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スフィーと聖なる花の都の工房 ~王立アカデミーのはぐれ綴導術士~  作者:
<3>魔王鳴動と開催前夜の狂争曲の章
84/123

(3-27)


「たのもー!」


 ばたん!


「!?」


 フィリアルディの寮室。突如として扉を開いて現れたスフィールリアに、集まってお茶を飲んでいた面々がぎょっとして振り向いた。


「スフィールリア!?」


「無事だったんですね!?」


 部屋にいたのはフィリアルディ、アリーゼル、エイメール。スフィールリアは彼女たちが囲んでいたお茶を見てむっすりとほほを膨らませた。


「あたしなしでみんな楽しそうにずるい! あたしの分!」


「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」


「あなたなにやってるんですの!? 学院長先生もかなりご立腹なさってたんですのよ!?」


「そうですよ、なんだか学院中で怖い人たちがスフィールリアさんのこと探し回ってるし……心配したんですよすごくすごく!? はっ!? はやくドアを閉めてください見つかったらまずいですよ!」


 驚いた表情のままで詰め寄ってくる三人をスフィールリアはどうどうの手つきでなだめ、おごそかな声音で告げた。


「まぁまぁ落ち着いてよ。大丈夫大丈夫。その学院長はすでに落とした……」


「え? え?」


「なにがなんだか……」


「もう大丈夫、ってことなんですか?」


「いや、正確にはこれからが本番――に挑むための挑戦権を手に入れる段階。みたいな。感じ。なんだけど。それでさぁ、みんな。手が足りないんだけど、えへへ……」


 スフィールリアはぽかーんとしている三人へ、がばっと頭を下げた。


「手伝ってください!!」


 またしばし、呆気に取られて三人は……


「……」


 顔を見合わせひとつ、強くうなづいた。




 三日目の朝。

 巨大な球体――魔王の使徒は変わらずに<アカデミー>中央敷地を占拠している。


「こうして近くで見ると不気味だね……なんのつもりなのかしら」


「なに言ってるんですのフィリアルディさん。これからアイツをやっつけるんですのよ」


「そうです。あんなわけのわからないもののために、せっかく入った学院をはじき出されてたまるもんですか!」


 スフィールリアたち四人はそれを眺めながら、静まり返って雨音に支配された学院を移動し、テスタード工房へと足を踏み入れていた。

 工房の入り口は、端的に言って一触即発の状態になっていた。

 巨大な扉がある小広間に数名の黒服を着た学院エージェントと、政府関係者と見られる男たちがたむろ……というよりは、扉と対峙する形で居座っていた。

 彼らはスフィールリアの姿を見るとすぐに集まって壁を作り、通せんぼをかけてきた。

 アリーゼルらも彼女を捕まえる気なのかと懐やポシェットに手を入れて攻性武器を取り出す構えを見せる。

 スフィールリアは手を出して両者を制し、正面の男たちに声をかけていた。

 指先に現した情報構成――テスタード工房の『鍵』を見せびらかしながら。


「どいてくれます?」


「……」


 肩をすくめた黒服の男たちが大仰な手つきでどうぞと道を開ける。政府関係者が非難めいた視線を送るがほかの者が首を振ってそれをなだめるか牽制するかしている。


「鍵は無理やり開けないでくれ。まずは彼女と対話を」


 小広間に入った彼女の肩に手をかけて黒服のひとりが注意を促してくる。

 元よりそのつもりだ。スフィールリアはうなづいて脇にあるロッカーを開け、その奥にある装置にアクセスした。そのとたん、天井にあるスピーカーからエレオノーラの切迫した声が響いてくる。


『い、入り口への一切の細工は禁止だって言ったはずですよ! こ、ここでテスタード様の無事なお姿を見るまでだれも入れませんからね!? 少しでもおかしなマネをしたら次は作動させます! わたしは本気ですからね!?』


