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スフィーと聖なる花の都の工房 ~王立アカデミーのはぐれ綴導術士~  作者:
<3>魔王鳴動と開催前夜の狂争曲の章
112/123

(3-55)

(3-55)『fioritura-〝a〟』



〝ッッバォオオオオオオオオオオオオ!!〟


 正面の装甲が割れ、魔王使徒の口が開く。大口から牙をむき出して吐き出される咆哮は完全に怒りと理性の許容量を通り越している。そのままの勢いで巨体をのたくらせ、地に全身を叩きつけて、暴虐の嵐を現した。

 がむしゃらに放出される破壊の意思と直結した情報式は見境なく周囲の地形と、戦士と、手駒の魔人どもを蹴散らしてゆく。


『う……うおおおおおおおっ!?』


『む、メチャクチャだ! とても戦線を維持できない! 後退するが、指示をくれ!!』


『前衛エリアは半分破棄だ! 目標周囲は各自の判断で後退して生き残れ! もはやヤツの周りの結晶体は処理が不要だ――後退しろ!』


「ヤバいヤバいヤバい……スフィーッ!! これだと俺たちも巻き込まれる! 後退する――おぶるぞ、いいな!?」


 有無を言わさず腕を持って背中に乗せてくるアイバにスフィールリアもこくこくと何度もうなづいて従う。

 前衛エリアの様相はもはや言葉の虚しさをむき出しに露呈するような有様だが……端的に言えば、人が存在していてよい場所ではなくなっていた。

 絶えず吹き荒れるエネルギー輝きと破壊の波が土を山のように盛り上げて、まるでそういう生き物であるかのように大地がうねくって見える。大時化の海原よりもひどい。


〝ギェアロバゴッ――ギャァアアロ――バオオオオオオオッ〟


 そのただ中でうねる魔王使徒からひとつ、術士本陣に向け、堰を切ったような唐突さで特大のエネルギー塊が投げ込まれる。

 この学院で一番背の高い教職員棟にも届くような火柱が立ち、中・後衛の面々から悲鳴が上がる。


『……! ぁ……! ……が……! ……!!』


 届いてくるほとんどがノイズで、無事かどうか分からない。

 ワイヤード機能が一時乱れている。

 続いて真反対に向き、教職員棟が撃たれた。


「センパイッ!?」


 テスタードの絶叫がノイズの中に消える。立て続けに攻撃が叩き込まれて、教職員棟の姿は見えなくなった。

 焔の中で、教職員棟の影が、土台から折れて傾いてゆく。テスタードからの声はない。また悲壮な悲鳴が上がるが――。


 しかし、ほかの人員にしても悠長に嘆いている余裕はなかった。

 暴れ続けるノルンティ・ノノルンキアの破壊は前衛エリアに留まらず、しっちゃかめっちゃかに〝飛び火〟してはランダムに中衛・後衛エリアへと手を伸ばして陣容をかき乱していた。


 全通信網をつなぐ『ワイヤード』の本体を置いた術士本陣がまだ復帰していない。復帰するかどうかも分からない。現場ごとに対処と立て直しを叫ぶ声が交わされるが、もたらされる破壊の轟音の前にはあまりにか細く聞こえる。

 後退を試みる前衛に魔人の残党が食い下がり、掃討陣形の本質を維持しながら対処に当たり――それらが丸ごと吹き散らされてゆく。


「メチャクチャだ……」


 走り回る混乱と喧騒の中に、薔薇の聖騎士の声が混じった。

 そこにはかみ締めるような怒りと無念の味がある。メンバー全員、スフィールリアも、同じ気持ちだった。


『全ワイヤード、復帰します!』


『こちら〝台本〟。現在の陣形状況は把握している。このまま戦線を修正しつつ残存結晶体の掃討を仕上げるぞ。あきらめるな』


 通信が復帰する。


『本陣! 教職員棟――〝黒帝〟がまだ断続的に攻撃を受けている! 束縛は解けていないが安否が不明だ。こちらは中央破壊の偏向の関係で近づけない! はやくなんとかしてやってくれ!』


