相手の説明
「たしかに、いきなり結婚してくれるのね?ってびっくりなんだろうけど、だからって叫ばなくてもいいじゃないのよおぅ〜。本当に失礼しちゃうわ!
しかもそのあと、立て続けに事情説明なんてしてくれちゃって、頼んでもないのに! ムード考えてよ! ムード!
私はずっとこのときを待ち望んでは夢見ていたのにぃ!
「いやぁ!? 僕はただ、占い師のおばあさんに言われてきただけなんです!」
だって!
「僕は今まで小中高大と受験とか失敗することもなく、順調に過ごしてきて、就職もこのまま楽に行けちゃうだろうと考えていたら、就職浪人に……初めての挫折ということで、毎日悶々としているんですけど、現に今日も面接だったんですけど、うまくいったかどうか……それで、自分の運がもうつきてしまったのではないかと感じて占ってもらったところ、ここの神社に行って、最初に目に入った女性に声をかけてみなさいと言われました。なんでも、その女性に三つの質問をされるから、その質問にすべて「はい」と答えれば、僕の運気はまた以前のように良くなるだろうと言われたんです。その際に、何かお花でも持っていったらいいとも言われました」
だって!
しかもあとで気がついたんだけど、その花は神社の石段の片隅に咲いていたオシロイバナだったの! 酷すぎるわ! 花言葉を調べたら、もう立ち直れないかもしれないというくらい、落ち込んでしまったわ……」
我慢できなくなってきて、私はそのまま顔を突っ伏して泣いてしまった。
私は小さい頃からずっと、私の将来の結婚相手は神様が決めてくれるのだからと親に言われ続け、それまでは異性と付き合うこともせず、清く正しく生きてきたつもりだ。完全な処女だ。もう二十一になるのに! 厳密には今年で二十二だが……
結婚相手は自分で決めるこのご時世、まわりから時折変な目で見られては、ひそかに落ち込み、それでも一縷の望みを抱いて今日まで頑張ってきたというのに……
やはり夢を見すぎていたのだろうか。
「うえぇ〜ん! ふえぇ〜ん! うわわぁ〜ん…………」
「……泣いているところ悪いんだけどさ」
「ふえぇ?」
「あなたも充分とんでもない人だと思うよ?」
「…………」
唯一の味方だと信じていた花ちゃんまで。私は一体、これからどうすればいいのだろうか。
◆花言葉◆
恋を疑う 臆病
【由来】
「恋を疑う」
同じ株から赤、白、絞り咲きなどの異なった色の花をつけることから。
「臆病」
人目を避けるように夕方から咲き始めることから。
『想いを贈る 花言葉』より