 この状況で本当に粘ってた。スフィールリアは思わず苦笑しながら装置に向かって話しかけた。


「エレオノーラ、落ち着いて。あたしだよ」


『す、スフィールリア様ですか!? まさか、スフィールリア様たちまで、テスタード様の――』


「違うよ、エレオノーラ。あたしたちは味方だよ。センパイを助けるためにきたの。工房に入れてほしいの」


『え? ほ、本当! …………いえ。ものは言いようと申します。みなさんが学院に脅されるか篭絡されていないとは限りませんものね!』


「違う。センパイに会ってきたの。センパイはまだ出られないけど……あたしは約束して帰ってきた。『マスター・キー』も預かってきたよ」


『……』


「お願い。センパイを助けるためには、この工房が残ってるうちに、この工房の力を全部使わなくちゃいけないの。中に入れて。エレオノーラの力も貸してほしい」


 数秒間、沈黙してから。


『……マスター・キーを、触れさせてみてください』


 スフィールリアは言われた通りに、秘密の隠し場所から掘り出した使い捨て情報媒体から受け取ってきた開錠鍵パッケージを装置へと渡した。

 その瞬間、すべての鍵が音を立てて開錠され、また間髪入れずに再施錠された。エレオノーラが閉めたのだろう。

 再び降りた数秒間の沈黙ののち、やや平静を取り戻したエレオノーラの声がスフィールリアたちを招いた。


『スフィールリア様たちだけ、中にお入れいたします。すぐに入れるよう、扉の前に集まっていてください』


「ありがとう、エレオノーラ」


『……スフィールリア様たちだけですからね!? ほ、ほかの方々は広間の外まで下がってください! 少しでもおかしなそぶりを見せたらドカンですよ!? は、はは早く!?』


 またすぐに切羽詰った声に戻るエレオノーラ。スピーカーの向こうで立てた尻尾の毛を総立ちにさせている姿が目に浮かぶ。

 スフィールリアが目配せをすると黒服たちもまた肩をすくめて、渋る政府関係者たちの肩も押しながら小広間の入り口外まで下がっていった。

 その折、ひとりが彼女に寄って耳打ちをしてゆく。


「彼女に、せめて工房の自爆装置の安全装置だけは復帰させるように伝えてほしい。学院長が君についたことで学院(われわれ)大勢(たいぜい)も静観の姿勢に入った。政府が〝黒帝〟の財産を手に入れそこねたところで知ったことではないが、今あの魔王の使徒に余計な刺激を与えることだけは絶対に避けなければならない。それがすべての共通認識だ。君たちにとってもそうであるなら助かる」


「わ、分かりました」


 スフィールリアは冷や汗を垂らしながら二もなく了承した。ため息を漏らしながら去ってゆく彼らが、今まで工房の入り口まできて攻めあぐねていた理由がよく分かった。

〝黒帝〟のことだから、工房内部に保管されている数々の高ランク・高耐久の品さえ粉微塵にするほどの壮絶な破壊装置を備えていたに違いない。ひょっとしたら上の棟の構造も把握していて、丸ごと綺麗に爆破解体してこの地下を総埋めにする仕組みまであり得る。そんなものの安全装置を外されたのなら、この場にいるだけで胃が痛くなってくるような任務であっただろう。

 そもそも彼らの任も、途中からは工房の接収ではなく説得に変わっていたのだろう。だが学院の現状としてテスタードの幽閉を肯定せざるを得ない彼らは、どうしてもエレオノーラにとっての味方にはなり得なかったのだ。

 本当なら自爆装置自体の撤去も行ないたいところだったのだろうが、これが最大限の譲歩といったところなのか。苦労が偲ばれる。


『あ、開けますよ。いいですね。うしろによく注意していてくださいね……!?』


 ともかく、スフィールリアたちは遠巻きにしたエージェントたちに見送られて、開錠されたテスタード工房に入っていったのだった。

 入ると、まず出迎えてくれたのは当然ながら妖精エレオノーラ……ではなく。玄関口に並べられた無数の装置たちだった。


「し、閉めます! みなさんも動かないで! いろいろとたしかめさせてもらいますからっ!」


 宣言通りズシンと音を立ててすぐさま扉が閉められる。間髪入れずに装置が次々と作動し、ぽかーんとしている少女ら四人にそれぞれ(せわ)しく光線やらなにやらを照射してくる。


「あのこれは……」


「洗脳痕跡検出装置に暗示スキャンじゃないですか、それに精神誘導系各種思考フラグチェックに言動の精霊シミュレーションとの照らし合わせとあとそれと盗聴アイテムに遠隔効果のスパイ系アイテム各種の検出に――」