 見れば、たしかに教職員棟の方で次々と火柱が上がっていた。

 テスタードの不死性は維持されていたようだが、一度でも彼が〝死〟ねば『魂の束縛』が解ける可能性がある。

 そうなれば手がつけられなくなる。

 王手をかけられつつあるのだ。この上なく力押しで。盤上から、問答無用で押し出されようとしている。


「センパイ……!」


『少し待て。現在、全体の修正様相の波から収束する株分け可能戦力の集結を――』


『遅ぉい! 遅い遅ーーい! 集結ならとっくのとおにしてるってんだぜよーー!』


 聞き知った声が割り込む。この声は――


「キャロちゃん先生っ!?」



「う、ぐふっ……が!」


 テスタードは巨大な瓦礫の山々から這い出して、ベチャリと建材のひとつの上に、貼りつくようにして倒れた。その左腕は肩からぺしゃんこに潰れている。

 崩れ落ちてきた時計塔の瓦礫に巻き込まれて、その後の立て続けの攻撃で攪拌されての有様だった。建材が大きかったためもあるが全身ミンチにならなかったのは僥倖なのか。


『どけどけどけぇえーーい! 泣く子も黙るキャロリッシェ教室軍団のお通りだぞーん!!』


 朦朧とした意識に届いてくる、小うるさい教師の声。

 我が物で戦場を突き進んでくる姿が、不思議と自然に幻視される。


『なにをやっとるんだね!? 君たちはどこの班……なに、まさか……全員バラバラに抜け出してきたのか!?  なんちゅう勝手なマネを!』


『がんばるかわいー生徒のピンチに駆けつけない教室なんてないでしょ! それが努力と友情ッ! 青春ってモンよ――停滞していた輸送〝素材〟を集めてきてやったわ! どーせ手間して人集めたって最後はクソ度胸なんだから預けなさいよ! 言っとくけど土壇場の絆と底力ならウチは<アカデミー>イチだからね! お偉いさんなら言い値で買いなさい!』


『よし、そのまま突っ切ってくれ。目標は〝黒帝〟の救援と、立て直しの支援だ。必要なものがあれば途中で適当に拾え――あ。拾ってるのか。物資の穴ボコはこれか。――以上』


『よっしゃあ! 進め進め、友情と師弟の愛で結託した我が軍勢よ、突っ切るのよーー!』


『先生! 死ぬ! 死ぬ死ぬ無理だ! 一年坊だっているんだぞ!?』


『なに言ってんのこんな時こそわたしの教えをフル動員する時でしょ!? こんなのはノリとね、あとはちょっとした単純な方程式のかけ合わせでなんとかなんのよ!』


『ノリって言ったか一番に!? 教えはどこ引っ込めたァ! すぐに戻せやコラァ!?』


『ウチは実践至上主義でしょ! 現弾(アイテム)さえありゃなんでも乗り切れるッ! 細かいコトは全部おかーさんがやってくれるわ、おかーさんに任せなさい!』『あはは。さすがに厳しいかな~』『丸投げかよくそくそくそ教師!』『だれか助けてぇえ。もぉこのせんせーやだーー!』


