弐
そうふくわき
四月。
桜舞う季節。あたしも新しい恋が始まっちゃうかも!?
なんてね、あたし一回も恋したことないし高校に入学したから恋が始まるわけじゃないと思うんだよ。
ということで、あたしは現在お父さんたちに勧められた珍しい名前の人しか入学出来ないという珍命学園という高校に入学した。これで"めめょう"と読むらしい。間違っても"ちんみょう"とか読んじゃだめよ!? と念を押されました。
まあ、そんなことはともかく。
__ 今、あたしはどこにいるんだろう。
どうやら迷子になったらしい。どうしよう、後三十分くらいで入学式始まっちゃうんだけど。
いやね、もちろん迷ったのは自己責任なんだよ!? でも、一パーセントくらいはこの学校にせいにしてもいいと思う。
だって、この学校高校にしてはムダに大きいし校舎は迷路みたいな造りだし! 新宿駅並にカオス。
誰かに聞くにしても、この校舎は一年だけだから入りたての人が他のクラスなんて知ってるわけもないし。それに廊下に人がほとんどいない!
「おい」
廊下の真ん中に立っていたので、邪魔だったのかなと謝ってずれようとすると。
「ああ、すみません。邪魔ですよね、ところで一年S組の場所って知りませんか? 」
「いや。それで一年S組の場所知らないか」
振り返ってすいませんと会釈して、あたしのクラスの場所を聞こうとすると。向こうとかぶってしまった。
………… で、同類でした。
同類人は、世間ではいわゆる"イケメン"と呼ばれる部類に入る少年だった。黒髪に切れ長なのに眠たそうな眼。おしゃれして出来た"イケメン"ではなく、素のイケメンだよね、これは。
かっこいいとは思うけど、あたしのタイプじゃない。いや、まああたしのタイプなんて知ったこっちゃないだろうけど。
「もしかして、無いとは思いますけど、あなたも目的地は一年S組でただいま絶賛迷子中ですか」
「悪いが、俺も目的地は一年S組でただいま絶賛迷子中だ」
「うわああ! 」
もう完全に無人の廊下であたしの叫び声がこだました。
「ぁぁぁぁぁぁ! 」
どうでもいいんだけど、この廊下やけに響きよくないですか。
「はぁ…… じゃあ、あたしと一緒に行動しませんか。今だけ。い・ま・だ・け。この一年で喋るのも行動するのも今だけ。OKですか? 」
「いいんだが、何故今だけを強調する」
「いえ、なんとなくですね。じゃあ、一応名前だけ聞いておきます」
「いや、断る」
名前だけ聞こうとすると黒髪少年は、何故か名乗るのを断った。あ、名乗れって言ったのはあたしなんだからあたしから名乗るのが礼儀か。
「あ、あたしから名乗るのが礼儀ですね。あたしは、鷹月亜漓栖といいます」
「そうか。宜しく」
「宜しくされないと思いますが。さあ、あなたも一応名乗りましょうよ」
「いや」
「名乗りましょう? 」
「…… 惣福脇だ」
「苗字だけじゃなくて! 名前は? 」
「お前絶対笑うぞ」
「笑いませんてば」
「………… 光宙」
「っ…… ぷっ、あはははははは! 」
笑わないって約束したのに笑ったのは悪いけど! 光宙だよ、光宙! ポ○モンのキャラクターの!
「笑ってすみません…… まことに申し訳なく…… ぶはははは! 」
「謝るならせめて口調だけでも神妙にしろよ。説得力まるでないぞ」
ごめんなさい。
ぴかちゅう