「……」


 装置の間を目まぐるしく飛び回っている白猫。「うん、うん……!」とひとしきりうなづいてから、ハッと気づいたのか耳をぴょんと立てて、


「あのあの、匂いも嗅がせていただいてよろしいですかっ!?」


「……どうぞ」


 ぱっと胸に飛び乗って、それぞれの匂いをフンフン、スンスンと丹念に嗅いでゆく。嗅いでゆく。「念のため味も」とか言ってほっぺたもなめてゆく。

 まずフィリアルディ、次にエイメール、アリーゼル、スフィールリア…………


「ど、どう?」


 スフィールリアの胸の中から見上げて、エレオノーラの目に、じわりと涙があふれてきた。


「わっ……わたくじはっ、信じでおりました……スフィールリア様だけは、でずだぁどざまの味方になってくらしゃるっでぇ……!」


 そのまま、彼女の胸にふわふわの顔を埋めて大泣きを始めてしまった。スフィールリアはエレオノーラを抱きしめて頭から尻尾のつけ根まで大きくなで回してやった。


「おお、よしよし」


「学院のすべてがあの人の敵になってしまってー! わたしもうどうしたらいいかー! あのお方がいなかったらわたしはぁ……!」


「……」


「わたくしたちもいるんですけど」


「こういうの信じていたって言っていいんでしょうか」


 ぐしゅんぐしゅんと鼻息を鳴らしていたエレオノーラ、スフィールリアの胸から浮かび上がって四人にぺこりと頭を下げた。


「し、失礼いたしました。このエレオノーラの全能力、テスタード様をお救いするためならばいかようにでもお使いください!」


「うん、お願いね! メインはあのカイブツをやっつけたあと、センパイについて働いてもらうことになると思うけど……そういえばエレオノーラって晶結瞳の妖精なんだって? そういうことなら、おっぱじめる前の〝証明〟で何点か作るかもしれないから、その時に協力してもらうかも」


「まぁ、テスタード様はそんなことまで? ええもちろんかまいませんとも!」


 ぱっと顔を輝かせる白猫にアリーゼルが驚愕の表情で詰め寄った。


「し、晶結瞳の妖精!? 超々弩級のレア妖精さんじゃありませんの! ち、ちょっと触ってもよろしいですか?」


「ええどうぞ!」


「わ、わたしもいいですかっ?」


「ぜひわたしも! うわぁ、すごいふわふわで手のひらが幸せ……」


「これが晶結瞳の妖精さん……妖精化して意思を持った道具はその能力が何倍にも跳ね上がり、通常では不可能な変性ももたらすと聞きますわ。〝黒帝〟殿の躍進を支えた要素のひとつが、この妖精さんだったんですのね……」


「くすぐったいです、みなさんくすぐったいです」


 加速するなでくりから逃れたエレオノーラがスフィールリアの腕に戻る。残念そうな顔をする三人の前でフォルシィラの身体で学んだ猫特化マッサージ術で毛並みを戻してやっていくと、白猫は「は~~」と幸せそうに目を閉じて感触を堪能した。


「さっそくなんだけど、あんまり時間がないんだ。エレオノーラ、工房の倉庫と資産の目録、全部見せてくれない? あと今までの顧客リストも全部」


 目を丸くしたエレオノーラもさすがに「え?」と戸惑う様子を見せた。


「で、でもぉ。さすがにスフィールリア様と言えども、そ、それは……」


 工房の資産、顧客、取引の全記録――それは工房の生命と言ってもよい機密事項だ。綴導術士として独立して一個の工房を構える者なら、いや見習いでさえも、決して気軽に余人へ明かしてよいものではない。

 しかしスフィールリアはきっぱりと言い切った。


「必要なの。言ったでしょ、『マスター・キー』も預かってきたんだって。あたしはセンパイから工房の全権を預かってきたわけだから、この件では、あたしの言葉をセンパイの言葉だと思って働いて」


「…………」


 強い言葉と眼差しに、白猫の耳が徐々に下がっていった。

 やがて、意を決した風にエレオノーラも眼差しに力を込めて、うなづいた。


「わ、分かりました。お任せします」


 腕の中から浮揚したエレオノーラが倉庫の扉へと向かってゆく。どの道『マスター・キー』を持っているスフィールリアは彼女の意見を聞かずに工房すべての封印を解くことができるのだし、腹をくくったのだろう。

 その白猫の背中にスフィールリアが追撃をかける。


「あ、デッドストックも使うから。隠さずに全部出してね」


「デッドストックですかぁッ!?」


 あまりの衝撃に、すぐ隣に雷が落ちたみたいに全身の毛を逆立てて、泣きそうな顔をした白猫が振り返ってくる。彼女だけでなく、ほかの三人も目をひん剥いていた。

 ――デッドストック。

 それは、〝工房〟を象徴するような素材やアイテムを示す在庫品に冠される名称だ。

 ランク、効果量、入手難易度、作成難易度、稀少性、値段、需要……あらゆる意味において他の在庫に比肩し得るものがなく、替わり(ストック)もない『一点もの』の、超稀少な在庫のことである。


 価値という意味においてもそう安々とこれらを使った品に注文が出せるものではないが、それ以上に一度手放せば二度と手に入らない可能性も高いので、工房側としてもただ金と注文を積まれただけでは渡したくない品でもある。ゆえに存在そのものを秘匿している工房も珍しくない。

 有名な工房がデッドストックを手放して注文を受けたという話が流れれば、その品の主は名誉とともに羨望と嫉妬の入り混じった注目を浴びることにもなる。

 工房の名と歴史、己が培ってきたすべての技にかけて、いつかそれを手にするに値するふさわしい主人が目の前に訪れるのをともに待ち続ける――そんな意味が込められることも珍しくはない品を指す名だ。