 泣き言と罵倒と呪いの声がノイズの中に消えてゆく……。


「馬っ鹿、野郎が……!」


 寝返りを打ち、片腕で身を起こした。


「テスタード様!」


 瓦礫の山の後方に顔を向けると、巨大『晶結瞳』の姿も見えた。ほか機材もいくつか潰れているようだが、解析機や増幅器など、一番肝心なものはまだ無事だ。


「くっ……!」


 瓦礫を昇り、そちらへとたどり着くと、白猫が飛びついてくる。


「テスタード様!」


「機材の、チェックは、」


 その言葉と、呼吸が停まる。

 目の前にそびえるは、直近まで迫った魔王使徒の威容。血走った単眼は力の充填を完了している。


「――」


 思考さえ復帰する前に働いた莫大な力が、目の前の光景を塗り潰していった。


「――なんて顔してんのよ。我が教室が誇る天下のエースちゃんが」


 巨大な炸裂は、『レベル1・テンペスト』のもの。ただし、大胆繊細に介入した制御式が威力の向きを変更して魔王使徒の内部で暴れ回る。

 悲鳴を上げ、目を閉じたノルンティ・ノノルンキアが地面にのたうっていた。

 呆然と膝立ちしているテスタードの前に立ち、見下ろしてくる二名――キャロリッシェ教師とフェイト三年生が、それぞれの笑みで口を開いた。


「生徒のピンチにばみょんっと登場、偉大なるお師匠様ってね!」


「エースはもうひとりいるんだってこと、忘れてもらっちゃ困るぜ。親友ばかりにイイ格好はさせておけないからね」


「……」


「お? この場に駆けつけた友情と師弟愛に声も出ないカンジ? 泣いちゃう?」


 実際、嗚咽が漏れていた。

 彼女らの横でへたり込んでいる教室メンバーたち。煤けてヘトヘトになった女の子がしゃくり上げていて、ほかの生徒に肩やら背やらさすられている。なんとも痛ましい光景だ。

 ひとまず、テスタードは誇らしげな教師に半眼で告げた。


「今の『テンペスト』俺のだろ」


「なによぅ、いろいろ支援物資持ってきてやったのよ? 持ち寄り交換ってクラスメートっぽくていーじゃない」


「先生はクラスメート枠じゃありませんけどね」


「なに先生を省く気!? せんせーは一番偉いので一番取り分があって全員から一割ずつ供出もあるんだからね! おかーさんでもこの実権は握らせないわよ!?」


「ええい、うるさいやかましい頼んでもいねー! ここでガキのクラス会開こうたってそうはいかねえぞ……!」


 無力感をありったけの声に変えて床を叩くと、テスタードはビッと横手を指し示した。


「ブツ置いたらさっさと失せろや。コイツは俺のヤマなんだよ。お遊戯会の足手まといちゃんどもにじゃれつかれてたら、できるもんもできやしねー」


「……」


「手柄のおこぼれがほしかったか? 残念だったな。友情ごっこご苦労。じゃー消えろ」


 少しの間の、沈黙。

 キャロリッシェは突っぱねられたまま無表情で。

 フェイトは静かに笑みをたたえたまま。

 キャロリッシェ教室の面々は、疲労と痛みのにじみ出た表情で〝黒帝〟を睨んでいる。

 やがてキャロリッシェがフッと息を抜いてニヤリと笑い、そらした顎の上から〝黒帝〟を見下ろした。


「ガキ」


「あぁん!?」


 瞬間、彼女とフェイトがうしろにもう一発の『テンペスト』を叩き込んだ。魔王使徒が逆襲に再度浮き上がろうしたところだった。

 魔王使徒を押し流し、焔と風が吹き乱れる。

 同時に、ダンと足を置き直し。噴き上がる爆炎を背後、キャロリッシェは腕組み自信満々の笑みでテスタードの上から吼えていた。


「ガキだ、つったのよこーのすっとこどっこいが! そんなてーどのことで孤独を気取れたつもりでいるから、アンタはお子様で、生徒で、半人前だってーのよ!」


「わけの分かんねーこと言ってる――」


「――アンタがさあ。いっつもウチらのこと見てなくて別のなにかを見てるだなんてこと、ちょっと見てりゃー分かんのよねえ! 見ないようにしてるんだってこともね! いっしょーけんめーソレから目を逸らすまいとしてるなーってさあ!」


 次に、横にいる生徒たちを指差して、


「でもね! そんなことしたってアンタの周りにいるわたしたちがなくなるワケじゃないし、ここにいるアンタ自身だって消えることなんざできやしないのよ。アンタは本当の孤独なんか作れていない。アンタの足跡をたしかにウチらに残したの」


「……」


「気概、憧れ、嫉妬、目標――そんなよーなものをね。そうじゃなけりゃアンタがいる時の教室におちおち居残って聞き耳立てるワケがないでしょーが。こんなアブない戦いのこんなドエラい場所までくると思ってんの? ウチらは上から学びをお目こぼしいただくためだけにココにいるんじゃない。勝ち取るために食い下がってんのよ。なめてんじゃねーわよ」


「…………」


 教室生たちは、変わらず強い目で〝黒帝〟を見ている。寄り添いながら。支え合いながら。

 テスタードは教師から視線は外し、しかし手を床に着いて、彼らの方にまでは顔を向けられない。

 炎に煽られ喘ぐように、汗が落ちていた。

 しかし教師の笑みが一層強くなったのだけは分かった。


「後悔だか挫折だか知らないけどね――スッキリしたくてもがくんだったらまず前を向きなさいよ! やらかす前の自分とは違う〝何者〟かになって見せなさい! うしろ髪を引くだれかが誇れる自分を目指しなさい! それが謝罪も弁明も通じない相手に対抗できる、唯一の手段なんだから。もう自分の前にいないだれかを眺めていたって、どうせ思い出はいつまで経っても変わらない姿をしてるだけ。目を逸らさず進んでるつもりでも自分の距離も相手の距離も少しだって変わらないまま、どうせぬか喜びだったって気づくだけなんだから。縛られるって、そーいうことよ!」


「…………」


「だったら縛るものは一旦そばに置いて……精一杯がんばって、変わって手に入れてがんばって……それでうしろを見てもやっぱりなんにも変わってなくて前の方がいいやって思うんだったら……それから胸を張ってに死になさい! 言えばわたしが手伝ってやるわよ。なにしろわたしはせんせーだから! ――これよ! いつか思いっきりアンタにコレを言ってやりたかったの。あーーースッキリしたぁああーーー!!」


 盛大に両の拳を持ち上げてスッキリした宣言を果たす教師に……しばし、だれも、なにも言えなかった。

 炎の熱で汗をかきながら見守る一同の前で、キャロリッシェは上げていた顔を下げ、今度は静かに微笑んで、言う。


「言っとくけどわたしとスフィーちゃんはグルなんだから。アンタあの子の手を取ったんだから、もうわたしたちからだって逃げらんないのよ? アンタが本当に独りなのか、独りで消えてなんも問題起きない存在なのか……今日こそちゃんとしくじらずに、向き合いなさいよ。見ててあげるからさ」


