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20話* 「もう部屋に帰りたい」

リストス城の大広間はとても豪華だ。

ドレスを身に纏った、高貴そうな人たちがたくさん足を踏み入れていた、大広間には楽団らしき人たちもおり生演奏をしている。

その中で美しく着飾った令嬢さんたちをダンスに誘う貴公子ぽい人が居るわけで、それにしても美系しかいないこの広間に私は入口をくぐるのを本気で躊躇していた。

本当にこの国には美系しか居ないらしい、ハッキリ言って恐ろし過ぎる。


「もう部屋に帰りたい」


私がそうボソリと呟くと後ろに居たリリア姉様が私の腕をガシリと掴み美しい頬笑みを浮かべた、彼女も今日は美しいドレスで着飾っておりピッチリとしたラインの紫色のドレスはリリア姉様の犯罪級に色っぽい体のラインを美しく見せており、とてもけしからん感じだ。唇には深紅の口紅を差しており更に妖艶さが際立つ。女の私でさえドキリとさせるほどである。


「アイちゃん なに逃げようとしているの?主役のあなたが行かないと舞踏会が始まらないわ さぁ行くわよ」

「けどリリア姉様 こんな高貴な人たちがたくさんの中に元一般ピープルの私が交われる気がしないんだけど」


私が負けじと反対側に腕を引っ張るが、彼女も負けてはいない。


「リリア アイ 早く 大広間に入って下さい」

「そうですよ」


二人でギリギリと攻防をしていると後ろから聞き覚えのある声が二つ聞こえたかと思ったら、突然私たちの背中を押す。


「キャッ!」

「わっ!?」


リリア姉様と私でツンのめりながら大広間の飛び込むことになる。


「ちょっとアレス カイト君 突然押すのは止めてちょうだい」


リリア姉様が冷たい目で振り返り、私は驚きつつ後ろを振り返るとそこには王子様ぽい服を着るアレス兄様とカイト君が居る。いつも通りアレス兄様が白でカイト君は黒だ、どちらもとても似合っている。そんな感想を思っている間もなく、大広間でもう舞踏会を楽しんでいた皆さんはザワザワとこちらを見ていた。

とても注目されているようだ・・・・死にたい・・・帰りたい

私の心の呟きをよそに三人は慣れた様子で優雅に微笑んだ。


「今日は我が妹の式典にお越し下さいまして誠にありがとうございます」


アレス兄様が王子スマイルを浮かべ後ろの二人は優雅頭を下げる、その姿はとても様になっていた私も慌ててリリア姉様の真似をして頭を下げた。


騒がしく入ってきた私たちだが、大広間の中央に居たディアス父様とエリス母様は面白いものを見たと言わんばかりに微笑む。それでいいのかリストス国は!?と私が突っ込みを入れたくなったが、隣のルキリスは呆れたと言わんばかりに眉間にシワを寄せていた。


うん 後が怖いね!私の心の叫びを余所にディアス様が高らかに舞踏会の開催を宣言する。


「我が息子たちが到着したようだな ではこれより舞踏会を始める」


再び楽団に人たちが演奏を始めた。

大広間の中心まできたのはいいのだが私はどうしたら良いのか分からず固まっていた、ルキリスの話では主役は微笑んでいればいいと言っていたがそれで本当に大丈夫なのかと心配になってくる。


「はぁ~」


大きなため息を零していると聞きなれた声が耳に届く。


「アイ 久しぶりだね」


その声の方に振り返ると美しい水色を髪を一つに束ねた、見慣れた美しい青年が居た。

しかし今日の服装は以前会った時に着ていた黒のマントではなく、水色の軍服の様な服を着ている。その服の方が彼にはシックリくるのではと思うのだが、私は指をさして固まっていた。


「らっラウリスさん!?何してるんですかこんなところで!?」


私が驚きのあまり大声で叫ぶと皆さんに注目された。

ルキリスは眉間にさらにシワを寄せているご様子だ。


「そんなに驚かれるとは思っていなかったよ」


ラウリスさんは可笑しそうに笑っているが私としては訳が分からない、確かこの舞踏会には王族関係の人しか来れないとか何とか言っていた様な気がしたのだが気のせいか!?

呆然としているが先ほどの私の叫びに驚いたリリア姉様がこちらに向かってきたが傍らにいるラウリスの姿を見て大きな瞳を見開いたかと思うとすぐに冷たい目になる。


「ラヴィア王子 私の可愛い妹に何か御用かしら」

「これは白姫リリア様 今日もお美しいですね」


ラウリスさんの一言にリリア姉様は呆れたようにため息を零した。


「相変わらず 反吐が出るほど甘い事を言われますわね けれど私の可愛い妹はあなたの毒牙にはかかりませんわよ あなたも分かっていると思いますが、緑と花の国リストスは自由恋愛主義、本人が良しとしない相手とは顔合わせもダンスもしませんわ」


何だろうこの一触即発の雰囲気。

どうやらルキリスさんとリリア姉様の仲は最悪らしい


「それは知っているよ だから今からアイに聞こうとしていたんだよ」

「まぁアイなんて呼び捨て図々しいですわ ちゃんと黒姫様と呼んで下さらないかしら」


なんか空気が冷たいです。これはもしかして一般人のルキリスさんが舞踏会に紛れこんでいる事に怒っているのかなリリア姉様、それならばちゃんとルキリスさんに助け舟を出さなければ


「リリア姉様 ルキリスさんが舞踏会に紛れこんでいるのは何か深い訳があると思うのだからその怒らないであげてほしいな」


私がそうリリア姉様に伝えると二人は唖然としたのちに、ルキリスさんはクスクスとまた笑いだし、リリア姉様は頭を抱え出した。

私何か変な事言った?


