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7話* 「私もあなたになら聞かれてもいいと思いますよ」

 ラウリスさんと二人で、湖を何も考えずに見つめる、私は自然のものが好きだ。なんというか水などの音や色合いを見つめているといろいろな事を忘れてぼんやりと出来るのだ。

 ラウリスさんはどんな事を思っているのかは分からないのだが、二人でぼんやりと湖を数十分眺めているということは同じような事を考えていると思ってもいいだろう。


「あの・・・ラウリスさんは何でこんな隠れスポットみたいなところに一人で居るんですか?」


 隣に居るラウリスさんに顔を向けて質問をするとラウリスさんが小さく笑い。自分の瞳と同じ色の湖に目を向ける。その瞳が少しだけ寂しそうだ。


「僕の大切だった人が、この場所を愛していたからだよ」


 大切だった人。

それはきっと私にとってのおばあちゃんみたいな人。もう会いたくてもけして会う事の出来ない人。もしかしたら、もう会う事が出来ない恋人なのかもしれない。


「あの・・すみません。初対面なのに不躾な質問してしまって」

「いいさ 君になら聞かれてもいいと思えるから」


 湖を見つめたままそう呟く、その思いは私と一緒だった。なんとなく私たちは似ている。そう本能が告げるのだ。


「私もあなたになら聞かれてもいいと思いますよ」


 湖を見つめる彼にそう告げるとラウリスは美しい青い瞳をこちらに向けた。


「ふふふ もしかしたら僕たちには共通点があるのかもしれないね」

「きっとあるんですよ 私たちには共通点が、だから・・・そんな目をしないでくださいよ。ラウリスさんは美人なんですから、笑った方がきっと魅力的です。」


 寂しそうな瞳に精一杯の笑顔を向ける。


「そうだね 君の笑顔もとてもステキだよ」


 その言葉と共に、満面の笑みとまでは行かないがとても優しくて綺麗な表情を見せてくれた。


「あの一緒に食事でもどうですか?」

「えっ?」


 ラウリスの驚いた表情に、こちらがアタフタとしてしまう。


「イヤ あの・・別に、そんなナンパとかじゃないですからね!!ただその、お腹がすいたんで一緒にどうかと思っただけですよ!!なんというか一人だと寂しいんで」

「そんなに慌てられると期待してしまうよ」

「本当に違いますからね!!」


 思いっきり叫ぶと、ラウリスさんがこちらに向かって突然手を差し出してきたのだ。その差し出された手を茫然と見つめていると、ラウリスさんは私と目線を合わせニッコリと笑う。今度の笑顔は先ほどよりも何倍も綺麗な笑顔だ。


「だったら僕がお誘いするよ 一緒にお食事でもどうですか?」

「はっ・・・はい?」


 突然の立場の逆転と紳士のように差し出された手に、先ほどと違う意味でアタフタとしてしまう。


「あの・・その・・・えぇと・・・」


 慌てふためきながら周りをキョロキョロと見回していると、ラウリスさんが私の手を突然取りキスを落としてくる。つい先ほどと、同じ行動なのに今度は、なぜか少しだけ嬉しい気持ちになる。

もしかしたら、ラウリスさんの違う面を見る事が出来たからかもしれない。キスされた手を見つめていると慣れた手つきでエスコートをしてくれた。その慣れ具合には少しだけ息を呑んだ。


「ちゃんと僕についてきてくださいね」






 ラウリスさんにエスコートされながらたどり着いたのは、なんというかものすごい高級そうなお店だ。なんかものすごく入りづらいんですが!!

 彼は慣れた感じでそのお店に向かう。しかも、容姿があれの為めちゃくちゃ絵になる。しかし、私ときたらものすご~く似合わない感じだ。入ったら間違いなく注目の的だ。なんてったって、めちゃくちゃ美形で美しいラウリスさんと十人並みの上、背が小さい貧乏くさい女の子が一緒に居るのわけだから、とても目立ちそうだ。その光景を想像して思いっきり首を振り、吹き飛ばす。


「・・ラウリスさん あの・・・違うところにしません? あそことか」


 そのお店から離れるためバック歩行をしながら、逆方向にあるオープンカフェを指差すとラウリスさんが小さく頷く。なんというか、その姿さえ絵になるとは恐ろしい男だなこの人・・・。