「っ……」


 苦しげに喉を鳴らし、深呼吸してから。

 テスタードは、立ち上がった。

 キャロリッシェに手を突き出し、


「……」


 彼女も無言で、持っていた物資の袋を渡す。

 開いた口からジャラと掬い上げた中身は、レベル1から4くらいまでの『キューブ』だった。

 教室生たちは疲れ果てたような目を彼女に向けていた。


「ガラクタじゃないですか先生、そんなもの……」


「……」


 次にテスタードは彼らに歩み寄り、無言の要求とともにそれぞれが持つ袋を受け取り、代わりに低レベル『キューブ』をその手のひらに押しつけていった。手づかみのアメ玉でも配るように。


「え。先輩これ……」


「起動してろ――くるぞ」


「え?」


 ごう、と熱風のうなりに大きなものが混じる。確認するまでもなく分かる。巨大な魔王使徒が再び浮上して全員を睨み下ろしてきていた。


「ヤバい――先生!」


 大怪獣の姿を背にしたまま、教師はイイ笑顔で親指を立てる。


「『テンペスト』使い切っちゃった」


「こらぁ!?」


 巨大な単眼が文字通り、光る。だれもが死を覚悟する。その前に、テスタードは袋から取り出した素材石を大『晶結瞳(しょうけつとう)』へ投げ放っていた。

 大『晶結瞳』が輝く。まるで単眼から光のヒモが引っ張り出されでもするような自然さで、〝攻撃〟が『晶結瞳』内部へと誘導されてゆく。


 光の筋は甲高い音を立てながら『晶結瞳』内部でグルグルと巡り――テスタードの指の向きに合わせて、魔王使徒へとUターンしていった。

 装甲に跳ね返って爆裂し、魔王使徒が目を閉じる。


「すっご」


「『晶結瞳』ってこんなことできるんだ……」


「スペシャルなんだよ――『キューブ』を上げろ!!」


「――っ!」


 反射的に、その場の全員、言われた通り起動していた低レベル『キューブ』を掲げた。


「でもなにを!?」「こんなのマッチぐらいにも――」


「そろそろ地表熱が冷めて前衛が復帰してきてる。思いっきりブッ飛ばしてそん中に叩き込んでやるんだよ!」


「だからこんなちっちゃいのじゃ!」


 嗤い、テスタード自身も〝核〟となる『レベル10・キューブ』を掲げていた。


「バァカ、こーいうのはな。つないで――つないで――つないで…………つなげろ、つなげろ、つなげろ! 片っ端から寄せ集めろ!」


「!」


 ハッとして真似始めたキャロリッシェ教室面々の頭上で、『キューブ』が、大きな球を描くように渦巻いてゆく。


「急造――『レベル60・キューブ』」


 テスタードの命令で、起動する。開いた穴から流れ出して裏返ってゆくように、すべての威力が魔王使徒へと殺到していった。


〝ッッ――――――〟


 威力そのものの凄まじさよりもまるで魔王使徒自身が嫌がるように目を閉じ横向きの〝受身〟になって、弾き飛ばされてゆく。教室の面々も至近で炸裂した威力に悲鳴を上げながら回廊を吹き転がされていた。


「い、いったいなにが……」


「フツーの『キューブ』じゃなかったんですか、先生……」


 フラフラと起き上がりながら目を丸くしている各自に、テスタードが答えた。


「アニカム構造だ。どんなにレベルを上げようとレベル1の最小構造を積み重ねて強大化してくんだから、だったらレベル1の寄せ集めでも同じだってこった」


「わたしの教えよ」


 再び親指を立てるキャロリッシェ。


「おおお」


「なんだよ、そういう授業、俺たちにもしてくれよ」


「先生、すごいです」


「教わったのはアニカム構造の基礎講座だ。一年最初のころのな」


 テスタードの言葉に生徒たちがうなだれ、顔を逸らし、唾を吐き捨てていった。


「チッ」


「なんだよそんなん俺だって教わったわ」


「わたしもです……ついこないだ」


「なによおっ!? 金言っていうことでしょ!? ねえ!?」


 回り込んで「ねえコッチを見て?」「わたしを見て?」としつこいキャロリッシェを教え子たちが頑なに拒否している横で、一息をついていたテスタードにフェイトが向き直って、


「まぁ、極論だけどもね」


「まーな。個別起動の難易度と接続と制御統合と、ついでにカネの関係でフツーに考えればとてもじゃないが割に合わない。つうか、そんなことするんならわざわざアイテムの形にして作る意味がない。今のにしても、実際の威力はいいとこレベル40ぐらいだろ」


 おぉ~お……


「わたしを透過しないで!? ねー待ってテスタ君あとはわたしが言う!」


「――だが、今回はそれが有利に働いた。総体としては一個として振る舞いつつも実体が無数に分けられていたために一挙掌握がされづらかった。ああいう高次な知覚を持つモンスターからすると目が痛くなるようなイヤな攻撃だったんだろーな。ちょっと勉強になったわ」


「『キューブ』は初級アイテムだけど実は汎用・応用性がものすごく高いんだ。最小だからこそ、使い方や合わせ方しだいで、まるで原子配列からいろんな物質を形作るようにさまざまな効果を作ることができる。――中には『キューブ』こそが最強にして最密な綴導術士の武器だと言う人もいるぐらいにね。ただレベルと威力を上げるだけのアイテムじゃないってことは覚えておくといいかもね」


 へぇ~え!


