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16.栽培

 そんないきなり無茶な……。

 しかしブラウンの話を聞いたテテトカは、興味深そうに頷いた。


「ふんふん、人間さん――エルトさんのところにお引っ越しですか~。それも悪くなさそうですね」

「そうですにゃん。ここと比べていいかどうかはわからないですにゃんが、木はたくさんあって水はおいしいですにゃん」

「あとは農業もしてたり?」


 テテトカが俺のすぐ近くに寄ってきて、俺の指先に鼻を近付ける。

 それから俺の周りを歩いて回り始めた。


「すんすん……人間さんは、よく野菜や果物を食べてるみたいですね……」

「ウゴウゴ! まいにち、サラダたべる!」

「ああ、かなりの頻度で食べているけど……それが?」


 ウッドと同居してのサラダ生活は継続している。

 最近ではまた成長して、レモン果実をつけてくれるようになったのだ……。


 朝だけでなく、領内の食事では野菜や果物が多い。メインはだいたいパンだしな。

 肉や魚は割合的には、それほど多くない。


 だけど、それにどういう意味があるんだろう?


「エルトさんからは、とってもいい匂いがします。植物に囲まれている生活の匂い~」

「そ、そうか……? 言われれば確かに魔法で生み出したり、よく食べてたりしているな」

「はいー、ぼくたちと同じ生き方をしています」

「ああ、なるほど……」


 実を言うと、ドリアードの生態は前世のゲームでも知られていない。

 木のなかに住んでいて、植物に関連したサブクエストによく出てくるくらいか。

 それ以上のことはわからないのだ。


 しかし、この感じだと植物に関係して生きることを重視してそうだな。

 それなら俺の生き方はぴったり合う。

 植物魔法のおかげで、常に植物とは触れあっているし。

 そう思うと気が合いそうな連中だ。


「……大変でなければ、俺の村に来るか? 住みかの木なら用意できるし」

「それがいいですにゃん。あちし達も歓迎ですにゃん」

「わかりましたー、これからお世話になります~」


 テテトカはそう言うと、大木の方に戻っていった。仲間に説明しにいくようだな。


「決まったよ、エルトさんのところにお引っ越しだー!」

「「はーい!」」


 ゆるっ!

 それでいいのか――いいんだろうな、ゆるふわな種族みたいだし。


 悲壮な感じになっても困るから、こちらの方がいいか。


「それではー、レッツお引っ越し~!!」


 ◇


 というわけで、ドリアードのみんなが俺の村に引っ越してくることになった。

 総勢三十人だが、荷物はほとんどない。


 あまりモノを持たない生活スタイルらしい。

 ただ、それぞれが木でできた鉢植えを持っているが……よほど植物が好きなんだな。


 村に戻った俺は早速、大樹の家を最大サイズで発動させた。

 これほど一度に魔力を使ったのは初めてだ。

 ごっそりと魔力を持っていかれた。


 さすがに五階建ての建物を魔法で作るのはなかなか大変だ。

 まぁ、もはや家というよりは塔と言った方がいい大きさだな。

 なかなかデカくていいじゃないか。


 うん、この村のランドマークにちょうどいい。

 全長も高さも、さっきみた大木と同じくらいにはなっている。

 出来上がった大樹の塔を前にして、俺はドリアードへ胸を張った。


「どうかな、これで――大きさ的には前とそんなに変わらないはずだ」

「はい! すごく大きいです、ありがとうございますー!」

「「ありがとうございますー!」」


 なんであれ、役に立てたなら魔力を成長させた甲斐がある。

 そこへ息を切らしながらナールがやってきた。


「エルト様……! ドリアードが来たのですにゃ!?」

「どうしたんだ、ナール……ドリアードはほら、そこにいるけれど。今は話しかけられる雰囲気じゃないな」


 ドリアードは絶賛大騒ぎで大樹の塔に突進しているところだ。

 まさに子供が遊園地に突っ込んでいく、みたいだな。


「んにゃ、あちし達と同じくらいの背丈に花を乗せて……紛れもなくドリアードですにゃ! 王国にはもういないと思っていたのにですにゃ」

「珍しい種族とは聞いたな。でも温厚で悪そうには見えないし、別にここに居てもらっても構わないだろう?」

「それどころか、素晴らしいことですにゃ……! あ、あのドリアードが住んでくれるにゃんて!」

「…………素晴らしい?」


 それはどういう意味だろう。

 今のところは植物大好きなちっこくて微笑ましい種族にしか見えないが……。


「んにゃ、ドリアードは園芸のプロですにゃん。鉢植えになんでも植えて、育てるのですにゃ」

「ふむ……楽しく生きているみたいだな」

「もちろんプロですからにゃ。育てるのが難しい希少植物もお手のものですにゃ。ドリアードはヒールベリーを育てられる、数少ない種族ですにゃ」

「………………そうなのか」

「ドリアードは世界で生産されているポーションの原料の半分を栽培してますのにゃ! なので興奮してますのにゃ!」

「あ、ああ……まさかそんな力があるなんてな」

「そうなのですにゃ!」


 というより、そんな設定あったか……?

 いや、そう言えばゲーム世界でもドリアードの店だけやたらポーション類が充実していた。

 なるほど、実はそういう設定が存在したんだな。


 しかし、それはかなりありがたいな。

 俺の力なしでもヒールベリーが増えるのなら、さらに生産量が増やせることになる。

 今、ポーションは作れば作るほど売れていく。


「人助けはしてみるものか……」

「エルト様のこれまでがあるからですにゃ! ドリアードは植物と触れあう人にしか心を開かないそうですにゃ……。あちし達の話ではたぶん、ここには来てくれないですにゃ」

「植物魔法と野菜生活のおかげだな」

「はいですにゃん!」


 そのあと、テテトカと話をしてみたが――ナールの言うとおりだった。

 住むところのお礼として、俺はドリアードの栽培した鉢植えを受けとることになった。


 容器と種さえ渡せば、どんどん栽培してくれるらしい。

 ヒールベリーみたいなのは、少し時間が必要なようだが。

 その辺りはさすがに魔法には及ばないか。

 しかし希少な植物を育てられるのはとても大きい。


 なんとも変わった種族だけれど、俺の村にはぴったりだろう。

 植物に寄り添いながら生きるのだ。


 にしても森からの採集だけでなく、栽培にも手を伸ばせるようになるなんてな。

 これでまた、俺の領地はひとつ発展することになるのだった。


 領地情報

 領民:+30(テテトカのドリアードたち)

 特別施設:大樹の塔

 総人口:103

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前世の記憶もしくはラノベ小説ゲームと比べるのはどうなんだろうね。便利なもの、旨いもの、技術を取り入れるために比べるならともかく架空のものを比べてもリアルとは違うんだから比べる必要なし。
2019/11/20 10:33 退会済み
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