■ プロローグ(3-01)
滅びの風が吹き荒れている。
すべて、すべて。
彼が憎んだもの。
彼が愛したもの。
そして、彼が欲したものも。
――なにもかもが砕け、崩れ、消え去ってゆく。
その圧倒的な破滅の洪水の中で、聞こえてくるものがあった。
〝ははははははははははははははは――〟
哄笑が木霊している。
「か、な、ら、ず!」
彼は嵐の中心で、自らの肺を握りつぶさんとするほどに強く、言葉を搾り出していた。
「かならず……滅ぼしてやる!」
〝ふははははははははははははははははは――!!〟
哄笑が響いている。
彼をあざ笑っている。
〝力を欲したのは、貴様だ!〟
そう。
〝開放を望んだのは、貴様だ!〟
そうだ。
〝貴様が――〟
「アアアアアアアアアアアアアアアア――――ッッッ!!」
〝貴様が――欲したのだ!!〟
「かならず――絶対に――てめぇを、滅ぼす。滅ぼして……やる!!」
〝よかろう〟
声は、傲然と、言った。
〝貴様に、我の力を授けよう――この世の終焉を見届ける、我が『眼』となれ! 我を追ってくるがいい――〟
「かならず!」
〝我が名はエグゼルドノノルンキア。最果ての魔王のひと柱――『不死大帝』なり! この世の終焉に在る名であり、貴様の魂へ永劫に刻まれる名である!〟
「かならず――かならずだ!!」
〝ふははははははははははは!!〟
「かならず! かならず! かならずかならずかならずかならずかならず!」
嵐は、まだしばらく、吹き荒れ続ける。
この滅びの庭にあるものすべてが、終焉を迎えるまで。
「かならず!」
その嵐の中で。この嵐が終わるまで。彼は叫び続けた。
今でも、叫び続けている。
いつまでも――ずっと。
 




