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黒鋼の天使は、虚空を征く。  作者: ドライ@厨房CQ
第1章 コバルトブルー
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序章

はじめましてドライです。自分の好きな物を混ぜ込んだ異世界×空戦×ロボット物です。どうぞご贔屓に

 空を裂いて鋼鉄の鳥が飛んでゆく。後方に鋭角で伸びた翼にはファイヤーパターンのペイントが、機首にはデフォルメされた猛禽の横顔を模した塗装が施されて、見る者にまるで火の鳥が飛んでいるような錯覚を覚えさせる。

 その操縦席に収まりながら後方を確認すれば、すぐ後ろには青い機体がぴったりと付いてきており、それに追いつこうとするジェット炎がいくつも見えた。引き離そうとジェットを轟かせて加速しようが、障害物が点在しているエリアを縫うように飛んでも離れてくれなかった。

 振りきることは諦めて、まっすぐと正面を見据える。備え付けのスピーカーから捲し立てる実況者と熱狂した歓声が聞こえてくる。


『さすがに速い! ブレイブ・フェニックス、不動の1位だッ!! だが、それにぴったりとくっついて離れないブルーインパクト!! 今回のレースはこの2機による一騎打ちだ! そして勝負は最後の直線に突入するゥ!!』

「……相変わらずうっせぇな」


 スピーカーからの音声に辟易しながらもいつもの事なので貴にせず、前方に意識を集中させる。ほぼ同じタイミングで互いにジェットの出力を上げて最後の加速に入る。

 衝撃波を巻き起こしながらほぼ並んだ状態でゴールへ向けて一直線に飛んでいる。あと1000メートルを切ったところで、正面ディスプレイに緊急事態を示す赤文字が浮かび上がった。機首を上げて急上昇しながらフレアを放出させてコース外へと出て行く。

 スピーカーからどよめきが聞こえてきたがそれは無視してブルーインパクトへ通信を入れた。


「わりい、呼び出しきたから本職に戻らねえと。今日のレースはそちらさんに譲るよ」

『まったく、相変わらずだな、あんたは』


 最後まで競い合えない寂しさとある程度の親しみを含んだ声を漏らしながら、ブルーインパクトはゴールに到達していった。それに背を向けて爆音を轟かせながら遠ざかっていく。






 送られてきた座標に向かいつつ、備え付けてあるヘッドセット型インタフェースを装着してディスプレイに浮かぶコマンドを実行させる。


《オルゴンリンク起動しました。パイロットデータの認証を開始します》


 ナビ音声がシステムの起動を知らせ、インタフェースを通じて生体情報を読み取っていく。同時に機体各所で取り込んだ情報が感覚として肉体に流れ込んできた。

 アビオニクスとして使われているリンクシステムは搭乗者と機体を擬似的に接続させて、イメージするだけで機体と同化して思うがまま自在に操ることができる、まさに人翼一体を体言するものだった。

 機体とリンクが進むにつれて、周囲を取り巻く気流を皮膚に感じ、光学センサーやレーダーが捉えた情報が映像として頭の中に浮かんでくる。こちらも手足を動かす感覚で翼を動かしエンジン出力を自在に操作できる


《認証クリア システムオールグリーン。戦闘モード起動します》

「おっと、さっそくきやがったか」


 レーダーによって近づいてくる存在を気配のように感じ取ることができ、それを敵性存在と判断するとすぐさまメインシステムが航行モードから戦闘モードへ切り替わる。

 レーダーに映っていた機影が目視でも確認できる距離まで近づいていた。数は12、どれも矢じりのような流線形をした外観からアローヘッドとも呼ばれる空で1番よく出会う“お友達”である。

 こちらの接近に気づいてか白黒の斑模様である表皮を激しく明滅させる。肉眼で見続けたら眼がかなり疲労しそうだが、センサー類と組み合わせた事により補正を加えた状態にすることで難なく視ることができる。