 それほどの品をどう料理するかというアイデアとともに、どのような人物にふさわしいかまでの夢想を暖めながらすごすということは綴導術士にとってのひとつの至福であり、到達点であり、転じてそういったデッドストックを抱えることは工房を志す者がまず思いつく目標でもある。

 さらに転じて、それは、工房の〝性質〟をも象徴する品。己がどのような術士であるのかということを示す証明にもなるわけである。

 替えのない在庫という意味でならどのような品であろうともデッドストックと言い張ることはできるのだが、それだけでは綴導術工房におけるデッドストックとは言えない――


「わ、わたしたちも見てしまっていいんでしょうか……」


 ましてや、まだ独立こそはしていないものの、学院でも最高位階級である<金>の術士――その中でも『超攻撃的』と知れ渡る〝黒帝〟が構える工房のデッドストックだ。

 それがどんな品なのか、どのような品であるのかさえ、普通ならば絶対に知ることも叶わない。もしかしたらまだ公式目録にすら登録されていない超級の品であることは間違いなかった。


「こ、これになりますぅ……ど、どうぞ……」


 エレオノーラが周囲に浮かべて運んできた十数冊にもおよぶ書物や巻物や帳簿の数々を、スフィールリアは作業机の上に一気に広げていった。

 その中で、素材在庫を記したハードカバーの裏表紙の革張りの隅にあった切れ込みの内側に隠されていた紙片を取り出し、これも容赦なく広げて手元に置いた。


「デッドストックの分は、これで全部?」


「そ、そうです……」


「分かった。ありがと」


 在庫リストと顧客リストを同時にめくり始めたスフィールリアのうしろから、恐る恐るといった様子で、フィリアルディたちが顔を覗かせてくる。


「あ、あの。これってわたしたちも見ちゃっていいものなの……?」


「いくらなんでも、せ、責任持ちきれませんわよ」


 スフィールリアは速読を止めないままにうなづいた。


「うん。いくらデッドストックだからって、今回の企みにうまく当てはめられなかったら意味ないからね。センパイからもどうするつもりだったのかってアイデアはいくらか聞いてきてるけど、あの人は本当にひとつのことにしか特化してないからなぁ……だからなるべくいろんな視点の意見も聞きたいの」


「……? そ、そういうことなら、え、遠慮なく。え……なにこれ。『世界霊基水』って、いきなりおとぎ話に出てくる名前が……?」


「『賢者石』って…………ランク純SSの、伝説の品ですわよ!? 本当の本当に実在してるんですのこれ!?」


「『生命の蛇』ってなんですか……」


 我慢できずといった様子で首を伸ばした面々から、途方にくれたような、またはぞっとしたような声が次々と漏れ出してくる。

 それはそうだろう。Aランクの品などひとつもない。すべて最低がSランク以上の品々ばかりだ。スフィールリアもこんな時でなければ実物をせがんでじっくり見せてもらってあーでもないこーでもないと話し合いたい。


「……」


 一方で、エレオノーラは机の上でお座りをして、ページを繰り続けるスフィールリアを見つめていた。


「……あの。集中なさっている時に申し訳ありません。スフィールリア様は、その、テスタード様の〝目的〟も、ひょっとして……?」


 スフィールリアは、やはり手を止めずにうなづいた。


「うん。全部教えてもらった。全部知って、あたしはセンパイの味方につくって決めてきた」


「……」


 またしばらく今度は逡巡の気配とともに黙り、エレオノーラはめくる本の上に前足を置いて中断させた。


「申し訳ございません。まだ、何点か残っております」


「……」


「すべてお渡ししますので、どうかあの人を助けて差し上げてください」


「ありがと、エレオノーラ」


 深々と下げた白猫の頭を指先でなでて、スフィールリアは倉庫へ飛んでゆく彼女を微笑んで見送った。

 ほどなく追加の目録と数点の実物とともに、エレオノーラは作業机の上に帰還した。


「本当に申し訳ございません……」


「いいのいいの。それぐらい慎重にならなくちゃおかしいよ。あたしだって師匠のデッドストックなんて見せびらかしたら勘当されちゃうよ」


「そうではないのです。わたしは……どうしたらいいのか分からなくて。こんなものは今のうちに手放してしまえば、あの方の目的はずっと遠ざかってくれる……でもそんなことをしたらあの人の苦しみはずっと……」


 白猫はスフィールリアの目を見ずに、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。


「何度もおそろしい声でうなされているのを見てきました。擦り切れながら突き進んでいくあの方のお傍にいながら、そうするしかわたしがお役に立てる方法はないとも思っていました。でも決めきれなくて。決めきれないまま……わたしはその時を迎えるのかもしれないと考えて……今日も、あなたに嘘をつこうとしました。あなたがテスタード様の味方のつもりでいてくれても、結局はどう転んだってあなたもわたしも、あの人を滅ぼすことにしかならないんじゃないかって」