「アイちゃん あのね この人の事なんでラウリスって呼ぶかは分からないけど彼は水の国アビリスの第2王子ラヴィア王子よ」

「はい!?えっラウリスが王子!?」


確かにあの乗馬テクといい、レディファーストを優先する辺りが王子らしさがあるかもしれない。


私が固まっているとラウリスはもう一度クスリと笑ったかと思うと跪き手に口づけを落とす。

その姿に私は“出た!?この挨拶”と非常に複雑な気持ちになっていた。


「名乗り遅れて ごめんね アイ 僕は水の国アビリスの第2王子ラヴィア・スティーナ・ベルナフィス 以後お見知りおきを」


その頬笑みに私は固まった。

えぇと水の国アビリスの王子という事はルキリスの弟さんであるということになる、そうなるとルキリスの事を探していた理由さらには兄様と呼ぶ理由も繋がってくるのだ。


「そっそうだったんですね」


納得と思いながら頷いていると、彼が今一度私の目をしっかりと見つめてくる。


「アイ 僕とダンスを踊ってくれませんか」

「はっはい?」


いつもと違う真剣な表情に固まりながら聞き返してしまった。


「だから僕と踊ってほしいんだ アイに」

「どうやら アイちゃんは嫌みたいですわね ラヴィア王子 今日は諦めて頂いた方が良いかと」


固まっている私をリリア姉様が笑顔でズルズルと引きずり、あまり人が居ないバルコニーに連れて行かれた。


「ここまでくればいいわね アイちゃん 少し話を聞いてくれるかしら」


冷たい外の空気とリリア姉様の真剣な声に私はやっと意識が覚醒したきた。


「話っていうのは?」


私は聞き返すとリリア姉様がコクリと頷く。


「あなたに言っておかなければいけない事があるわ このリストスの姫には実はとってもたくさんの縁談がくるのよ」

「はい?」


突然の縁談の話に私は変な声を出してしまった。


「そう リストスの王族は魔力が高くて必ず高位魔法が使えるから その魔力を自分の血縁者にもと考える人間が多いのよ だから大変なのよ まぁこのリストス国は昔から自由恋愛主義だからどんな相手だとしても縁談を断れるのは助かるんだけどね けどわざとなんか訳のわからないロマンティックな雰囲気を国ぐるみで作り出して私たちを口説こうとしてくる所が面倒なのよね」


国ぐるみでロマンティックな雰囲気で口説くとか少し意味不明な感じだ。


「けどそれはたぶんスタイル容姿完璧なリリア姉様だから縁談がたくさんくるんだと思うんけど、それに私は魔力ないし」


ボソリと呟くとリリア姉様が大きなため息を吐いた。


「まだアイちゃんの魔力については未知数だからなんとも言えないのよね」

「未知数なのかな」


私としては未知数もなにも魔力0な自信あるけどな・・・・


「そうよ まぁ何はともあれ変な男にだけは捕まらないように、私の可愛いアイちゃんが変な男のお嫁になるなんて耐えられないわ」


大袈裟に顔に両手をあてて項垂れる。


「大丈夫だよ 私としてはこの世界に慣れる事に精一杯で恋とかそんなのに構ってる暇ないし」


私が心配して項垂れるリリア姉様の背中を擦るがすぐに覚醒したらしく立ちあがる。


「それもそうよね アイちゃんは賢くて可愛い妹なんだから、ラヴィア王子みたいにヘラヘラチャラチャラした男に騙される訳ないわよね」


すごい言われ様な彼に少しだけ同情したくなった。


「ラヴィア王子 そんなに変な人じゃないと思うけど」


兄を捜して、他国に来るくらいだとても優しい人だと私は思う。


「何言ってるのよ ラヴィア王子は女癖が悪くて有名なのよ」

「女癖・・・」


リリア姉様に発言に色々思い出す、確かに彼は女性の扱いに手慣れている感じだったし、あれだけの美系だ女癖が悪いと言われると妙に納得してしまう。


「それはあるかもしれない」


うんうんと確信を持って頷いていると、目の前のリリア姉様は拳を握りしめて熱く語り出した。


「アイちゃんには誠実で頭も良くて魔力も高くてお金持ちで優しくて美しくて恰好よくて身長も高くて強い男の人じゃないとお嫁に行かせないわ」


そんな男居る訳ないと心の中で突っ込みを入れていると室内から「リリア姉様 アイ姉様 そろそろ戻って下さい」とカイト君の声が届く


「了解」

「分かったわ」


私たちは慌てて返事をした。


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