 牽制にこちらがミサイルを撃ち出すと回避するよう散開していく。だが、その中に混じって撃ったハイマニューバミサイルに反応できず後方の1機が爆散した。


「ここはオレ達の空だ、おとなしく出て行きやがれガレリア共」


 ガレリア。人類を地上から追い出して更に空までも侵そうとする不倶戴天の敵。正体は不明。ある日突如として空に昇る柱から現れて地上に降り注ぐと、触れた者を消滅させる光を放ちながら世界を覆い尽くして人類から地上を奪った。

 ガレリアから人類の生存圏を守るためのポテンシャルバリアが張られているが、それでも内部にガレリアが侵入すれば分解攻撃に曝されてしまうだろう。だから、侵入したガレリアを速やかに撃退する戦闘部隊が必要となる。それが『エフェクター』であり、彼の本職でもある。

 散開したアローヘッドが取り囲むように動いていて包囲網を狭めてゆく。数の上では圧倒的に劣るので速攻を心がける。まず10時方向にいる3機からだ。エンジンの出力を上げて真正面から突っ込んでいき、すれ違いざまに機銃を撃ち込んで瞬く間に撃ち落とす。

 空中を自在に飛び交い頭上や後方を取って次々に撃墜させていくが、油断は出来ない。アローヘッドはただの尖兵に過ぎず、命令を下して手足とする本体が存在するはずだ。それのタイプによっては1人では倒すことが出来ず、むざむざ退くこともありえた。

 どのみち1人では倒せないなと毒づいていると、敵性存在の接近を告げる警報が鳴り響く。本体が現れたのかとディスプレイを確認するも、それは頭上に新たなアローヘッドの編隊が現れたことを告げていた。おかわりが入った事を不敵に笑い飛ばす。


「また三角野郎かよ! そんなに踊りたきゃどこまで付き合ってやるぜ」

『そちらのストライダーさん、ダンスの相手をお探しならこちらはどう?』


 頭上にいたアローヘッドの編隊が一条の光芒に呑まれるとその半分が爆散した。同時にレーダーに新たな機影が捉えられた。光学センサーもその姿を見つけて、ガレリアよりも小さく人の形に近いそれを映し出した。

 エイジス―対ガレリアを念頭に置いて製作された空中戦用強化外骨格であり、全長3メートルほどの小型なボディにかかわらずガレリアに絶大な効果を発揮する高出力なオルゴン兵装で固められており、火力と運動性を兼ね備えるガレリア戦の花形だ。ただ単体での航行性能はそこまで高くなく、火力や運動性では劣るが航行能力に長けた航空兵器であるストライダーとの共同が基本となる。

 こちらを助けたエイジスはデータベースに登録されていないものだったので、敵味方識別装置(IFF)所属不明機(UNKNOWN)を示していたが、識別をすぐに友軍機(FRIEND)へ切り替えた。ガレリアを落としたのなら味方といってもいいし、何よりも本来はエイジスとストライダーが組んで動くものを、エイジス単独で行動している事が、常にストライダーのみで空を飛んでいるこちらと重なって見えた。勝手な憶測ながら似た者同士だと思えるのだ。


「ちょうど、お相手を探してたところさ。一緒に踊ってほしいぜエイジスさんよ」

『なら、できるだけ楽しくね!』


 こちらの動きに合わせてすぐ上を飛んでいるエイジスは、上方にいるアローヘッドに狙いをつける。協同とはいえ、することはいつも変わらずに敵を撃ち落していくことだ。エイジスが急上昇するのと同時に、機首を90度傾けて急降下する。

 上下に分かれた2

機を追ってアローヘッドも二手に分かれた。スピードを上げながら直角に下降していく機体を多数のアローヘッドが追尾していき、ニードルやミサイルが後方より飛来するが、その全てを紙一重で避けていく。

 ここで突如としてエンジンが切られて減速していく。ただ重力に従って落ちていくストライダーを見逃すことなく、アローヘッドが取り囲もうする。その瞬間、その場で超信地旋回の如く身を翻して迫りくるアローヘッドと正対する。

 エンジンを再点火させてアローヘッドの編隊の真っ只中へ突っ込んでいく。機首先端に搭載された防護スクリーンを展開させながら、機銃とミサイルの弾幕を張って突っ込んでいく。周囲を爆煙が包み込むも、そこから真っ直ぐに突き上がってゆく。