「わたしのシゴトな・の・にッッ!!」


「なんで俺に言う離ぜぐぇええ……!」


 締め上げてあっという間に気絶した二年生を放り捨て、キャロリッシェが歩み寄ると、〝黒帝〟に一本の回復ビンを差し出した。


「ホラよ。駆けつけ一杯だ。受け取りな」


「……」


 無造作に受け取ったそれを飲み干すと、潰れた〝黒帝〟の左腕に荒い構造の輪郭フレームが形作られて結晶と化し、砕け散り、再生した腕が現れた。

 おおお、と感嘆する生徒たちにキャロリッシェが「教えてあげない。あ・げ・な・い!」と歯をむいている。「大人気ねーぞキャロちゃん先生!」「そんなだから敬われねーんだよ!」「まずは与えよという言葉を知らないんですかっ!?」などなど……

 うるさく騒ぎ出している面々を横に腕を回していると、フェイトが彼のすぐ前に立つ。


「飲んじゃったね。この借りはデカいぜ?」


 差し出されたのは、崩落の際に散乱していた備品を拾い集めた予備の袋。それを受け取り、〝黒帝〟は嫌味っぽく笑う。


「どこが。俺ならもっと上等なの作れる。……こんなのはちょっとした処世術なんだよ。いつまでも小やかましく居座られちゃたまんねえからな。あとはエサだったか? いいさいいさ、肉でも、野菜でも、お好きなように、」


「それで済めばいいけどな」


 次に並んだのはジルギット三年生。騒ぎの輪にいなかった彼も、同じく拾い集めていた袋を持っていて。


「メシぐらいじゃ割に合わねーよ。つっても、おごりたくもないメシなんか振る舞ってもらってもウマくなんかねーから別にいいんだけどさ」


「……」


 しばし、無言で見合って。

 突き出されたそれを受け取ると同時、身をかわした彼のうしろからワッと生徒たちが殺到した。


「先輩! それじゃあ今度ご飯の時に上級回復薬の作り方教えてくださいよ! 秘訣とか!」


「やっぱあの先生ダメだよ! ダメなんだよ!」


「あの、あの、わたし前に先輩の品見たことあって、ずっと聞きたくって……『エリクシル原液』を入れた時の『アストラメル銀光溶液』の溶媒水相の変位選択制御とかってどうなってるんですかっ? OLHT温度と情報パーティション理論がカギとか言ったり書いたりしてますけどあの人たち絶対なにか隠してて――」


「うふふ知りたい? 知りたいの? ここに知ってる人がいるわよ聞かないの!? ねえ聞いてみなさいよ聞いてよ頼ってよ!?」


「いらない。もーいーんです髪触らないでくださいやめてください」


「お前バッカどーせなら効能枠増設時の個別効果層の収納法にしとけその方が商売的には」


「背伸びすんな――」


 ドバン!

 と破裂音がして悲鳴とともに何名かの生徒が倒れる。

 割れた教え子の列の中でキャロリッシェが「ウ~」とうなっていた。


「いいわよ分かったわよ……勝負よテスタ君! どっちの教えの方がありがたいかハッキリさせてあげるんだから……!」


 ヘラっと笑い、受け止めた〝黒帝〟は涼しかった。


「あ~あ。最後の砦を自分から差し出しちゃった」


「にゃにおうっ!?」


 ひらひら手を振り〝黒帝〟は全員に打ち切りを告げる。

 自身もまた回収〝素材〟のバッグなどを拾い上げ大『晶結瞳』の方へと歩いてゆきながら。


「ホラ、用が済んだら目の前見て、さっさと退散しろや。墓の前で講義開いてやる義理まではさすがにねぇぜ」


「おお……マジかこれ」


「前日に夜襲かけてキャロちゃん先生は封印しようぜ」


「絶対ですよ!?」


 次々立ち去ってゆく生徒たちに続いて、最後にキャロリッシェが振り返った。


「約束したからには、簡単には逃げられないからね。覚えておくのね」


「ああ。分かってる分かってる」


「どーかしら?」


 含むように笑い、彼女の姿も塔の階段を降りてゆく。


「ッ…………」


 それを確認してから、〝黒帝〟は、荷の重さに引かれるまま倒れ込んだ。


「テスタード様っ?」


 エレオノーラが覗き込む彼の顔は血の気がなく、呆然と、ただひたすら呆然と、息を乱していた。底抜けの穴を前に、途方に暮れるように。


「テスタード様……ダメージ、が。あの、怪物と」


「止めるなよ」


 起き上がることさえできず『晶結瞳』に背を投げ出して座り込んだ彼が、ほとほと困り果てた風に笑う。〝素材〟のバッグを開きながら、


「今さらじゃねーか。まったく。いつか抜け出してやろうと思ってたのによ、今はなんとなく死にたくねーだなんて……これからだったとか、そんなこと思ってやがる。キャロリッシェのヤツの言うことが当たってたんだ。もっと早く今の俺に(・・・・)言っとけとか、ハハ、文句ばっか出てきやがる」


