正体を明かす時
塔に忍び込んだ彼らの前に、妨害する敵が現れる。
彼らは両国の軍服を身に纏っていた。おそらく大半は盗品なのだろう。
「やはり我々は騙されていたのか。」
女騎士は悔しい思いをしながらも、味方の騎士と二人で共に敵を蹴散らしていく。
そしてとうとう自国の王女が囚われている牢獄へとたどり着いた。
そこに、自分の体があったことに女騎士は驚いた。
「待っていたぞ。姫君よ。」
そこへ現れたのは、両国の近くにあった小さな国の国王だった。
「まさか、あなた様が私たちの国を襲ったのですか?」
「もうわかっているのですよ。あなた方が両国を騙していたことは。」
「やはり知っておられましたか。そうでしょうね。今のあなた様はこの女騎士なのでしょうから。」
ここまで攻め入れられたというのに、国王は余裕の表情を見せる。
「それを知っているということは、やはりあなたの狙いは伝説の力。」
「その通り。2つの国となった王女が持つという大いなる力を手に入れて、全ての国を支配するのが我が野望。しかしまさか入れ替わりとは。」
せっかくだから真実を知る前に国のために王を暗殺してくれれば良かったのにと、笑う国王に二人は怒りを隠せない。
「考えたこともあった。だけど、そんな非道は私は許せない!」
「ならば代わりに私の国がやるまでだ。思っていたほど派手なものではなかったが、これほどまでに便利な力はそうそうない。」
国王は剣をつきつけたまま、女騎士の体をつかみあげる。
意識が微かにあったらしい彼女は、苦しそうな声をあげた。
「姫!」
「さぁ姫君よ、元の体に戻るが良い。それで真の王女が揃うのだ。そうすればお前は殺しはしない。」
戸惑いながらも、互いに承諾の上で再び体は入れ替わる。
その瞬間、国王は姫と王女を捕まえて、手にしていた宝石に願った。
「さぁ魔石よ!両国の力を我が物に!」
しかし、なにも起こらない。
どういうことだと困惑する国王の隙を見逃すはずもなく、騎士は国王を捕らえ、女騎士は魔石を砕いた。
「なぜだ。どうしてうまくいかない。最初はこの魔石さえ手に入れば良いと勘違いしていた。ようやく魔石と王女が揃ったというのに何を私は間違えていた。」
力を操作するものだったのであろう魔石を砕かれ、野望を成し遂げられなかったことを悔やんでも悔やみきれない国王は地に伏せながら嘆いていた。
すべて終わった今、女騎士は王女と姫を抱き留めながら言った。答は簡単だと。
「王女が一人足りていなかっただけのこと。そう、この私がな。」
女騎士の彼女は、両親が魔石を奪われたときから心配して一般人として育てさせた、王女の実姉であった。
「おねぇ様。」
「王女様。いや、いとしい我が妹よ。無事でよかった。」
この国王の悪行は明らかとなり、両国は和平を結んで戦争をすることはなくなった。
そして再び、女騎士に戻った王女はあの騎士と剣を交える。
今度は訓練として。
「あなた様に勝てたなら、願いを聞いてくれますか?」
騎士は問う。
「私の願いも聞いてくれるのならばな!」
「あなた様の、願いとは?」
彼女は笑顔でこう言った。
「王女の代わりにこの国を守りとおすこと。そのただ1つのみ!」