「……」


 エレオノーラもまた張り詰めていたのだろう。スフィールリアが味方であることを知っても氷解できない部分があったのだ。だからスフィールリアも自分がどれだけテスタードの信頼を得てきたのかということを最初から力説はしなかった。

 これは彼女が抱えた懊悩と疑念であって、それを解決するにはテスタードの言葉ではなく、彼の周囲にいる人間の立ち居振る舞いを彼女自身に見てもらわなければ、結論は変わらなかったろう。

 スフィールリアの伸ばした手のひらに、エレオノーラは初めて安堵を得た仔猫のように顔を擦りつけた。


「でも、あなたはきっとわたしの嘘に気づいていたのに、そっとしてくださりました。あなたは本当の意味で、あの人を助けるためにきてくださったんですね……」


「あたしだけじゃない。エレオノーラだってそうだよ。きっとほかにもいるよ。だから一緒にがんばろう。センパイが学院で培ってきたものが無価値なものなんかじゃないって、見せてあげようよ」


「はい……! わたしはっ、わたじわぁ……!」


「よしよし、おいでっ」


 よじよじと服を昇ってくるエレオノーラを抱き上げながら、スフィールリアは改めて並べられた超級の品に向き直った。


「さて、さすがにこれだけの素材たちは無視できないわね。最初から勘定に入れておかないと組み立てが狂っちゃう」


 目録真打に目を通していた三人が、途方に暮れた情けない表情で顔を上げてくる。


「って言われても……正直こんなものの使い道なんて。どうしたらいいのか……」


「そう? 『賢者石』って基本的になんでもできるやつだよね? どんなアイテムの素材にもできるんだったら使いどころは万能だと思うけど」


「もったいないですわよ! それほどの素材だからこそ使いどころは絶対に選びませんと!」


 そうだよねぇ……とうなづきながらスフィールリアは淡い紫色の宝石を手に取った。


「『竜聖石』って『竜魔石』とは違うの?」


「はい。間違いなく一線を画するものです。次元が違います」


「レシピある?」


「目録真打に概要なら」


「……うげ! 『ドラゴンの原型』が関わってるのか! こっちの『マッパ=ドラグ・ドグマ』の副産物なのね。まるで別物じゃない! 呆れるわ……」


「テスタード様が、ドラゴンの力を取り込むことを検討した時のものですね……スフィールリア様は、『ドラゴンの原型』についての知識もお持ちなので?」


「うん……昔、師匠のお手伝いに必要でひと通り習ったんだ。やっぱり正しい道のりをたどると、構造は近づいてくるんだね」


「まぁ……この禁術の構築で、テスタード様以上の深度に到達なさっているお方がいらっしゃるなんて。今まで考えたこともありませんでした。世界は広いのですね!」


「……あのー。そもそも『ドラゴンの原型』ってなんですか?」


「えっとねぇ、すべてのドラゴンの始まり……みたいな? すべてのドラゴンが持っているドラゴンの条件。ドラゴンがドラゴンである証。それの始まり、『霊の原型』を示したものなんだけど、説明は難しいなぁ。あたしの師匠の場合は『天上竜』のことだって言ってたけど、人の研究の視座それぞれによるだろうし」


「……? ……? ……?」


 さっぱり分からない顔をしているフィリアルディとエイメールに、非常に難しい顔で腕を組んでいたアリーゼルが助け舟を出した。


「……ある面から見た時、生命が進化の果てに到達する頂点は、三種類に大別できるという説がありますわ。ひとつはわたくしたちもよく知る『精霊型』……もうひとつはわたくしたち人間に代表される『霊長型』……そして、『界王型』、ですわ。『界王型』は『ドラゴン・タイプ』と言われることもあり、かつては竜種のことを界王種と分類する学派も存在していたとか」


「……」


「現在惑星に生息する、人間も含めたほとんどの生物は『霊長型』であると言われています。半霊タイプのモンスターなども『精霊型』から派生を受けて『霊長型』と融合した亜種であったり……要するに、ドラゴンというのはそれらとはまったく別種の生命だということですわ。ドラゴンに関して諸説はありますが、この点だけはたしかです。

 で、『ドラゴンの原型』についてですが。……すべてを要約すると、今スフィールリアさんがおっしゃった『ドラゴンの条件』というのが結局は一番当てはまっているのだと思いますわ。ドラゴン種はその霊の構成が我々とは根本的に違っていて、どれほど派生したドラゴンでもその『タイプ』を受け継いでいるという学説です。これによれば、『ドラゴン・タイプ』を持っていないドラゴンはどれだけ近い姿や力を持っていてもドラゴンではないということになりますが……しかし……」


