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お稲荷様の縁結び  作者: うさ大福
本編
3/11

出会いから説明

 神社の神様が寝てしまったので、私は仕方なく石段に座って待つことにした。

 神社の神様とはいうけれど、もっと厳密にいうと、お稲荷様は穀物の神様で、きつねはその使いであるとか。だから今すーすー寝ている可愛い子ぎつねは、本当は神様の使いなのだ。なんでも「神様の代理」だという。


 なぜこんな小さな神社で、結婚相手を連れてきてとお願いしたかというと、実は私の家系が代々この神社の神様――今はその代理だが――に結婚相手を決めてもらっているからだ。

 つまりは伝統というやつだ。伝統は受け継がなくてはならない。だから私はこうして適齢期となったので、神様にお願いした。今は寝ちゃってるけど。


 ふぅとひとつため息をつくと、ぼぉっと空を見上げてみる。もう夕方だった。夕日で世界全体がオレンジ色。すごくきれいで、こうして待っているのも悪くないなと思う。

 それに、このシチュエーションで告白とかプロポーズとかすてき! ロマンチック!


 そんなことを考えていたら、オレンジの光に照らされた石段を、一人の男性が登ってきた。びしっと決められたスーツ姿がよく似合っていて、いかにも優秀なサラリーマンという出で立ち。

 かすかな期待を胸に、私は彼をじっと見つめていた。手には何か小さいお花みたいなのを持っている。これってひょっとして、ひょっとしたら、ひょっとするじゃない?


 ドックン ドックン ドックン ドックン ドックン…………


 彼は私の方に迷わずやってきて、石段に座っている私の目線よりちょっと低い位置で立ち止まった。それでも夕日の逆光でかなりまぶしい。顔が見えない。せめて正面じゃなくて、ななめ横に立ってくれないのかしら?


 なんて黙ってしばらく考えていたら、彼が口を開いた。


「あの、何か僕に聞くべきことがあるはずではないですか?」

ああ! これはもう、間違いないわ!


「あなたは神様が連れてきてくれた人なの?」

「……はい」


「そのお花は私にわたすために持ってきてくれたの?」

「は、はい」


「じゃあ、私と結婚してくれるのね?」

「は……い?」


 しばしの沈黙を破ったのは、彼の絶叫だった。





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