 半分以下に数を減らされても十分過ぎる数が追いかけるように上昇してきた。上を見れば、灰色のボディに赤いラインが走るエイジスが戦っている姿が見える。手にした光刃を振りかざし取り囲むように迫るガレリアを一刀のもとに斬り捨てた。その様はまるで踊るかのように流麗だ。


「まさに天使と踊ってる気分だな」

『そう? 天使よりも戦乙女の方が好みなんだけどね』


 率直な感想を述べるもつれない返答に苦笑いをもらす。だが、急上昇を続けるこちらの意図を把握してか、エイジスも急降下し始めた。そして互いに正対してあわやぶつかる寸前に機首を動かして避けていく。

 これまで後方について来ていてアローヘッドは突如として目の前に現れたエイジスに対応できず、既に構えられていた刃から放たれたエネルギー刃による斬撃に全てが真っ二つに裂かれた。

 降下したエイジスを追うアローヘッドも加速してきたストライダーと正面から衝突して木っ端微塵に吹き飛ばされる。機首から展開された防御スクリーンを利用した突撃戦法に、恐れをなして180度翻ったアローヘッドも次々に大穴を穿たれていき、引き離そうと足掻いていた最後の1機も翼で引き裂かれて墜落していった。


『……自分も常識からは離れた人間だと自覚してるけど、それでもあなたはかなりクレイジーね』

「見ての通り、デストロイヤーの異名は伊達じゃないぜ」

『その戦い方なら一体どれほどの機体を破壊していることやら』


 飛んでるガレリアを全て落として状況が落ち着いたこともあってか、エイジスから呆れたような言葉を投げかけられる。だが反論もそこそこに口を閉じてレーダーに意識を向ける。アローヘッドを繰り出してきたガレリアの本体がレーダーに引っかかったのだ。

 ソレは雲の隙間からゆっくりと姿を見せる。ブーメランのように中央から斜めに伸びたボディは全翼機を思わせるフォルムで、アローヘッドとは比べられぬほどに巨大だ。

 子機をばら撒くような戦い方とその外見やこれまでの経験から、四つある分類のうち眼前に移るガレリアは『デトネイター』クラスと判断する。多数のアローヘッドを内部に搭載する空母の役割をもったクラスであり、直接戦闘能力は低いがその巨体に似つかない運動性とハリネズミのような近接防御力を誇る。


『どうやらデトネイタークラスね。エイジスやストライダー単体だと中々きつい相手よ?』

「問題ない。コアの位置さえわかれば、さっきのバリアアタックで倒せるはずさ」

『……ストライダー単機でガレリアを殲滅する奴がいるって噂は聞いていたけど、実際ここまでの荒唐無稽とはね』

「いやいや、あれだってかなりきついんだよ? 子機や機銃かわしながら懐に飛び込むのって」


 とんでもないことをさらりと口にして、エイジスからは呆れ半分純粋な賞賛半分の言葉を向けられた。実際にデトネイターを破ったことは確かだが、その際にかかる負荷は機体にも肉体にも大きくのしかかる。特に防空能力が高いデトネイター相手にはあまりしたくないものだ。

 なら本来の対ガレリア戦術でいくことが常套だろう。いつもと違って僚機であるエイジスもいるので問題なくいけるし、当のエイジスからもそちらを打診される。だが、それにはひとつ問題があった。


「先に謝っておく、オレは“メタトロン”で動くのがめちゃくちゃ苦手なんだ」

『あら、そうなの。でも無謀に突っ込むよりはマシでしょ?』

「ああ、そうだな。やってやるさ!」


 デトネイターより新たなアローヘッドが射出された。迷ってる暇はないのから腹をくくって承諾する。同時にメインシステムが戦闘モードからユナイトモードへ切り替わる。

 並行した飛ぶ2機は、ストライダーがエイジスを覆うように包みこんで一体化する。ストライダーの機首が正中線から割けると脚部へ変形し、コックピットが腰部に移動する。主翼とエンジンが背面を、内部に収納されていた頭部や腕部が展開してがらんどうとなった胴体部にエイジスが収納された。そして巨大な人型兵器が姿を見せる。

