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敵対するもの

翌朝、王の暗殺をひとまず諦めた彼女は試案する。

今できること。成すべきこと。それは。


「王女を救出しなければ。」


あのまま攫われてしまったのならば、この国のどこかに捕らわれているはず。

そこで、情報を集めるためにそれとなく聞き込みをしようと城中を歩いていた時だった。

従者たちが慌てて駆け寄ってきた。


「姫様!また敵が襲ってきました。早くお隠れください。」


襲われた?この国が?また?

詳しい事情が知りたかったが彼女は発言する間もなく、言われるがまま従者たちに引っ張られていく。

彼女は今更になって思い知った。

今の自分は抵抗することもできないぐらい弱い存在であり、かつてのように戦うことを許されない体だということを。


ここならば安心だと言われた場所で、彼女は従者たちのから聞いた話に耳を疑った。

「こちらに戦意は無いのに、もう何度も襲われている」「罪のない民も狙われる」「向こうの戦力があまりに強く、いつ敗れるかわからない」

なにより信じがたかったのは、

この国を幾度も襲っている国の名前が、自分の国だったこと。


「どういうこと?この国が攻めてきているのではないの?」


襲撃後、彼女は一人で探索した。

目にしたのは傷ついた民、疲れ果てた兵士、救護に忙しい人々、脅える従者。

おかしい。おかしい。おかしい。

この弱り切った国が、これまでさんざん自国を襲ってきた連中だというのか?

それが真実だったはずなのに、悪い国のはずなのに。

日々が過ぎていくほど、目のあたりにする人々の優しさや誠意を見せつけられて、彼女には迷いが生まれていた。

この国は、本当に敵なのか。



無理を言って、町の修復作業を手伝っていた時だった。

再び何者かが襲撃してきた。

その兵士たちの鎧は、間違いなく自国のものであった。

そばにいた従者が慌てて連れ帰ろうとする。

しかし、目の前で繰り広げられる横暴に苦戦する兵士を、人々の悲鳴を、今度は無視できなかった。

従者の手を振り払い、用意していた予備の鎧を着こんで民に襲い掛かる兵士の剣を打ち払った。


敵味方なぞ関係ない。罪なき人を救うために戦う。それが女剣士としての誇りであり生き方だった。

覚悟を決めてから特訓し、当時ほどでなくとも幼き体で鍛え上げた剣術で敵に挑み、倒し、叫んだ。


「正義のための戦いに恐れるなかれ!」


兵士たちは幼き姫が果敢に戦う姿に奮い立ち、彼女の指揮の元に敵を圧倒していくことになる。


これを機に、戦いの形勢ははあっという間に逆転し、敵も去り、

初めての完全勝利に浮かれる者たちは、姫の素晴らしい戦いぶりに称賛を浴びせるばかりで


そんな彼女に疑問を抱いた騎士が一人いたことに、他の誰もが気づいてはいなかった。


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