「かまわないよ 君がそこがいいならね」


 その言葉に、高速で頷く。


「あそこがいいです!!というかあそこでお願いします」


 熱弁すると、ラウリスさんが楽しそうに頷いてくれた。


 オープンカフェの机に腰を下ろし、料理の注文をした。ちなみに、私はチーズケーキとミルクティだ。ラウリスさんもストレートティを頼んだ。数分後に机の上にそろった、ケーキにフォークをさし口に運ぶとチーズケーキ独特の味が広がる。


「うぅん おいしい」


 甘いものは大好きなため、ホクホクしながら食べている途中でラウリスさんの方を見るとバッチリ目が合ってしまった。しかも目が合った瞬間、蕩けるような微笑に速攻で目線を下げる。


今更だけれど、これってデートみたいな感じだよね。そう思うと妙な意識をしてしまう。


「ゴホン えぇとラウリスさんはどうしてリストスに居るんですか?観光って訳じゃないですよね」


妙な意識を振り払い、問いかけるとラウリスさんが寂しそうに笑った。


「あぁ・・・僕は人探しだよ 大切なものをほって置いて、ただ一人を探してるんだ 世界中を回りながら、ここが最後の国だよ だから絶対に会えるさ」


 きっとこの探しているという人こそが、ラウリスさんの大切な人だろう。恋人?それとも家族か?


「あの・・・ラウリスさん 良かったら一緒に探しましょうか?」


 私が切り出すとラウリスさんが今でも目を大きくする。


「えっ?」

「実は私、いいところのお嬢様なんです。だからきっとルキリスさんの大切な人を探すのに少しは役にたてるかもしれないですから」


 そう私は不可抗力とはいえ、この国の王様の養子候補なのだ。というかもかなり決定ぽいが、まぁこちらはその決定を素直に受け入れるつもりはない。けれど、今のこの状況でもあそこがお城なら、どこに誰が住んでいるかは分かるかもしれない。だからこそ、切り出した提案だ。


「君がいいところのお嬢様?」


 すごく意外そうな顔だ。そりゃあさ、見た目は完全なる一般ピープルだよ・・というか事実現在では完全なる一般ピープルだ。


「やっぱり漂う庶民オーラは隠せないか・・・けど本当なんですよ!!」


 熱く語ると、ラウリスが小さく微笑んだ。


「分かった 君に協力してもらうよ」


 その言葉に、大きく首を縦に振る。


「じゃあ こちらとしても、精一杯協力させてもらいますね!!それでその探している人の名前って?」


 そう問いかけると、ラウリスは少し悩んだようだが、すぐに決心をしたようですぐに応えてくれた。


「ルキアス・スティーナ・ベルナフィス」

「はい?」


 なんというか恐ろしいほど長い名前だ・・・。私の頭では一回じゃあ絶対に聞き取れない。


「君は?この名前を聞いたことはないかい?」


 その問いかけに、首を大きく振る。


「君は変わってるね 普通は知っている名前のはずなんだけど・・」


 本気で不思議そうに見られ気まずくなってくる。


「すみません 一度も外に出た事がなくて・・・」


 嘘です。実はこの世界のことを知らないだけです。と言いたいところなのだが話の流れ的に言えないしね・・・


「そうなんだ 君は大切に育てられた、深窓のお嬢様なんだね」


 嫌味に聞こえるはずの言葉なのにこの人が言うと嫌味に聞こえないのが本当に不思議なものだ。


「すみません・・・けどちゃんと役に立って見せますから えぇとそれでお名前をもう一度お願いします。」


 ガッツポーズを決めてみるとなんだかものすごく自分が痛々しく感じた。しかもお兄さんは、この痛々しい姿をものすごい暖かい目で見てくる。

 痛いよ!!自分!!


「じゃあもう一回、ルキアス・スティーナ・ベルナフィスだよ」


 やっぱり文字数多!!最初の二つだけ覚えよう。えぇとルキアス・・・あぁこれはルキリスと似てるから覚えれそう、スティーナ・・・ここまでなら何とかいけそう


「分かりました。ぜひ協力させてくださいね」


 再び小さくガッツポーズをとるとお兄さんがコクコクと頷いてくれた。

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