 飛行外骨格であるエイジスをコアとしてストライダーを着込むような形で合体した、この姿こそが対ガレリアの中核となるべく人類が生み出した最強の剣、人型航空兵器『メタトロン』である。


《メインシステム・ユナイトモードへ変更。メタトロン起動します》


 メインシステムがメタトロンの機動を知らせて、周囲に浮かぶホロモニターが機体制御のものへ切り替わった。コアユニットであるエイジスの動きをトレースする形でパワードスーツとなったストライダーが動くので、メインの操縦はエイジス側で担う。

 一方でストライダー側はサイトロンシステムにより直接同期して動力や機体の制御を行う。エイジスとストライダーのエンジンコアが同調することでメタトロンの出力が決まるが、この調整はかなり繊細な作業である。そのためストライダー側で適正な同調率を維持する必要があった。


「こっちは同調に集中する。操縦は任せた!」

『わかった。こっちもメタトロンは久々だからサポートお願いね』


 以前から同調作業が苦手であり、訓練でも同乗したエイジスを悉く振り回してきたことからじゃじゃ馬だのスタンピ-ドだのと言われる始末だ。今回は実戦でもあるので、安定した出力を出せるよう同調するのに全ての意識を向ける

 そしてメタトロンが動き出した。

 脚部と背面のスラスターへ動力を回し、ジェットを吐き出しながら空を滑る。目標はデトネイターでそれを守るようにメタトロンへ群がるアローヘッドの編隊を、腕部に搭載されたレイブレードの光刃で一薙ぎで切り払った。

 1動作で巻き起こるエネルギーがモニターに映し出されて、そのあまりもの大きさに戦慄する。これまでの訓練でメタトロンとして他のエイジスと同調したことはあったが、ここまで滅茶苦茶な数値を表すことはなかった。

 こちらがメタトロンでの同調を苦手で1人で飛ぶのも好きだったので単機で動いていたのと同じように、あちらも極めて高いエネルギーゲインを憚って1人だったのだろうか。

 動力の安定同期を示していたホロモニターを手で払ってかき消すとエイジスへ通信を入れる。


「とんでもねえ出力だな。こっちも制御とか難しいもんは忘れてやらせてもらう! だから、そっちも加減なしでいきなよ!」

『そんなこと言ったストライダーなんてあなたが初めてよ。後悔しても知らないわよ?』

「上等! じゃじゃ馬同士仲良く二人三脚といこうじゃないの!!」


 機体制御用のモニターを全て消灯させると、シートに深くもたれかかる。針の穴を通すような微細な調整はやめて、自身の身体を使ってコントロールするのだ。

 微細なコントロールが失われてそれまで平穏を保っていたグラフが大波のように上下に大きく振れ動く。それに合わせてメタトロンの挙動が変わるが、出力が上げ下げに応じて機体各所へ回すエネルギー配分を自身の血流として把握する感覚で大雑把に制御していく


『捉えた! 目標デトネイター!』

「機体出力良好、雑魚散らしはこっちに任せな!」


 デトネイターを有効射程内に捉えた。だが今の兵装はレーザーブレード2本と備え付けの機銃とミサイルのみで攻撃するにはもっと近づく必要があり、それを妨害するようにアローヘッドが襲い掛かる。

 サイトロンで機体制御しながら操縦桿を操作して機銃とミサイルを放ち、アローヘッドを蹴散らしてデトネイターへの血路を開く。

 向かってくるメタトロンに対してデトネイターからも無数の針が降り注ぎ、表面から伸びる触手が硬質化した先端を振り回している。針の雨霰を防御スクリーンで受け止めて、振り回された触手を掻い潜って肉薄する。

 迎撃しきれないと判断したデトネイターは加速しはじた。メタトロンを超える巨体であるのでもし高速で激突したのなら、こちらはひとたまりもないだろう。


「野郎、ぶつける気か!?」

『スピードはこのまま維持、エネルギーを右手に集中させて!』

「全くとんだ無茶苦茶だ! でもそういうのは大好きだぜえ!!」


 背部のメインブースター以外のエネルギーをカットすると、その全てを右腕部へ集中させる。既に針の雨はやんでいるから防御スクリーンは解除し、振り回された触手もエイジスの回避技術に丸投げした。

