伍
かなり短いです。
惣福脇がくいっとあごで教室名が書かれたプレートを指す。
あたし達は、一斉にそれを見ると"一年S組"と書かれていた。
つまり…… つまり!
着いたんだよ、辿り着けたんだよ! 一年S組!
「や、やりましたわぁぁぁ!」
「やっと着けたよ……」
「壺君、分かる…… 分かるよそれ」
あけちゃんは、ぴょこんぴょんと飛び跳ねながら叫んでいた。好きだね、うん。
壺君とあたしは、それと対象的にぐったりとその場でしゃがみ込んだ。
惣福脇は、相変わらずというか、無反応。
「お楽しみのところ悪いが、もうホームルームは始ま……」
「惣福脇、何故早くそれを言わないかな!」
「それは俺の責任なのか」
時計を見ると、始まって五分たっていた。
惣福脇の言葉に反応したあけちゃんと壺君も、立ち上がってこくり、とうなずく。
「何なんだ、それ」
「あ、合図的なあれだよ!」
ガラッと、ドアを大きく開く。
案の定、クラスの生徒が何事かとこちらに視線を向けた。
「お、遅れました……」
一旦、喋るのをやめて生徒と同じように視線を向けた優しそうなメガネの女先生は「今度からは気を付けて下さいね~。席に着いて下さい~」と笑って許してくれた。
席は出席番号順なので惣福脇を先頭にあたし、あけちゃんと座る。
壺君は、グループ制で唯一迷子組じゃなかった女の子の後ろに席に向かった。
長い銀髪を桜の髪飾りがついた紅いリボン(布?)でまとめていて、大人っぽいイメージだった。
というか、壺君座らないのか……? メガネ先生も「つ、壺君? 座りましょうね~」とか言ってるし。
立ち尽くしている壺君の視線の先を追うと、そこにはNOT迷子組の銀髪少女がいた。
そこから、銀髪少女の前までいって、目を合わせられるくらいにしゃがむ。
ゴクリ。
クラスの一部男子の唾を飲む音が聞こえた。壺君がスゥと息を吸って、銀髪少女の手を掴んだ。
「お願いします! 好きです! 僕と付き合って下さい!」
やっぱりね! 可愛いもん!
固唾を飲んで見守る一部男子、キャーキャー騒ぐ一部女子、ニヤニヤする人達など反応は様々。
銀髪少女はにっこりと笑う。これは脈、アリか!?
そして、こう告げた。
「お断りします」
うん!
………… これから、とうなってしまうんでしょうか!
壱話終了