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181.かあさまのまねっこ

 ヒールベリーの村。


 ニャフ族と遊び終わった俺達は家に帰った。

 綿はそのままニャフ族に渡したので、白くてほわほわになってニャフ族も帰っていく。

 かわいい。


 家に戻ったら夜ご飯の用意だ。


「きょうはぎょうざぴよ!」


 ディアが一生懸命こねこねした餃子の中身。

 昼間にやっておいてくれたんだな。

 それを皮で包んでいく。


「ウゴウゴ、こうして……こう包む」

「なるぴよ……」


 ウッドとディアが一緒に餃子の皮を巻いていく。

 真剣そのものだな。


 俺は辛味炒めを作りながら、その様子を眺めている。

 ステラのいない分、頑張ろうとしてるんだな。


「まくぴよ、まくぴよ」


 くるくるくる。

 ウッドの教え通り、ディアがどんどん餃子を作っていく。


 ディアもウッドも教えたことは割とすぐ出来るからな。頼もしい限りだ。


「できたぴよー!」

「ウゴウゴ、そしたら今度は蒸す……」

「わかったぴよ!」


 そんな感じで用意が終わり、食事にする。

 まずは……二人が作った餃子だな。

 ほかほかの美味しそうな餃子が並んでいる。


「たべてみてぴよ! じしんあるぴよ!」


 テーブルの上で胸を張るディア。

 なでなで。


「もちろん食べるよ。美味しそうだな」


 これはお世辞ではない。

 形もほかほか加減もよく出来ている。


 俺はフォークに餃子を載せて、もぐもぐと食べる。

 しっかりと餃子本来の旨味が出ているな。


 ちょっと寒いこの季節にはぴったりだ……。


「……ど、どうぴよ?」

「うん、よく出来てる。美味しいよ」

「やったぴよ!」


 なでなで。

 よくやったディアを両手で揉むように撫でる。


「ありがとぴよ!」


 ディアが羽をバタつかせながら喜ぶ。


「ウッドもディアと作ってくれてありがとうな。本当に美味しいよ」

「ウゴウゴ……どういたしまして!」


 ウッドは男の子だからか、あまりスキンシップを求める性質ではないと思う。

 スキンシップをされても逃げたりはしないけど。

 その辺りは俺の気質と似ている。


 ウッドの頭を撫でるのは背の高さで難しいし、こういう時は腕を撫でるようにしている。


「……ウゴ」


 ウッドが気持ち良さそうに目を細める。


「ぴよ。とおさまのからみいため、おいしーぴよよ!」


 ディアが俺の作った辛味炒めをがつがつと食べ始めている。

 おっ、そうだ……。食卓には餃子だけじゃないからな。


 さて、自分で作った辛味炒めを一口食べてみようか。


 もぐもぐ……。


 ん……ふむ、まぁ……悪くはないんだが。俺の作った辛味炒め、正直ステラに及ばないのは仕方ないか。


「おかわりーぴよ!」

「はやっ! ちゃんと噛んでるのか?」

「かんでるぴよよ!」


 早くも一皿食べ終わったディアが、おかわりを所望する。


 そしてディアにあるのは……くちばしなんだけど。

 慌てて食べないように「噛んで」とは言っている。


 ステラ達がいないのは寂しいが、一週間のことだ。

 それまで二人の子どもをよく見ていなくちゃな。


 ◇


 夜。

 村全体が静まり返っている。


 俺達は今、ベッド代わりの綿にくるまれていた。

 今日からはステラとマルコシアスがいない。こうして寝る準備をすると、それを思い知る。


「ぴよー……」


 お風呂に入ったほかほかなディアが、俺の腕の中でうにょうにょしてる。

 かわいい。


「……もう寝ていいんだぞ」

「ぴよ、ねるぴよ……」


 もぞもぞとディアが俺に体を擦り寄せてきた。

 そんなふわもこなディアの背中を、俺は撫でる。


「とおさまもさびしいぴよー?」

「……まぁな」 


 率直に認める。

 前にザンザスにステラ達が行ったときは、こうではなかった。

 これほど寂しくは感じなかった。


 けどずっと一緒にいて、ものすごくステラとマルコシアスの存在が大きくなっている。


「さびしいのはいっしょぴよ。でもちょっとのしんぼうぴよ!」


 ディアはそう言うと、羽で俺の頬を撫でる。


 もこもこ……。

 きもちいい。


 天使の羽で撫でられたら、きっとこんな感じなんだろうな。

 ……娘に慰められるとは、だけど。


 でもディアは子どもだけど成長は早いしな。

 ある意味、食事のことだとか今のことだとか、すごく成長のきっかけになっている。

 どこまでステラが考えていたかはわからないけど……。


「ウゴ、明日も俺はお留守番する。かあさんがいない間、がんばる」


 ウッドの声も聞こえてきた。

 うう……頼りになる。


 なんだか涙が出そうだ。

 俺が泣いてどうするんだ、という話だが。


 でも大丈夫だ。

 二人ともしっかりしている。

 ……そんな感じで俺達は眠りについた。


 それから朝になった。

 意外とこの村では鳥の声が聞こえる。

 まぁ、木が多いからな。


 チュンチュン。


「うーん……」


 もぞもぞと目を開けると、すでにディアは起きているようだ。

 俺の頭の横で、ぬぼーっとしている。


 うん……?


 いつもはこんな風にはならないよな。

 こうなっているのはステラだ。

 スイッチが入るまで、彼女は時間がかかる。


「どうしたんだ、ディア……?」


 俺がそう聞くと、ディアはぬぼーっとしたまま答えた。

 意外と意識ははっきりしているらしい。


「……かあさまのまねぴよ」


 いや、そこは……真似しなくても寂しくはないからね!


 領地情報


 地名:ヒールベリーの村

 特別施設:冒険者ギルド、大樹の塔(土風呂付き)、地下広場の宿、コカトリス大浴場

 領民+12(ザンザスからの移住者、別荘代わりにしようとしている商人達)

 総人口:243

 観光レベル:B(土風呂、幻想的な地下空間、エルフ料理のレストラン)

 漁業レベル:C(レインボーフィッシュ飼育、鱗の出し汁)

 牧場レベル:C(コカトリス姉妹、目の光るコカトリス)

 魔王レベル:D(悪魔マルわんちゃん、赤い超高速)

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 母親がいない間自分が子供たちをみないとな、って思ってるよき父、 でも寂しい父を慰める子供たち。 互いにささえ会う父や子供たち。 ほほえましい、素敵。 かわいいものは『かわいい』といち…
[一言] 餃子を焼いてみましょう!
[一言] 真似るというのは成長の根幹らしいので どんどんやっていただきたい ただ、コカトリスクイーンとしての 成長が促されているのかどうかは…… シードバレットはこのまま成長しなくても いい気がして…
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