「お~」


 ぱちぱちと拍手を送る三人……というかスフィールリアへ、アリーゼルは険しい顔のままで苦い声を出した。


「お~、じゃありませんわ。わたくしだってあくまで『三霊基』の派生話として名前と触りだけ知っていたていどで、実家にだって具体的な理論の持ち主はいませんわよ! あなた何者なんですの……?」


「う~~ん、そう言われてもなぁ。あたしが何者っていうか、師匠本人に言ってほしいんだよなぁ。あと、その師匠は『第四の形態』もあるみたいなことも言ってた……ような」


「第四? ですの?」


「……『天上竜』っていうのはなんです!? わたし気になりますよ!」


 目を輝かせてエイメールが乗り出してくるので、アリーゼルに目を向けると……


「……神話などにたびたび登場することがある、神竜のことですわね」


「おお、やっぱり知ってた」


「うるさいですわよ! ……創世記にも登場することがある、太陽神と取引を行ない、<始原の庭(ガーデンズ)>に咲く花の蜜を与えられた竜のことであるとも言われていますわね。竜信仰によれば、原初にして、最大にして、唯一のドラゴンであるとも」


「あ。そのドラゴンならわたしも知ってるわ」


「師匠は『ドラゴンの原型』は、その『天上竜』のことだって言ってたなぁ。七翼在って、それぞれが『世界の雛形』を内包してるんだって」


「七翼? 六体ではなく? 数が合いませんわね……」


「ごめん、神学のことはさっぱりでそのへんはちょっと。師匠ってあたしに神学は絶対に触らせなかったんだぁ。お茶菓子もらいに友達と一緒にボロの教会にいったってだけですごい怒るしさぁ」


「興味深いですわ……だとすると既存の神話や伝承の中にももしかしたらいくつかの信憑性が……『天上竜』か、それに近いものの実在が…………」


 ぶつぶつと思考の世界に没頭し始めるアリーゼルから目を離し、スフィールリアがぱむと手を打って話を結論した。


「とにかく! 『天上竜』はすべてのドラゴンの始まりで、最強のドラゴンってこと!」


「おお! 分かりやすいです! さすがスフィールリアさん!」


 スフィールリアが「えへへ~~」と照れるとエイメールが「よぉぉーーっ!」なんて言いながら拍手を加速させたりしている。

 その肩の上で、エレオノーラが遠い目をしてつぶやいた。


「テスタード様は、そのドラゴンと同じ力を得ようと考えたことがあったということですねぇ」


「先輩はなんでそんなこと……」


 ぞっとしたようなフィリアルディのつぶやきに、エレオノーラは遠く目を細めたままあさっての方向を向いた。まさか魔王にケンカを売るためとは言えまい。

 スフィールリアはまた別の素材を手に取った。


「『グランド・スフィア』もすごいなぁ。『賢者石』もだけど、あたしもお手伝いで一部に触れたことしかないや。これは悩むなぁ!」


「あなたのお師匠様って本当にいったい何者なんですの……」


 アリーゼルが心底げんなりした様子でつぶやく。

 次にため息をついて、文字通りお手上げのしぐさでスフィールリアへ丸投げした。


「正直、お手上げですわ。これだけの品をどう活かしたらあなたの言うようなことが現実に実現可能なのか、ちょっと具体的な絵図さえ思い浮かびませんわ」


 スフィールリアは不思議そうに首をかしげた。




「そう……かな? そのものを活用するのは難しいかもしれないけど、レシピをたどれば部分的に流用も可能だと思うんだけど」


 これだ。アリーゼルは疲労を感じてもう一度息をつく。

 ここにあるのはどれもが伝説級の素材ばかりだ。そのレシピに触れたことがあるというだけでも異常だが、なにより、これだけの品になると単なる素材知識だけでなくさまざまな超級の理論や実践的経験も伴っていなければ関わることすらできない。そういうレベルだ。

 スフィールリアは公式(オフィシャル)な理屈や教科書通りの知識は信じられないほどに低いが……たしかに『そこ』にいる。


 そういえば『ウィズダム・オブ・スロウン』の時にも密かに感じていたことだが、アリーゼルが彼女よりもずっと先に破壊されたあの品を見て、関連図書ともつき合わせてじっくりと素材や部品を見極めたのに対し、彼女は出会って数分で同じだけの量の部品の選別をやってのけていた。

 それがどれほど膨大な知識と経験に裏打ちされて初めて可能となることなのか。少なくとも今のアリーゼルでは無理であることだけはたしかだ。

 これが学院で学んで正規の知識も実力に追いついたなら、その時……〝黒帝〟さえ超えて、どれほどの怪物ができあがるのか。アリーゼルにも計り知れなかった。


 ――かなわないのかもしれない。

 とてもスフィールリアが遠く感じる。

 出会ってから今までの日々の中で、彼女の工房の『仕事』を覗いた時にも何度か抱いた感情である。

 だが。


(それが、なんだっていうんですの)


