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235.カラフル

 ナールとの話で貴重な洞察を得た。

 やはり相談はしてみるもんだな。


 仕事が終わって家に戻ったら検証しよう。

 ウッドに綿を出してもらうのだ。


 そうして冒険者ギルドでの仕事が終わり、日の高いうちに家路につく。

 書類仕事も慣れてきて、早いと午後三時くらいには終わる。


 ちなみに冒険者ギルドの一般職員も仕事が早く終わったら帰っていいことにしている。

 だらだら居残る必要はないし、メリハリをつけて仕事をすればいいのだ。

 元々自由業の冒険者相手の仕事なので、これでも十分回るしな。


 村の道は荷物を抱えた冒険者やニャフ族の商人で賑わっていた。

 もう少しで季節は春になる。ここらは冬でもちょっと肌寒い程度だが、夏でもそんなに暑くはないらしい。

 一年を通してそれほど気温が上下しない、過ごしやすい地域なのだ。


「こんにちはですもぐ!」


 向こうから歩いてきたのはモール族のイスカミナだ。


「おっ、こんにちは」

「こんにちはです……!」


 背中にバッグを背負っており、そこから枝や花が飛び出している。

 彼女も花飾り作りのメンバーだったな。


「……大樹の塔の帰りか?」

「はいもぐ! そろそろ芸術祭の出展物も出来上がりつつありますもぐ!」


 ぱたぱたと手を振るイスカミナ。

 かわいい。


「このお荷物は……家でも作られるのですか?」

「ちょっとだけ、家でもやってみたいもぐ!」

「なるほど……やる気だな」

「はいもぐ!」


 イスカミナ、本当に楽しそうだな。

 やはり大きな目標があると張り合いが違うのだろう。


「あまり無理しすぎないようにな」

「ありがとうございますもぐー!」


 そう言って、イスカミナも家に帰っていった。


 よしよし。

 ちゃんと準備が進んでいるのを感じる。


 あとは――俺達のユニフォームか。

 ウッドの綿をうまく使えればいいな。


 ◇


 俺とステラは家に帰ると、早速それを検証することにする。

 ウッドに綿を出してもらうのだ。


「ただいまー」

「ただいまです……!」

「おかえりぴよー」

「おかえりなさいなんだぞ」

「ウゴウゴ、おかえり!」


 リビングに入ると、三人とも遊んでいる。

 ウッドの膝の上にディアとマルコシアスが乗っていた。


「ん……?」


 それはいつものことだ。

 綿でほかほか遊んでいるのだが――昨日までと違うことがあった。


「……その綿は……」


 ディアとマルコシアスがもっふもっふしていた綿――それに色がついている。


 真っ白な普通の綿ではない。

 鮮やかな青色と情熱的な赤色。


「ぴよ! おにゅーのわたぴよよ!」


 ディアが千切った綿をこちらに見せる。

 青色……。

 海の色、そう形容できるような美しさだ。


「ウゴウゴ、なんか出せるようになった!」

「なんか……急に?」

「ウゴ、そう!」


 ウッドが楽しそうに笑う。


「成長したということでしょうか……?」


 ステラが俺の方を見る。

 うーむ、きっとそういうことなんだろう。


 毎日ずっと綿を出していたからな。

 それで出来るようになったんだろうか。


「ウゴ、変わらず綿は出せる!」


 そう言うとウッドが右腕を前に構える。


 ぽん!


 おなじみの音が鳴り、綿が飛び出す。

 その綿は白色ではなく赤色だ。

 ……本当に着色されている。


 ゲームの方では……どうだったろう?

 着色済みの綿を出す能力もあったかな?

 もしかしたら課金アイテムなんかでそういう色が変わるだけの機能はあったかもしれない。


 ゲームの中では性能に関わらない、見た目だけの変更はかなり出来たと思う。

 もっとも俺は見た目だけ変えるのにはあまり興味なかったが。

 打ち出す綿も……色くらいはカラフルに出来たかもしれない。


「どうぴよ! きれーぴよよ!」


 ディアは大興奮だな。それは凄くわかる。

 リビングの入口から見ても色鮮やかなのだから。


「どれどれ……」


 ディアの足元に近付いてかがみ、綿を手に取ってみた。

 近くで見ると、色がよくわかる。

 本当に綺麗な青色だな。糸に出来たら素晴らしい物になりそうだ。


 触り心地もとても良い。


 ふかふか……。


 ふむ、これまでの白い綿と変わらない。

 ……と思う。


「なかなか素晴らしい色合いなんだぞ」


 マルコシアスは赤色の綿がお気に入りのようだな。

 首まで入って堪能している。


 ステラも俺の隣にかがむ。


「本当に良いですね……。爽やかな太陽に照らされた海の色。そんな感じです」


 俺と同じような感想だな。


「思わぬ展開だな。これを糸に出来るといいんだが」


 色合いは問題ない。

 あとはこれを使えるかどうかだ。


「やってみますが、出来ると思います。マルデコットンも裁縫に使えましたしね。手触りもかわらないですし、使い勝手も変わらないかと」

「ぴよ?」


 ディアが千切った綿を頭に当てながら首を傾げる。

 ふかふっかな綿に頭が埋もれかけてるな。

 ……青色と黄金のディアがセットになり、かなり見栄えがする。


「ああ、このカラフルな綿をユニフォームに使う糸にどうかなと思ってな」

「ぴよ! いいぴよね!」

「ウゴ、糸に……? いいかも!」

「ウッドもそう思うか?」

「ウゴウゴ、この色……俺も好き!」


 ウッドも自分で出来ることが増えたからか、喜んでいるな。


「よし。糸にするのを明日、やってみるか」

「そうしましょうか。……それで、どれくらいの色数が出たりするのでしょう? 赤青だけでしょうか」

「あっ、それはあったな……」


 ゲーム準拠だとかなりの色数になったりするのかな。

 まぁ、赤青だけでも使い道は多いが。


「ウゴウゴ、たくさんの色を出せる気がする……」

「いいですね……! や、やってみてもらってもいいですか!?」

「ウゴ、いいよ!」


 ウッドが腕を天井に向ける。


 そして――ぽぽんと音が鳴り、綿が打ち出される。


 赤、青……。


 ぽぽぽぽん!


 緑、黒、黄、灰、紫……!


 少しずつ、どんどん違う色の綿が出てくる。

 ……すごい。


 ぽぽぽぽん!


 結局、数えたら――十六色もあった。


「すごーいです……!」


 ステラがキラキラした瞳で生み出される綿を見つめている。


「ああ、そうだな……!」


 これだけの色があれば、ユニフォームもだいぶブラッシュアップされる……。

 間違いない!

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 ナイスご都合主義!
[一言] 金糸銀糸は……今後に期待
[一言] 16色……成長すると256色、4096色、65535色と増えていくんですね。
感想一覧
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