「……」


「まったくなんもかんも今さらさ。底意地が悪い。そんな泣き言聞かせて、これ以上アイツにどーしろってんだかな、はは……」


「どうしようも……ないんですね?」


 テスタードはうなづく。決意ではなく、純然な肯定として。


「目玉野郎が本体で死ねば俺も途絶える。そう時間をかけずにな。それが未来からの伝言……それでもって、最初から決められた運命だった」


 バッグから伸びたコードを肩ごしに『晶結瞳(しょうけつとう)』に当て、うまくいかず、力なく笑う。


「――だから、せめて下げられる溜飲ぐらいは下げていかねえとな。この破滅は俺がアイツの前から連れていく。じゃないとカッコつかないからな……〝黒帝〟とかいうヤツとして、さ」


「分かりました」


 エレオノーラは〝素材〟状態になっているバッグから伸びているコードを、うまくできずにいる〝黒帝〟からくわえて受け取り、大『晶結瞳』に接続した。

 そして肩の上に寄り添った。


「でも、わたしも連れていってください。わたしたち妖精は、使う者がなければいなくなったも同然なのですから」


「悪いな」


 ともに見果てた地の戦場。そこには生き残ろうとする者たちの、生き残ってゆく者たちの意思と生命の躍動が、強く光り輝いているように思えた。



「キャロちゃん先生……」


 いくつかの攻防ののち地上で待ち構える前衛戦力の中に叩き込まれてゆく魔王使徒の姿を見て取って、スフィールリアは思わず顔をほころばせていた。

 それだけではない。


『がんばれ、〝黒帝〟! 体勢が整った、敵の注意はなんとか引き受ける!』


『そうだ、そもそも学際の依頼だってしてるんだぞ。こんなところでくたばってられるか! お互いにな!』


『ふんばりどころだぞ、これ以上〝黒帝〟のリソースを使わせるな。出し惜しみはナシでいけぇー!』


 次々と、全回線から、〝黒帝〟を鼓舞する声が届いてゆく。

 そうだ。まだだ。

 まだ人の意思は尽きていない。

〝黒帝〟テスタードが学院で見る未来の広がり、そこで関わってゆく人々の道もだ。


「あたしも、がんばらないと……!」


 スフィールリアもアイバにつかまる腕に力を込め直した。


『アー、アー、チャンネルこれかな? スフィーちゃん聞こえる?』


「キャロちゃん先生」


『やー、よかった割り込めたわ。ねぇね、めいれー違反で集まったついでに〝素材〟集め、手伝ってあげよっか? 生徒たちにもイイ経験になると思うのよー。一度魔王の眷属なんて触っておけばさあ、もう大抵のモノなんか怖くなくなるでしょ?』


『おいバカおいバカ野郎、なぁアホがまたなんか言い出してる! お母さん!!』


『まいったなぁ、あはは』


『なんで授業みたいなノリで最初から予定してた風味で思いつき言ってるんですか……勝手に話進めないでくださいよぉ!?』


『なによぅ、同じ教室としてテスタ君とスフィーちゃんばっかにおいしーとこ持ってかれないよーにってゆー先生の生徒を想う気持ちが分かんないワケ!? ――というワケだからさあ、今わたしたち目玉野郎を挟んでスフィーちゃんの反対側にいるの。今から向かうから、合流して一緒に採集しようね』


