とんでもない人間
花ちゃんは頭を抱えはじめた。私はといえば、泣きはらした顔をじっと前に向けるしかない。
「もともと変わってるのは重々承知していたつもりだったけど、まさかここまでぶっ飛んでいたとは……まずはどこからつっこんでやったらいいのやら」
ひとつ盛大なため息をもらす花ちゃん。
「牧穂、自分中心に物事を考えすぎ」
「はい……」
「それに、何がサヨウナラ寂しい独身生活よ? あんたまだ二十一歳でしょうが」
「まあ、そうなんだけど……」
「結婚なんて、そんな単純なものじゃないのよ。ちゃんと順序があるでしょうが。まずはお付き合いからはじまって、お互いのことをよく知り合って、それから色々進めていくものでしょうが。
神様が連れてきてくれる? 馬鹿じゃないの?
そんなメルヘンあったら、世の中苦労しないわよ! きっと白馬の王子様を想像していたんでしょうけどね、これが現実よ!」
「ううぅ……花ちゃんってば酷いぃ」
「酷くない! ここで何も言わないほうが酷いっての。牧穂の今後を思うと辛いわ……」
花ちゃんの目が遠い。
私はとりあえず、紅茶をすする。
「ところで、あんたの親は何て言ってるの?」
「そういうこともあるけど、あきらめないで。必ず幸せになれるから、と」
カチャンと花ちゃんが持っていたフォークを取り落とす。そして頭痛を我慢するみたいにこめかみをもんだ。
「子が子なら、親も親だった……」
「……すみません」
「とりあえず、話してくれて良かったわよ。もし何かの間違いで本当に結婚なんかしていたら、目も当てられない」
「あ……と、した」
「は?」
「結婚、したよ?」
「うおおい!?」
「だから、こうして会おうって言ったの。
結婚の報告と……旦那の愚痴?」
花ちゃんは口を開けたまま、目をひんむいている。
うん、私も最初驚いた。自分のことながら、信じられなかった。話せばまた長くなるけど。
「…………終わった」
「ちょ! やだ、花ちゃん。そんな不吉な」
「いや、終わってるでしょ!?
だいたいあんたの性格と生活スキルを考えると、いつバツがつくか!」
「え〜?」
私はとぼけて目をそらしてみるけれど、たしかに思い当たる節はいくつもある。
「忘れもしない。あんたが私の家に泊まりにきたとき、食事作ってくれたよね?」
「あ、あれは……」
「カレーとマーボー豆腐を作ろうとしたけど、途中から面倒臭くなって、その二品を一緒くたにしやがった!」
「はい……しかも、炊けたと思っていたご飯が、水の量も適当で、お粥になっていました!」
まだ覚えていらっしゃったのですね!
「お風呂沸かしておくねと言って、タイマーかけ忘れて、ボッコンボッコンいうまで湯船を沸騰させた!」
「しかもお船さん型の水温計入れっぱなしだったから、変形しちゃってました!」
それも覚えていらっしゃった!
「洗濯機に入れる洗剤の量が半端なくて、干すときネチョネチョで気づいて、結局何回も洗い直した!」
もはや何も反論できませーん!
ああ、数え切れない、私の輝かしい武勇伝 武勇伝 武勇でんでんででんでん シャッキーン!
なんちゃって!
オリ○ジでした!
テヘペロ!
「まあ、そこら辺は少しは良くなってきているとするわよ? 昔よりかはね! それでも、問題はまだ残っているよ? だいたいその相手の人だって……わぁ! もう何が何やら! どうしてこうなった?」
本当、どうしてこうなった?
これからどうなっていくのだろうか?
色々と懐かしい。
そしてあの武勇伝は、実話だったりしたりしなかったり……
これからどうなるのでしょうか?
ほぼ乗りで書いています。すみません……