。


 冒険者の執務室で俺はイスカミナの書類を読み込んでいた。


「ふむふむ……」


 イスカミナの書類は専門用語も散りばめられている。

 ウルトラドラゴン機関とか、ぴよ式エネルギー変換炉とか。

 確か工学の本にあったが、魔物の生態観察やら研究で見つかったやつだな。


 魔導トロッコも魔法具の一種であり、魔物からヒントを得た技術も多い。


 もちろん、ぴよ式エネルギー変換炉はコカトリス由来の技術である。ある種の魔力は冷却(水浴び)と停滞(お昼寝)により、反応性が高まる。

 そのためこのエネルギー変換があると、長期的に見てリターンが増えるのだ。


 ……うん、もちろんコカトリスを観察していて学者が発見したらしいが……。


 書類を読み込む俺に、途中参加してもらったナールが紅茶を進めてくる。


「にゃ。紅茶のお代わりはどうですかにゃ?」

「ありがとう、頂くよ」


 一段落したそうなので、来てもらったのだ。

 分厚い分、ナールにも見てもらったほうがいいだろうし。


「いずれは人も行き来するようにしたいですもぐー」

「最初のうちは貨物だけ、ということだな」

「人を乗せると座席や安全装置やら、色々と必要ですもぐ。積める荷物も減りますもぐ」


 それはそうだな。

 運転手だけと乗客がいるのでは考え方も違う。

 もちろん両方の車両を用意するのもありだが、初期投資は高くなる。


 気になる魔導トロッコの導入費用だが……まずは金貨五百枚は必要、か。

 これもテストや短距離線の価格で、まずはこれをしないと路線を伸ばせない。


 その後、路線を延長させたりするのは別途相談のようだな。


「にゃ。やはりかなりのお金がかかりますにゃ……」


 俺の貯め込んだ資金でどうにかはなるが……。これまでとは文字通り桁違いの投資である。


 だが利益も明白だ。

 もし魔導トロッコが全線開通なら、ヒールベリーの村とザンザスまで半日前後になる。

 速度的には馬車の三倍速を見込む……ということだな。


「ふむ……ふむ……ふむ?」


 読み進めていくと、魔導トロッコの車両の絵が描いてあった。きちんとした車輪付きの絵だ。

 どこかで見たことがあるというか……。


「……これを描いたのはアナリアか?」

「もぐ! ご明察ですもぐ!」


 ……ふむ。

 トロッコの頭にコカトリスの顔がくっ付いている。


 まさにぴっぴよ鉄道(仮)という感じだな。

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ウッドをララトマが、ララトマの愛と恋が華やかに取り巻き彩り包み込みたいその思いがすべて赤裸々に、キラキラと輝く恋の作品。 まだ恋をしらない、物語の中の「そう言うもの」な、「物語のスパイス…
[良い点] 更新ありがとうございます♪ 先頭車両の前面に、コカトリス・ヘッドフィギュア。 うん、安定のデザイン! 「フェイス」だったら、機関車のト○マスくん的な…ですね(笑) [一言] 地球の日…
[一言] 更新有り難う御座います。 ……もの凄いタレント(才能)が集まってますねぇ……。
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