 通信が切れる。一方的に。


『〝台本〟だが……まぁ君が判断してくれ。回収班の指揮者は君だ。調整はする』


「……はは」


「……いくか?」


 うなづく。


「よっしゃ、いっちょいくか! センパイ方もヨロシク!」


「ああ……またあの中に飛び込むのかぁ」


「やってやんべぇ、先達の偉大さを見せてやんのよ」


「おし、やるか!」


 その時、向かおうとした魔王使徒の周辺が、瞬いて――大きな光が膨れ上がった。

 キャロリッシェ教室がいるはずの場所で。それよりもとても大きな範囲を含めて。


「あ――」


 最初は、大きな泡が浮かび上がってきたみたいに、静かに。

 そして弾けて、


「がぁっ――――!!」


「うぉご――――!!」


 吹き荒れて届いてきた衝撃波に、自分たちも巻き込まれていた。


「……う、」


 振動だか衝撃だかが単なる無味乾燥な事実情報としてすぎ去る時間を経て。知らず、転がった土と芝をつかみ寄せて。


『生存……ザッ……応答……ろォォ――!!』


『大規模攻……解セキッ……の防……が!』


『救助班……ザザッ……至急、ザッ……優先度ッ……』


 噴煙に満ち、薄暗い光景の中、アイバたちの姿を探す。

 光の中に消える聖騎士たちと、腕のないアイバの姿がフラッシュバックしていた。キャロリッシェと教室の仲間たちの顔も。

 そして、煙の向こうに揺らめく魔王使徒の影。これは幻影ではない。いつの間にかスフィールリアは一点にそちらを見つめ、無力感とともに土を引きつかんでいた。


 これが、魔王の眷属の力か。

 未来から情報を持ち帰り。

 すべての意思、すべての力、すべての結束を〝劇場〟に集め、完璧な整合にまで高めてもなお――それら全部を混沌の中に叩き潰す。

 追いすがっても、追いすがっても、さらなる巨大な暴虐で以って()しかかってくる。

 まさに圧倒的理不尽の権化。

 魔王災害と呼ぶにふさわしい。


 ――あともうちょっとなのに。

 もう少しで、望んだ未来が開ける。彼は充分すぎる絶望の期間と圧力を抜け出し、見返りというにもほど遠いほのかな〝先〟を。自分もささやかな――世界の存亡などというものに比べれば、はるかにささやかな――〝夢〟の続きを開く。

 ただ、それだけなのに。

 たったそれだけのことが、これほどまでに遠くて、重い。

 悔しかった。


 ――力がほしかった。

 絶望を打ち払う力。まるであざ笑うかのように執拗な運命のしつこさを、叩きのめして、後悔させてやれるような〝力〟が。

 それが世界を滅ぼすものだというのならば、それさえも上回って打ち砕く――〝力〟!

 その〝力〟には心当たりがあった。

 いつしか、スフィールリアは、肉体の眼で目の前の敵を見据えながら、同時に別のものも見ていた。


「…………」


 たたずむ彼女のすぐ目の前に座る、もうひとりの『スフィールリア』。

 いつ、扉を開き、歩み寄ったのか。それらを意識することもなく、そして背後の扉の外で微笑んでいるフィースミールの姿も気に留めることなく。スフィールリアは自分の目と、自分と『スフィールリア』との間に浮かんだ学院の光景を見果てていた。


 静謐なる〝金色〟の〝力〟の〝中心〟で。『スフィールリア』は、なにも言わない。なにも見ていない。なにも考えていない。座と肘掛けに力なくもたれ、ただそうであるように、そう在るだけ。

 スフィールリアも、なにも言わなかった。ただ、映像だけを見ていた。

 ただ、願いだけがあった。


 力。

 力ですらなくてもいい。

 ただ、アレがなんとかなりさえすればよい。どんなご都合主義でも、劇場の神の手(デウスエクスマキナ)でもいい。世界の(ページ)から消してしまうように簡単に、紙を破り捨ててしまうみたいに簡単に、今この時、あの存在が掻き消えてしまったなら――


「…………」


 そんな子供のように無垢でいて漠然とした願いで以って、彼女は光景の中の魔王の眷属に手を伸ばす。

 そんな彼女を、『彼女』も、なにも映さぬ視界に見ていると思った。


「…………」


 伸ばした彼女の指先。そして力なく置かれた『彼女』の指先。

 それらが同時に――震えた。


「っ――――!?」


 ゾン、としか言えない気味の悪い音と同時に。いや。その本当に直前にスフィールリアは我に返っていた。

 覚えているのは、まるで居眠り運転に気づいて慌てて手綱を握り直したような感覚。むろん車の運転など経験はないが。

 それにより、とっさに制動をかけたような、痙攣にも似た一瞬間の記憶――


〝ギ――――〟


 起こったことはすべてがクリアーに見えていた。

 煙ごと――まるで空間ごとであるかのように。

 魔王使徒ノルンティ・ノノルンキアの威容が、大幅に削り落とされていた。


「あ……?」


〝ギエエ…………〟


 絶叫を上げる力すらなく、魔王使徒の姿が落ちてゆく。

 その巨体の三分の一以上を虚空に削り去られて。断面から膨大な血液を噴き出しながら。


『ガ…………アアアアアアアアア、アッ!?』


 同時に、どこかのチャンネル経由で届いてくる、テスタードの悲鳴。


「……セン、パイ?」


 ザワリと胸のうちと目の前の両方で音がした。スフィールリアは再度ぎょっとして、伸ばしていた自分の左腕を見る。

 学院長に移植譲渡されたバングル――『神なる庭の塔の〝煌金花〟』が、輝き、煌めく無数の黄金のツタを伸ばし始めていた。

 その〝意識〟の先鋭が魔王の使徒を向いていることが、彼女には分かる。

 同時に、怒り、歓喜……それらの感情の渦巻きも。


 ――頭を垂れろ、塵芥(ちりあくた)

