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3話* 「ここに私を閉じ込めて何がしたいのですか?」

 重い瞼を押し開けると、目の前にはとても美しい天井と薄い桃色の天蓋が聳え立っている。体を起こしながら周りに目を向ける、桃色を基調とした大きな部屋で真っ白な机の上には黒い色のユリが飾られていた。そして一つだけある大きな窓が光をこの部屋に送り込んでおり、まるでお姫様の部屋みたいだ。

 外を見ようと窓を開け放ち顔をのぞかせるとそこに広がるのは雄大な土地。大きな建物を中心に3つの美しい建物が建ち、外側にはこの建物を守るように森が広がっている。


「綺麗」


 現代ではけして見る事のできない景色に自然と言葉がこぼれる。


「そうか」


 後ろから聞こえた第三者の声に振り返ると、そこにはルキリスの姿があった。その姿に、私の中に先ほどまでとはまったく違う感情が生まれる。

 この感情には見覚えがある、これは悲しみや憎悪といったとても暗い感情だ。


「ここに私を閉じ込めて何がしたいのですか?」


 私は、きちんと自分の感情をぶつけた、養子になんかなりたくないと。その言葉を変えるつもりはまったく無い。どんなに美しかろうと、高級だろうと籠の鳥にはなりたくない。どうせ籠の鳥になるなら、平凡で普通の籠がいい。


「お前はなぜそこまで拒否する?国王の娘という地位を欲しがるものなど腐るほどいるというのに」

「そんな地位なんていらないです。こんな知らない所にいきなり連れてこられて、しかも国王の養子になれなんて、虫がいいですよ」


 ルキリスから視線をはずす。


「ならば知るといい、それならば知らない国ではなくなる、愛せばいいこのリストスという国をそして結論を出せ。今はまだ早い、お前は何も知らない国の事も国王の事も」


 言われた言葉に、私は再びルキリスと目を合わせる。すべてが的を居ている言葉。知らないなら知ればいい、愛せなければ、愛していけばいい。そうすれば自分の中では何かが変わることもある。出来ないという人もいるだろうけれど、私はある人のお陰で出来たのだ。憎んでいたものを愛することも、絶望しても未来は必ずあると。偽善といわれれば、否定する事は出来ない、偽善でもいつかは真実になる。それを教えてくれたのも、あの人だった。


「分かりました。私はこの国を知っていきます、そして結論を出させてください。」


 私の言葉にルキリスの表情を少しだけ柔らかくなる。そして小さく微笑む。


「お前はいい姫になるだろうな」






 私はこの国の事を知っていこうと決めたあの時から、ルキリスはこの国についていろいろ教えてくれる、それはもう熱心に。


「ここリヴィール連合国は5つの国で構成されている。

 火山の国ビルアスは、とても熱く火山がいくつもある国。

 雪の国トリスは、とても寒くいつでも雪景色の国。

 水の国アビリスは、涼しくいつでも水の音が聞こえ、空にも魚が泳ぐ国。

 太陽の国サンベリウスは、一日中太陽が照っている国。

 星の国ナーガスは、いつも夜であり、星がどこよりも美しい国。

 そして、我らが住む国は緑と花の国リストス。とても過ごしやすい気候で、国の半分を自然が占めている。」


 早口で言われる説明を、必死でメモしながら耳を傾ける。しかし、勉強づくしは楽しいものではない、ぶっちゃけつまらない。私は元からあまり勉強は好きなたちではなく、どちらかというと嫌いだ。


 早く終わらないかな・・・


 そんなことを思いながらぼんやりと外を眺めると、少しだけこの部屋の温度が低くなったような気がする。おそるおそる正面のルキリスに目を向けるととても冷たい無表情でこちらを見つめている。


「ル、ルキリス?」


 ビクビクしながら声をかけるとルキリスがすばらしい笑顔を見せてくれた、はっきり言おうその表情はとても不気味だ。その笑顔のままパチンと手を叩くと私の目の前の机には何十冊という本の塔が立っていた。


「これって・・・」


 おそるおそる聞くと、ルキリスがにっこりと再び微笑む。


「明日までに、これをすべて読め テストをする」

「えぇと・・・テストの点が最悪だったら勉強時間が倍になる とかないですよね?」

「当然ある」


 断言された言葉に、ビシリと全身が固まる。ルキリスのことだ、有言実行に違いない。


「頑張らせていただきます」


 今日は寝れそうにないな、こっそりとため息を吐きながら本を開く。

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