 期待以上の操作で全てを掻い潜りながら、目の前まで迫ったデトネイターへ全エネルギーを込めた光刃を抜き放った。

 メタトロンの全長を遥かに超える光芒の奔流がデトネイターを飲み込んだ。

 やがて光が消えて視界が戻れば、そこにガレリアの影も形もなく、ぽっかりと開いた雲間から青空が顔を覗かせていた。しかし、感慨に更ける間もなく、けたたましい警報がコックピット内に響く。流石にあれほどのエネルギーを放った反動で各所からエラー情報が送られてくる。


『ふーっ、ここまで思いっきりやったのは初めてね。案外私達の相性はいいみたいね?』

「同感、でも次はもう少し加減してほしいな。機能の殆どがオーバーヒートしちまってるよ」

『なら冷却が必要ね。ちょうどあそこに降りられそうよ』


 指し示した場所はちょうどよく開けた平地が広がっており、着陸するにはもってこいだ。先ほどまでの機敏な動きとは裏腹な緩慢でゆっくりとした動きで地表を目指す。

 着陸地点を見定めると、メタトロンからエイジスとストライダーに分離してゆっくりと降下していく。背の高くない下草に覆われた野原にストライダーは軟着陸して、そのすぐそばにエイジスが降りたった。

 耳障りな警報を鎮めるためにすぐさま機体の強制冷却を開始させる。無駄な発熱を控えるべくサイトロンシステムをオフにしてメインシステムも待機モードに移行すると、ハッチを開いて外に出た。

 日は傾き始めているが、まだわずかにオレンジ色の陽光が青空に混じる程度だ。野原を吹き抜ける生身で感じていると、傍らに鎮座していたエイジスから搭乗者が降りたった。


「こうして直に話すのは初めてね。こういう時ははじめましてかしら? 私はアズライトよ」

「オレはイーサン、イーサン・バートレットだ。こちらこそよろしく」


 アズライトと名乗ったエイジス搭乗者は被っていたヘルメットを外して素顔を晒す。長く伸びた豊かな銀髪をツーサイドアップで纏めており、年頃はイーサンと同世代ほどに見える。灰色と赤色を基調としたジャンプスーツタイプであるインナーは身体にしっかりとフィットしているのでスタイルの良い彼女の肢体をより扇情的に見せていた。

 しかし、イーサンはあまり気にせずその隣までやってくるとエイジスの方を注視する。


「やっぱ、見たことないモデルだな。そっちはオーバーヒートかなんかの不調は出てないのか? 一応、応急修理ぐらいは出来るからな」

「そのへんは心配ないわ。この子は私専用に調整されてるから結構無理が効くのよ」

「専用機か、いいなー、オレも欲しいぜー。あ、でもオシャカにしきた機体が多すぎるから無理かぁ……」


 まるで新しいおもちゃを見つけた子どものように目を輝かせたイーサンに少し驚きつつアズライトはクスリと笑みを漏らした。それにはどれだけのストライダーを破壊したのか気になったようだ。

 因みにイーサンがこれまで飛行不能まで損壊させた機体数はこれまで11機である。デストロイヤーなんて大仰な異名もその暴れっぷりよりも、訓練や実戦を含めてストライダーをぶっ壊しまくっていたことに由来していた。

 

「フフッ、あなたって中々面白い人ね。相性もいいみたいだし、出来ればこれからも協同できれば良いわね」

「この同じ空で飛んでるから、いつでも来るだろうな。その時はよろしく頼むぜ」


 2人は軽く握手を交わすとアズライトは自身のエイジスに乗り込んで浮かび上がった。離れる際に信号弾を飛ばして別れの挨拶として空の向こうへ飛んでいった。イーサンは彼方に伸びていく閃光を見送りながら、冷却中のストライダーの上に腰を下ろす。

 空中大陸の末端。人類最後の地である空中大陸より眼下に広がる雲海と空を機体が冷え切るまで眺めていた。

ここまで読んで頂きありがとうございます。次回も早く投稿できるよう頑張ります。感想や誤字報告などお待ちしております

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