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プロローグ②

「ええと……。この拷問みたいな味の料理も、たぶん、たぶんだけど、食べ続けたら慣れるかもしれないから」


「慰めてくださっているのかもしれませんけど、心がエグられますわ。別に無理して食べていただかなくても結構ですのよ。残りは離宮の皆さんに食べていただきますので」


「はぁ!? アイツ等に食わせるくらいなら、俺が食べる!」


 何故意地を張るのか疑問だが、ハイネはスープをひたすら口に運び続ける。勿論苦悶の表情を浮かべながら……だ。


(ああ……ハイネ様のお口が痛んじゃうわ……)


 ジルはハイネに無理させるよりはと、自分でも多く料理を食べる様にした。


 一時間程経ち、四阿ではジルもハイネも腹を抑え、テーブルに突っ伏す。


「アンタまでそこまで食わなくても良かっただろ……」


「料理をしている間に、お腹が空いていたんですの!」


「変な奴」


「ハイネ様に言われたくないのですわ!」


 気を遣って大量に食べたというのに、この言われよう。ジルは腹が立ってテーブルをドンと叩いた。

 ハイネはプっと吹き出し、ゆるりと身を起こす。


「はいはい……。それよりさ、今日トマト尽くしだったけど、品種改良の方はうまくいきそうなのか?」


「え?」


「トマトを2種類育ててただろ?」


「ああ、品種改良って、そんなにすぐ出来ないのですわ。10年近くかかる種類も珍しくないとか……。ジックリとやっていこうかと思ってます」


「そんなに時間がかかるんだな」


「はい。1,2年で出来る事じゃないのですわ」


 ジルがこの国に人質として送られた当初は、もっとこの立場が続くのかと思っていた。だから品種改良を初めてみたのだが、予想に反し、人質だった期間は3か月程度だった。だけど、ハイネの取り計らいでブラウベルクで暮らしていける様になり、トマトについては、腰を据えて取り組めるようになった。大学院に入ったという事もあるし、そのうち研究テーマとしてもいいかもしれない。


「じゃあ、引っ越し先は庭付きの家にするのか?」


「ええ、勿論! その条件は絶対必要なのですわ!」


 庭いじりが好きなジルにとって、庭が有るか無いかは大きな問題だ。当然購入価格は跳ね上がるだろうが、譲れない条件なのだ。


「ふぅん……。引っ越したら住所教えてくれ、もうじき停戦は解除するつもりだから、また手紙のやり取りしたい。それに、戦争が終わったら新居でまた飯でも食わせてくれ」


 またハイネが戦地に行くのだと知り、ジルは心配になる。

 以前なら、ハーターシュタイン公国の国民を危惧する気持ちが強かったのに、今はハイネの無事を祈らずにいられない。


「お手紙は書きますわ。でも……」


「でも?」


「また辛い料理を出してもいいのですか?」


「……っ! いいに決まってるだろ!!」


 ジルはハイネに半眼で睨まれる。


(ハイネ様って、同じ歳の男性なのに、何か可愛いのよね)


 その柔らかそう金髪を撫でたくなる謎の衝動を抑え、ジルは極力真面目な顔で口を開いた。


「お口に合わなくても、栄養はあると思います。ハイネ様のお時間が許すなら、また戦争が始まる前にトマトを食べにいらしてくださいませ」


「あぁ。そうする。次は出来るだけ手間がかかってない料理を頼む。生ぐらいでちょうどいいと思うから」


 皮肉なのか、本音なのか判別に迷う事を言い。ハイネは宮殿に引き上げて行った。


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