 ――その薄汚い力で。

 ――だれに手を上げたと思っている。

 ――待っていろ。今その卑小なる存在を根本ひとつ残さずすり潰して肥糧とし、ふざけたお前の主を断罪の場に引きずり出して、


「……ダメっ!」


 覆い伏せるように、スフィールリアは右手でバングルを押さえつけていた。主の強い意志を受け、『神なる庭の塔の〝煌金花〟』から驚きと悲しみの意味情報が伝わってくる。


 なぜ、なぜ?

 なぜそのお力を、お使いにならないのか。

 ひとたび命じてくれさえすれば、あんなちっぽけで哀れな存在たちなど、あなたの願いのいかようにも服させて見せるのに。

 裂いて、すり潰して。叩いて、こねて。無限の後悔と贖罪の縦穴に放り込んでもいい。あなたのペットに作り変えてもいい。

 なんでもいいのに――


「黙って……いてっ、なにも……しないでっ」


 強く握り締める。

 今度こそ悲哀と嘆きの声を残して、バングルからツタが引っ込んでいった。

 それで全精力を使い果たしたような気さえして、スフィールリアは肘立ちの身から額を地面にこすりつけた。

 通信網の中では魔王使徒に起こった突如の変化に驚く声、そして一気呵成に攻め入る旨の指示や気勢が飛び交っていた。

 その中に〝台本〟が引き止める声が混じり、同時に、渾身の力で起き上がった魔王使徒の攻撃が炸裂して辺りがまた騒然となる。

 そんな騒音も遠く、スフィールリアは顔も上げられずに、ただ呼びかけていた。


「センパイ。応答してください、センパイ、センパイ……」


 応答はない。切り替えたチャンネルには静かな空電の音が波のように走っているのみ。


「……どうして」


 握り締めた手には虚しくこぼれる土の感触だけがある。


「センパイに……会わなくちゃ」


 莫大な疲労と倦怠感に苛まれながら、立ち上がる。その前に、同じく疲労とダメージを思わせる足取りでアイバと聖騎士たちがそれぞれバラバラの方向から歩み寄ってきた。


「ぶ、無事だったか、スフィーちゃん。よかった」


「ひどい目にあった。追い込んだと思ったら爆発的に力を発揮して、まるで不安定な薬剤の詰まったバクダンみたいなヤツだ。……今ので何人か死んだかもしれない。タフな俺でも正直キツい」


「同意するしかないのが悔しいけど……要するに、事前説明にあった通りなんでしょうね。蛇口を無理に締めつけたタンクのよーなモンで……出てきてる水が片付いてきたように見えても、安心できない。しちゃいけなかったのよ。分かってたハズなのに」


「スフィールリア……大丈夫、か?」


「……」


 スフィールリアは、答えない。


「……おい?」


「大丈夫」


 寄って肩を持とうとしたアイバに初めて気がついたように、スフィールリアは片手を出して無事を表明した。

 もう片方の腕は、自分の頭を押さえて。彼女はあいまいに顔を振って、自分で整理するように彼らに話しかけていた。


「手伝ってほしい……お願い、貸してほしいの。力を」


「ああ」


「いかなくちゃ。いけないの。お願い……テスタードセンパイの、ところに」


 四人が見つめる先で、スフィールリアの双眸が不安定な〝金色(こんじき)〟に揺らめいていた。



 そのころとほぼ同時にして――術士本陣の最奥は、緊迫に満ちた静寂に包まれていた。

 指揮陣の視線は、作戦地域を映した投影図に釘づけにされている。

 学院中央のある地点に、強い光点が灯っていた。


「ろ、6時、中衛エリアに極大の術儀領域反応が出現……! 計測不能! 魔王使徒の規模をはるかに上回っています!」


「今度は、なんだ! まさか魔王が召喚されてしまったのか!?」


「お、おそらく、違います。存在幅径値がありません。術儀密度だけが無限方向に深化し続けています……超々高密度な上位〝神域〟流出路の塊です」


「なんだこ、れ、は…………神。だとでも、言うのか……」


 思わず歩み寄って身を乗り出した指揮陣の目の前で、まばゆい光を放つ点が、ただ燦然と輝いていた。


「周辺への被害はないのか。結界、魔王使徒への影響はっ?」


「報告はいっさい上がってきていません。反応の位置関係から、補佐班のひとつに対峙しているものと思われますが……」


「連絡を取りたまえ! 今すぐ正体を確かめるのだ!」


「はい!」


 オペレーターは、即座に反応地点――アリーゼル・フォア・フィルディーマイリーズの所持するインカムにアクセスした。


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