 今かなわないのなら、追いすがるまでだ。

 小さなアリーゼルの胸に、今まで感じたことのなかったわくわくが競り上がってきて、口元を歪めさせた。

 入学する前までは想像したこともなかったではないか。フィルディーマイリーズ家の名前がつきまとうことにばかり辟易としていた。

 ――そんなものすらまるで意味をなさない相手。

 自分という個人が全力で走らなければ背中も見えなくなってしまいそうな競争相手なんて。願ってもなかった最高のライバルだ。魔王だか国難だかなんだか知らないが、こんな娘とすごせる日々を手放すなんて。あまりにも馬鹿げていた。

 絶対に学院に残って、また明日からも彼女と研鑽を続けるのだ。そのためにできることなら、どんなことだってしよう。

 だからアリーゼルは平然とスフィールリアへと丸投げする。湧き上がる悔しさと高揚を抑えて。


「ま、助言はできなくてもお手伝いはできますわよ。乗りかかった船なんですから、なんだっていたしますわ。ですのでデッドストックも含めて思うようにやってみてください。頼みますわよ、船頭さん」


「……うん! お願い!」


 力強くうなづいて、スフィールリアは帳簿たちに向き直った。

 綴じられていたページをすべて解き、広い机の上にどんどんと並べてゆく。


「…………」


 ひと通り並べ終わり、しばらくはずっと視線をあちこちへと走らせて…………やがて作業机に両手を大きくついたきり、動かなくなる。

 まばたきひとつもしない。

 やがて、ぶわっと――詮が抜けてしまったように急激に汗を流し始めた。


「スフィールリア。なにを……?」


 さすがに心配になったフィリアルディが寄ろうとする身体を、アリーゼルは手を出して差し止めた。

 まさか。――そう思うと同時に、理解もしていた。彼女が今なにに集中しているのか。これの邪魔をしてはいけないのだ。

 不可解そうなフィリアルディたちへ向けて、アリーゼルは戦慄の思いとともに、つぶやいていた。


作っている(・・・・・)んですわ……この工房に存在する全素材で作り得るアイテムを、すべて」

「え……」

 たったそれだけ(・・・・・・・)であり得るはずがない。彼女が見ているのは全素材の在庫リストだけではないのだ。

 今まで〝黒帝〟テスタードに関わってきた顧客リスト。取引帳簿も。

 彼が今までなにを作ってきたのか。なにを必要とされてきたのか。

 さらに今の彼女の頭の中には、ここにくる前に寄ってきた<クエスト掲示板>の全情報(・・・)も渦巻いているはずだ。

 ――作っている。編み上げているのだ。

 やがてこの学院に訪れる未来の姿。その絵図を。


「……」


『ウィズダム・オブ・スロウン』の時や、ほかにも。時たま垣間見せることがあったその才能と能力の片鱗。

 その真価を、今、彼女は解放していた。

 この時こそ正真正銘にぞっとしながら、アリーゼルは結論を告げた。


「工房の全素材、既存の取引履歴、クエスト掲示板、コンペの演目内容…………コンペ祭をメインに、未来の学院で必要とされることになる、あるいは必要としたいであろう膨大多岐に渡る数多のアイテムたち。それらすべてを現在の依頼提示状況からさかのぼって、たどって、予測して。その中へさらにこの工房の素材を投げ込んで作れるアイテム、発展させられるアイテムを……作っているんですのよ。この、凄まじいデッドストックの構造(レシピ)までも組み込んで」


「んなっ!?」


 さすがにフィリアルディたちも理解して、信じられないといった表情をしてくる。それはそうだろう。この企み自体が、どれほど荒唐無稽で無茶なことであるのかを理解さえしていれば。


