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一欠片の化石
心は言葉で出来ているのでしょうか。それとも、言葉が心の欠片なのでしょうか。
しとしと寂しい冷たい雨が降り続いて、
私の裂け目は、長細い澄んだ湖になった。
湖畔に立つと、照り返す水面から湖の精が現れる。
彼女は、冷たい白い顔をして、一欠片の化石を両掌で差し上げて、
「あなたの亡くした言葉は、この言葉ですか。」
と、問いかけてくる。
でも、私は、それに答える言葉を持たない。
あの流星群の夜に、たくさんの流れ星と共に
私の中で、たくさんの言葉が、流れて消えた。
薄れきっていた面影が、すっかり消えてしまった。
雨の後の草むらで、鈴虫が鳴いている。
柊の葉の先に引っかかっていた、私の寂しい心の切れ端は、
鈴虫たちのエサになってしまったのだろう。