拾肆
「亜漓栖ちゃん、曙ちゃん、亜覇ちゃん。勉強しなさい、勉強を。後、図書館だから静かにしなさい」
「撫子お姉様、何故亜覇まで数の中に入っているのですか!」
「ザビエルの話で盛り上がっていたのは、どこの誰なのかしら」
撫子がぺしっと亜覇ちゃんの頭を軽くたたく。
というか、撫子、亜覇ちゃんにお姉様って呼ばれてるんだね……!
も、もしやこれは、好きな先輩後輩同士で行う女子独特のアレでつまり、これはゆ、百合……?
これは、禁断の感じがするよ……!
「亜漓栖ちゃん、まず私と亜覇ちゃんは同じ歳だし、そういう関係ではないわ」
「律儀に全部ツッコんでくれた!」
うん、惣福脇もそうだし、亜覇ちゃんもそうだし、惣福脇関係の人は割といい人なのかもしれない。うん。
「テスト期間の一週間前には、授業が全部なくなるし、登校義務も一週間の内二日しかないし、こんなに勉強する環境に恵まれてるのなのんて、珍名学園くらいよ……」
「ああっ、撫子が段々と疲れてきた! ………… だから、この学校、入学試験とかないのに偏差値が以上に高いのか」
壺君があはは、と苦笑しながらうなずく。惣福脇は相変わらず教科書から目を上げないし、あけちゃんに至ってはもう分厚い黒魔術の本の上で寝ていた。
「でも、その二日は文系理系に別れて一日中先生によるレッツ耐久! ドキドキッ☆先生による八時間ぶっ通し講座じゃないかぁぁ!」
「ああ、それなのだけれど。亜漓栖ちゃん、交流会と講座、どちらに出る?」
「え? 何それ」
すると、撫子がはぁと深いため息をつく。
亜覇ちゃんは私をバカにしたような視線で鼻で笑ってた。………… うん、あたしだってキレていい時くらい、あると思うんだよ。
「講座で寝る人達が続出して、秋にこちらの方へ移転してくる中等部の件もあって、今年から中等部との交流会があるの。それで、グループごとに講座か交流会を選択して参加することになったの」
「断然、交流会で!」
「即答ですわね!」
いつのまにか起きていたあけちゃんが、何故かツッこんでした。
「というか、鷹月さん、知らなかったの?」
「え? あ、うん」
壺君が相変わらずの弱弱しそうな顔で苦笑しながら聞く。
あたしの返答に、惣福脇と撫子、亜覇ちゃんが盛大にため息をついた。
何なの、ねぇ、何なの!? 惣福脇関係の人、何なの!?
もう某幻想殺しさんのように惣福脇関係の人達、惣福脇勢力って呼んでいい? 撫子はないけど、亜覇ちゃんのことそうやん病って呼んでいいよね?
「掲示板とか、先生が朝のSHRとかで色々知らされていたのだけれど……」
「掲示板は見てない! 朝のSHRは多分ぼーっとしてた!」
「そんなに堂々として言うものですの!?」
と言いながら、あけちゃんの目が撫子が持っている交流会のプリントに向かっていることをあたしは知っている。
「では、グループごとだし、多数決にしましょう。亜漓栖ちゃんは、交流会よね?」
「当たり前だよ!」
撫子は、どこかから取り出した真っ白なメモ帳を出し、綺麗な細い字であたし達の名前を書き出していく。
鷹月亜漓栖、と書かれた名前の下に交流会と書き込んだ。
「曙ちゃんは?」
「交流会ですわ、おーほっほっほっほっほっ!」
図書館の司書さんも真っ青な大声での高笑いで告げる。
撫子は、鋭い眼光であけちゃんを睨んで、メモ帳に交流会と書く。
怖い、怖いよ撫子さん!
「亜覇ちゃんは?」
「お兄様と同じなら火の中水の中です!」
撫子はそれを予想していたかのように、惣福脇君と書く。やっぱ幼馴染効果凄いですな!
「惣福脇君は?」
「何でも良い」
惣福脇と亜覇ちゃんのところに、無投票、と書いた。何かそれ違うよね!?
「………… 壺さんは」
「撫子さんにならどこまでも付いていきます!」
本日二回目だけど、怖い、怖いよ、撫子さん! というか、壺君だけ、呼称君じゃなくてさんだし! 不憫すぎるよ壺君!