「そ、そんなまさか!」


「え、だ、だってそれは、これからじっくり検討する予定だったんじゃ……わたしたちはそのお手伝いに、」


 アリーゼルはかぶりを振る。スフィールリアの企みは聞いた。自分も最初はそうだと思った。

 だが、そうではなかったのだ。考えてみれば、じっくりと腰を据えてすべてが決まるまで仲良くお話をしている時間などなかったのだ。

 自分たちの役割は――手伝い。本当に、それなのだ。だから自分たちの働きはこのあとに待っている。


「だから、邪魔はしちゃダメなんですのよ……」


 スフィールリアは動かない。

 アリーゼル自身身動きができない状況のような気がして、手を出したまま、彼女の背中を見守り続けた。ふたりも釣られてか喉を鳴らし、立ち尽くして待った。

 スフィールリアは、ただ、動かない。


「考えろ……この状況をひっくり返す。絶対に……!」


 やがては見開いていた目も閉じて、彼女は、無限にも近い構成(レシピ)と思考の渦の中へと飛び込んでいった。




「っ……!」


 そのまま一時間が経過したころ……スフィールリアが目を見開いて起き上がり、エレオノーラに有無を言わさず言い放っていた。


「エレオノーラ! 高速記述の使い魔! クモの子!」


「は、はいこちらに!?」


 ガラクタじみた機材の山をぐわしゃと押し退けて埋もれていた使い魔を引っ張り出す。


「入力端子!」


「はい!」


 外部入力端子であるタグをつかみ取る。


「紙も! とにかくいっぱい早く!」


「ははひぃ!?」


 どさどさどさ! と山積みにされた紙束へ、命令を受けた使い魔がすかさず飛びついていった。この間わずか十秒。エレオノーラ、がんばった。


「……!」


 あとは、紙束のタワーにかじりついた使い魔がひたすらに書きつけてゆく。

 スフィールリアが脳内に描いたレシピ群を。数ヶ月振りに獲物をしとめたクモそのもの動きで、一心不乱に。


「あ、あのあの。あまり耐久性の高い子ではないのであまり酷使しますと」


 あまりの稼動っぷりにドン引きした様子で肩に乗りおずおずと進言してくるエレオノーラの頭を、スフィールリアはにっこりと笑って端子を持っていない方の手で押さえつけた。


「そんなこと言ってる時間はないの。アタマの中のレシピが消えちゃいそうだから代案を言わない猫なら黙っててくれるぅ?」


「ごめんなさいぃ!!」


 押さえつけられた頭をギギギと動かし、エレオノーラが涙目をアリーゼルたちに向けた。


「テスタード様とは違った迫力ですぅ」


「……こっち、きます?」


「動けませんん……!」


 苦笑して手を広げるアリーゼルたちと首を振りたくて震えるエレオノーラへ、スフィールリアの最後通牒が届いた。


「黙って。本格的に」


「……」


 もうなにも言えず、ビクリとだけ震えてエレオノーラは押し黙った。

 クモはふたつ並んだ紙タワーを同時に捌いていっている。猛烈に。猛烈に。次々と書き上がってゆくレシピをアリーゼルたちが協力して拾い集め、通し番号順に整頓していってくれる。

 さらに数十分後。

 最後の受注リストを印刷し終えたところで、クモ型使い魔はプシューと煙を上げて力尽きた。


「よし! よくやった感動した!」


「うう……お疲れ様です。あとでたっぷり整備してあげますからね……」


 使い魔というか内蔵の精霊が足の一本をギギギと上げて答えているのが涙ぐましい。

 スフィールリアはそばに寄ってきた三人に目を配った。

 彼女ら三人が持っている受注リストは、ちょうど三人分|(自分の分も含めれば四人分だが)の通しアルファベット分に分けてくれているはずだ。

 彼女たちも、もう改めて言わなくても役割を理解してくれているようだった。


「貴族棟の分は、アリーゼルにお願いしたいの。嫌かもしれないけど……ゴメン」


「いいですわよ。なんでもするって言ったじゃないですの」


「これ全部回るのは大変だけど……スフィールリアは大丈夫なの? ほかにもしなくちゃいけないこと、あるんでしょう?」


「うん。まぁ、ね。……でも、首謀者のあたしじゃないと説明や証明ができないこともあると思うから」


「手が回らなくなったら言ってくださいね! わたしたちが持ちますから!」


 彼女たちが持っている分も尋常でないはずだが、それでも力強くうなづいてくれる。スフィールリアはじーんときながら、頭を下げていた。


「よろしくお願いします」


 三人はにっこりと笑って顔を突き合わせた。


「じゃあ、競争ね?」


「三人のうち、だれが一番早くスフィールリアさんの持分に手をつけられるか!」


「まぁ、普通にわたくしなんですけどね?」


「……スタート!」


 言うなり駆け出した三人は玄関に向かい、がやがやと言い合いながら、あっという間に姿が見えなくなってしまった。

 スフィールリアもぴしゃんとほほを打ち、エレオノーラに顔を向けた。


「あたしもがんばるぞー! じゃあエレオノーラ、戸締りよろしく。そのレシピ束、大切に保管しといてね!」


「は、はい! お待ちしています!」


「あと自爆装置は元に戻しといてねー!」


「検討しておきますー!」


 スフィールリアも、雨の降りしきる静寂の学院を走り始めた。

 魔王の使徒の偉容はどこからでも見ることができたが、怖くはなかった。

 しなければならないこと、乗り越えなくてはいけないことはたくさんある。どれかひとつが欠けても駄目だ。

 全部やってやるつもりで戻ってきたのだ。魔王の使徒なんて、そのうちのたったのひとつのことにすぎない。

 だから、笑って、走った。

 仲間たちと暖めた熱意を胸にして。



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